三菱自動車が乗らなかったホンダ・日産との合併プラン

私の目の前に化粧箱入りDVD「砂の器」(主演 中居正広)があります。私が見た数々のドラマや映画で最も涙を誘ったドラマであり、中居さんのあの演技力は圧倒的で強烈な印象を残しました。故にわざわざ永久保存版を別途購入して大事に持っていたのです。今、化粧箱を眺めていると中居さんの置かれている人生はもしかすると砂の器と同じだったかもしれないと思っています。ドラマでは長い逃避の人生が背景にあります。中居さんもこれからさまようのでしょうか?ため息が出ます。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

世界の投資家はトランプ政権にひとまず安堵か?

先週のつぶやきで「トランプ氏の大統領令もサプライズの連続になるとは思えない」と書かせていただきました。事実、大統領令には署名を続けていますが、市場のインパクトはほとんどない状態です。おまけに対中国についてはあれだけ言っていた関税措置を当面封印し、「習近平氏はいい奴だ」という始末です。私がサプライズの連続にならないと申し上げたのは市場は既に「第一衝撃波」を選挙戦最中に受けており、インパクトを十分吸収してしまっているのです。

同様のケースは昨日の日銀の利上げ決定でも見られました。発表してもほぼ無風の状態でした。理由は利上げ決定が実質的にリークされていたし、「今回は利上げしますよ」という姿勢が植田総裁をはじめ、政策決定委員からこぼれ出ていました。円ドル相場が円安に振れればトランプ氏の目に留まり、「日本は必要以上に金利を低位に維持し、自国通貨を安く誘導している」と言われかねないことも気になるのでしょう。多分ですが、引き続き利上げを継続し、まずは政策金利1.0%ぐらいまでには引き上げるでしょう。いやそうせざるを得ないのです。

トランプ氏はカナダとメキシコ向け25%関税を2月1日頃にも発表するかも、としています。対カナダは感情論が先行しそうです。関税引き上げの理由は十分ではないですが、カナダが猛烈な報復措置の姿勢を打ち出し、州レベルでもオンタリオやBC州で「憎しみ」と思わるほどの報復が検討されています。例えばBC州ではアメリカ産ワインの輸入禁止をするかも、と州首相が述べるなど緊迫した状態にあります。トランプ2.0は口で言うほどではないと思いますし、中国とメキシコはうまく立ち回っているように見えます。トランプ氏の姿勢はビジネス主体なので投資家はひとまず安堵できそうです。

石破氏の♬ルンルンルン♬、楽しいニッポン、本当かい?

思わずうーんとのけぞってしまいそうでした。「楽しい日本」。これを目指すんかい?と目が点になりました。ストーリーとしてはかつて国家が主導した「強い日本」、企業が主導した「豊かな日本」、これに続くのが「楽しい日本」とのこと。「楽しい」の意味は「安全安心、夢への挑戦、明日への期待、尊重しあい、自己実現をする」ということらしいです。我々国民は小学校の児童じゃないのだからもう少しレベルを上げて欲しいと申し上げます。

私がシナリオライターなら「覚醒せよ、日本」です。社会では緩い空気が漂い、雇用も働く気さえあればまず困らない、一方で社会の複雑さ故に落ちこぼれが生まれ、メンタルに問題を抱えた人たちが社会問題を引き起こします。世界はより保守的になり、国家の主張がより強いものになる中、日本の存在が薄れているのです。ここにきて賃金が継続的に上昇し始め、物価もデフレから実質的に脱却しています。政府がデフレからの脱却を宣言しないのはデフレにすぐには戻らないという確証が必要なためですが、それはとりもなおさず消費者マインドの変化を待っているとも言えるのです。まさに覚醒なのです。

石破氏の施政方針演説。大好きな地方再生に相当の重きを置きました。私には5つの具体的施策は古臭いと思います。地方再生はこれではできないです。石破氏の地方創生は人口の再配置に近い発想があるのですが、そんなこと地殻変動ぐらいの衝撃がないと起きないのです。それより実効的なのは地方がより住みやすいようにすることだと思います。つまり、地方を充実させることでそれこそ「楽しい地方」を生み出す、そこに価値を見出した若者や企業が参画しやすい地方社会を作ることから始めたほうが良いです。それには地方のコンパクトシティ化が安心安全も含め、私には最重要課題ではないかと思います。

三菱自動車が乗らなかったホンダ日産合併プラン

三菱自動車は大英断を下したと思います。当初言われていたホンダ日産の経営統合に三菱自動車もいずれ乗るだろうという当初見込みを覆したのです。24日に発表された内容は断片的なもので詳細は想像の域を出ませんが、ホンダ日産の新会社には三菱は加わらない形で提携関係を続け、技術など業務面では引き続き関係を維持するというものです。三菱がなぜ独立独歩に近い道を選んだのでしょうか?一つには新会社に於いて三菱が歯車的な役割しかなく、プレゼンスを出せないことに三菱グループとしてのプライドが許さなかったのでしょう。

三菱自動車工業 加藤隆雄社長 同社HPより

三菱自動車は24年の販売台数は未発表ですが、たぶん85万台程度ではないかと思います。まぁ小粒。故に生き残りという意味では不利なのですが、業界全体が苦しい中、ニッチさもあり、まずまずの業績であること、今後5年ぐらいは毎年新車を投入する予定であり、オールラウンダーな品ぞろえをすることでユニークさを打ち出しながら市場をしっかり押さえていく戦略が見て取れます。もう一つは自動車の未来が今一つ読みにくいことがあるのでしょう。内燃機関、HV、EVという仕切り以外に自動運転から車載OSにSDVと切り口があります。では世の中の自動車が一気に変わるのか、といえばそれはなく、混在型が長く続くだろうとみています。

もう一つは三菱の強みは東南アジアであり、先進国に求められる斬新さというよりタフさとか価格的魅力であったりより実用的なクルマ作りである点です。実は私が大学生の時に乗っていたのは日本初の電動サンルーフ付きギャランΣ。三菱はエンジンに強みがあり、価格もお値打ちだったことが購入理由でした。今回、三菱は自動車マーケット戦国時代にあえてサイドラインに立ち、勝ち組に乗っかるつもりなのかもしれません。そりゃそうです。100万台も売っていない会社規模では大勝負には出られません。ただ、リスクをヘッジした賢いやり方にも見えるのです。三菱は堅実なり、ということでしょうか?

後記
カナダの歳入庁(CRA)とはカナダで事業をしている者にとって切っても切れない関係です。一昨日もある件で電話をすると「1時間半待ちです」と自動返答。1-800番号なのでスピーカーホンにして仕事をしながら待ち続けたら本当に1時間半で繋がりました。用件を言ってもまずは私が誰か証明するのが大変なのです。かつては生年月日とSIN(日本のマイナンバー)を言えばOKだったのに今では直近の納税額と納税日はとか、他の税金は何を払っているとかとにかく質問攻め。こちらがその答えを探すのに一苦労で20分ぐらいしてようやく本題。そしてその用事は3分で終わり。これじゃ大学病院並みだなと思わずぼやいてしまいました。非効率の賜物であります。

では今日はこのぐらいで


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年1月25日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。