厚生年金は「労使折半だからお得」なのか?

池田 信夫

たかまつななさんの「年金はお得」という話が炎上しています。これは本当でしょうか。チャットGPTにきいてみました。

Q. 厚生年金は「労使折半だからお得」というのは本当ですか?

GPT:たとえば厚労省の「ねんきんネット」で自分の年齢や所得などをいれると、年金がいくらもらえるかが出てきます。そこでは年金保険料の半分が本人負担で、あと半分が事業主負担ということになっています。

事業主負担の仕組み
  • 厚生年金の保険料は、加入者(労働者)と事業主(会社)が半分ずつ負担します。この仕組みによって、労働者が負担する保険料は自己負担分だけを見ると抑えられています。
  • 事業主が負担する半分の分も含め、結果的に労働者が受け取る年金額は、個人で全額負担する場合よりも大きくなります。この点で、「労使折半はお得」と言われることがあります。
  • また、厚生年金は終身で受け取ることができ、物価スライドなどもあるため、長生きすればするほど相対的に「得をする」仕組みです。
将来の受け取り額
  • 厚生年金は、現役時代の収入に応じて年金額が決まります。給与が高いほど受け取る年金も増えますが、将来の年金財政状況や制度変更のリスクを考えると、現状の負担が必ずしも「お得」かどうかは一概に言えません。
  • 自営業者が加入する国民年金と比べると、厚生年金は受給額が大きく、しかも企業が半分負担してくれるため、結果的に「お得」と感じる人が多いのは事実です。
  • しかし企業の人件費は給与に社会保険料の半分の法定福利費(事業主負担)を乗せた額なので、給与より15%多い。実質的な負担はその2倍です。

Q. 給与明細に書いてある従業員の負担15%ですが、手取りは人件費より30%少ないわけですね?

GPT:企業が負担する社会保険料の事業主負担分15%は額面給与に上乗せされ、これを含めた金額が企業の人件費になります。

人件費 = 額面給与 + 事業主負担(額面給与の15%)

従業員は額面給与から自身が負担する社会保険料(15%)や所得税などを引かれた額を手取りとして受け取ります。社会保険料だけをみると

手取り = 額面給与ー本人負担(額面給与の15%)

人件費は額面給与の115%、手取りは額面給与の85%なので、手取りは人件費に比べて約30%低くなります

Q. ただ従業員に社会保険料を15%も負担させると大きすぎるので、企業が負担する場合もありますね?

GPT:従業員に社会保険料を15%も負担させると手取りが大きく減少してしまうため、企業が従業員の負担を軽減するために法定負担分(15%)以上の社会保険料や手当を負担する場合もあります。

企業が従業員分の一部(たとえば5%)を肩代わりする場合、従業員の負担は10%に軽減されますが、労使の負担は30%で同じです。

企業が事業主負担を価格に転嫁することはむずかしいので、普通は社会保険料込みの人件費を下げる(あるいは上げない)という形で従業員に転嫁します。だから結果的に、社会保険料30%はほとんど従業員が負担するのです。

Q. 厚生年金保険料は18.3%ですが、払う年金保険料と老後に受け取れる厚生年金支給額は、どちらが大きいですか?

GPT:厚生年金保険料と受給額を比較するには、以下の要素を設定します(例)

  • 収入(給与)水準:平均年収500万円
  • 加入期間:40年間(20歳から60歳)
  • 老後の受給期間:65歳から平均寿命(80~90歳)まで受給。
厚生年金保険料の負担額

前提条件:

  • 年収:500万円
  •  保険料率:18.3%
  • 保険料負担期間:40年間(480か月)

負担額の計算:

  • 500万円×18.3%=91.5万円
  • 91.5万円×40年=3660万円

40年間で労使で負担する額:約3660万円

老後に受け取れる厚生年金受給額

前提条件:

  • 年金受給開始:65歳
  • 受給期間:20年間(65歳~85歳)

受給額の計算:

  • 基礎年金(定額部分):約78万円/年
  • 報酬比例部分:500万円 × 18% = 90万円/年
  • 総支給額(年):78万円 + 90万円 = 168万円/年

老後20年間に受け取れる年金の総額:約3360万円

結論

年収500万円で加入期間40年の場合、年金保険料総額より老後に受け取れる年金総額が少ないという結果になります。負担より受給が約300万円少なくなるため、お得とは言えません。ただこれは所得や寿命に依存し、90歳まで生きた場合はお得になります。

これに対して「ねんきん定期便」に書いてあるように自己負担を半額の9.15%とすると、労使の負担は半額の1830万円なので「労使折半でお得」という感じになりますが、労使では合計30%負担しているので、こういう表示は誤解を招きます。