税・支出・通貨:減税のトランプ、増税バラ撒きの自公立憲…

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税と支出

経済政策の中で、日米共に最近特に税と支出に関しての論争が盛んだ。トランプ次期米国大統領の関税政策は少し特殊なので取りあえず除外するとして、日米等各者のスタンスを大雑把に整理すれば概ね下記のようになろうか。

① 減税+無駄削減:トランプ、イーロン・マスク、(ミレイ・アルゼンチン大統領)
② 減税+バラ撒き:れいわ新選組
③ 減税+支出中立:国民民主
④ 増税+バラ撒き:米民主党、自民、公明、立憲、(日本共産党:金持ち増税)
⑤ 増税+無駄削減:日本維新

増・減税(社会保険料も含む)も金持ち大企業優遇か低所得者優遇かに別れ、無駄削減・バラ撒きも事業についてか直接支給等かに分かれる。また、支出が将来に向けての投資なのか一過性の費用なのか、更には投資といっても将来リターンが本当に見込めるのかが問われる等多岐に渡る。また各党とも選挙を挟んで言う事が異なっていたりもする。

という事で、上記の分類整理もツッコミ所が多いと思われるが、普通に考えて②の減税+バラ撒きを続ければハイパーインフレ気味になるだろうし、どう考えても④の増税+バラマキ組の主張のように、それによって将来不安が払拭され国が持続的に栄える事は無く共産主義への道に進むであろうし、筆者にはそこに将来展望を見出せない。これらを例えて言えば、宵越しの金は持たない遊び人や、ネズミ講のような感がある。

また、今の日本維新はよく分からないが、かつては⑤の増税+無駄削減のような主張していた時代もあった記憶がある。無駄削減はすべきだが、もしそこに増税をぶつければ超緊縮財政となって経済失速してしまうだろう。

残るのは、① 減税+無駄削減、③ 減税+支出中立という事になり、これらを基に経済成長して行くシナリオを組み立てるべし、というのが筆者の結論である。

だが、無駄削減というと日本の民主党政権時の事業仕分けのように、左翼利権には斬り込まない一方、災害対策に必要なインフラや科学研究予算まで削ってしまうリスクは在り得る。

また、国民民主党の玉木代表は、教育はリターンが見込まれる将来投資であるとして教育国債を発行しての教育費支出増を主張しているが、いわゆるFラン大学や外国人に流れてカネをドブに捨てる事にならないか。

イーロン・マスクも、投資として火星移住事業に国費を突っ込む可能性も高く、無駄削減と投資の有効性には透明性と国民の納得性を確保する仕組み作りが不可欠となるだろう。

以上、特に日本の場合、議論が拡散したまま収斂しない傾向があるため、税と支出に関し多岐に渡る論点を整理し建設的な議論がなされることを願う。

ビットコイン、ゴールド、通貨

税と支出に関連して、ついでに資産について述べれば、筆者は予てから資産の経済的価値については下記等式が成り立つのではないかと考えて来た。

価値 =( 機能性 + 審美性 ) × 希少性

これに当て嵌めるならば希少性は普遍的要素だとして、各々の資産は次のような特徴があると思われる。

① 衣食住他、特に食糧の価値:ダイレクトに機能性に依拠する
② ゴールドの価値:主に審美性に依拠する。なお現代では工業的価値も発生している。
③ ビットコイン等(暗号資産)の価値:機能性に依拠する(但し、移動・流通・決裁・備蓄等の「バケツ機能」に限られる)

では通貨についてはどうなのか? 上掲の式に当て嵌まれば概ね下記のようになると思われる。

④ 通貨の価値 =( 国民の稼ぐ力 + 継続性・文化伝統等のプレミアム ) × 希少性

なお、上記①を除き、②③④は概ねシンボルとして①との交換取引を媒介するために作られたツールであり、引換券でありそれら自体では腹は満たされない。

さて、これらを踏まえ、次期米国大統領に返り咲くトランプは、何をどうするつもりか?

観測気球を含めこれまでの言動からパズルを組み立てれば、国民の稼ぐ力を中核に置き、それと暗号資産を結び付け、中央銀行から通貨発行権を奪って行きたいと考えていると言った所か。国家発行の暗号資産は考えていないとしているので、今の所、民間業者発行の暗号資産の一部国家保有のコラボの態勢で行く目論見のようだ。

その際、暗号資産は「採掘」に膨大な電力を必要とするため、素朴に言えば「エネルギー・電力本位制」のようになるが、これが持続的なのかは不明である。また、そもそも機能性が「バケツ機能」に限られるため、言わば人の息遣いが感じられず裏付けに乏しくボラティリティーが高過ぎるという問題もある。

前者については、トランプはシェールガス・オイルを「ドリル・ベイビー・ドリル」で掘って掘って掘り捲ると言っているため、少なくとも当面はそうするつもりなのだろう。後者に関してはゴールドを組み込んで審美性等による安定性を付加する等の対応も在り得よう。

何れにしても、中長期的には、通貨等の経済的価値は、上述した事を含め色々な要素を呑み込んで落ち着く所に落ち着いて行くだろうし、なるべく短期間にそうなるべきと筆者は考える。

そのため、国家としても個人としても物の本質を捉え、事の行く末を見定めつつ適宜適切に対処すると共に、在るべき姿を描き微力であっても現実を動かすよう働きかけて行く事が必要とされるだろう。