今年の正月の豊洲の初競りで、1番マグロとして2億700万円で競り落とされた大間の本マグロを思いがけずいただく機会がありました。
初マグロを競り落とした銀座おのでらに誘っていただき、グループの総責任者である坂上親方(写真)に握ってもらったのです。
魚は熟成させることで旨味が高まります。競り落とされてから10日以上経ったマグロは、とても良い感じに熟成して深みのある味わいに仕上がっていました。赤身からヅケや大トロ、煮付け、ネギトロ巻きと初マグロを存分に堪能させてもらいました。特に大トロの落ち着いた味が印象的でした。
日数が経過し熟成するのは、食べる側にとってはありがたいことです。
しかし、表面が徐々に劣化していきますから、マグロの塊の周りを削り取って提供する必要があります。お店からすれば可食部分がどんどん減っていき、原価が上がってしまうのです。
私がお邪魔したときには、歩留まりは30%くらいまで下がってしまったそうです。
下衆な計算ですが、総重量276キログラムで2億700万円のマグロですから、キロ単価で75万円。歩留まり3割なら実質仕入れ値はキロ当たり200万円です。
こちらのお店では、そんな原価を気にすることなく採算度外視で初マグロを各店舗で提供しています。部位は異なりますが、表参道にある回転寿司のグループ店では2貫1160円で出したそうです。
お寿司の売り上げだけであれば1億円以上の大損害ですが、ニュースでのメディア露出とそれに伴う来店者の増加という強烈な宣伝効果があります。
また、銀座おのでらでは常連客に提供することで顧客満足度が高まり、ロイヤリティ向上に繋がります。私も、新春早々縁起の良いお寿司を食べることができ、テンションが上がって満足できました。
同じクオリティーの食材を食べたとしても、初競りの一番マグロというだけで、価値が高いと思いおいしいと感じるものです。
食は気分によってその価値が大きく変わります。一生のうちに何回味わえるか分かりませんが、来年も機会があればぜひ行ってみたいと思います。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年1月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。