こんな道路陥没が起きるのか?:耐用年数を超えた大量のインフラを抱える日本

ワシントンで起きた航空機事故は調査結果を待ちたいのですが、訓練中の軍用ヘリがなぜ管制官の指示に従わず、わざわざあのルートを通ったのか常識的には考えにくい気がします。当てに行ったのではと勘繰りたくなります。一方ホワイトハウスのすぐ近くで起きた事故だけにトランプ大統領の対処が注目されますが、「バイデン政権で人種の多様化を進めた結果だ」と主張していますが、これにはひどく違和感があります。こんなレーシズム(人種主義)的な発言を平気でしてしまうことは恐ろしいことだと思います。

では今週のつぶやきをお送りします。

バラバラの金融政策

日米加3か国の金融当局がこの1週間程度で発表した金融政策は日本が引き上げ、アメリカが変わらず、カナダが引き下げでした。世界的に見れば金利引き下げがトレンドで、引き上げをする国はほとんどなかったかと思います。一方、「マネーのブラックホール」であるアメリカの金利が相対的に高めで張り付いてしまうとどうしても他通貨は対米ドルに対して安くなります。円は利上げをしたこともありひと頃の158円台からは3-4円ほど円高の水準に収まってます。

では今後ですが、私はインフレは改善が続き、トランプ政策の初期のサプライズが収まる春先に一度、利下げするとみています。今年2-3回程度の利下げはありえるとみています。今回パウエル氏が政策変更を見送った理由は思うにトランプ氏の様々な大統領令がどう影響するのか見届けたいという気持ちがあったと思います。明日にも署名するとされるカナダ、メキシコ、中国向けの関税措置が本当に行われるのか、またその影響はとなると計り知れないのです。現在、カナダ政府は閣僚をワシントンに送り込み、ぎちぎちと最後の交渉をしています。カナダ中銀はインフレ率が2%を下回りましたし、25%関税が発表される可能性を踏まえ、予防策的に利下げをしています。

今週の株式市場はDeepSeekで振り回されましたが、たぶん、様々な理由でケチをつけ、今までのAI主導の経済を維持するとみています。一方、世界の一部ではトランプ政権に不満と不安を持ち始めておりそれが金価格に反映されています。今日も一時、最高値の2850㌦程度をつけており、需要は高まっています。「プアマンズ ゴールド」であるシルバーもここに来て相場が上向きになっています。世界経済はどうなるのか、私も月曜日にミニ オンライン イベントで経済部門のモデレーターをやるのですが、正直、非常に難しい予想になりそうです。

こんな道路陥没が起きるのか?

正直びっくりです。埼玉県八潮市の交差点の穴に落ちたトラック、それを救い出すどころか、トラックはどんどん穴に埋まっていき陥没の穴は広がり続けるのです。道路陥没事故は時折ニュースで拝見しますが、こんなケースはたぶん初めてではないでしょうか?原因は下水管が腐食し、そこから漏れた汚水はたまたま地盤が緩い地域故に土砂の流失が起こり、広い範囲で地盤が崩れたとされます。また破損の原因は下水に含まれる有機物が腐食して硫化水素が発生し、それが硫酸となり下水管にダメージを与えたとされます。

この分析通りなら同様の地盤沈下はいつでもどこでも起こりうることになります。微弱でも頻発する地震がインフラにダメージを少しずつ与えることもあるかもしれません。インフラというのは厳しい自然状況にさらされており、温度差を含め思った以上の劣化を招くことはあるかと思います。私の会社で所有するマリーナには上水道と船の中のタンクの汚水を吸い上げる一種の下水が完備されているのですが、水漏れ、管の破損は年中発生しており、従業員はいつもその修理に追われています。マリーナの場合、温度差と海水によるダメージがあり、開発後25年経った今、カネがかかるインフラの全面やり替えも視野に入れざるを得ないのです。

世界どこを見ても役所の財源は十分ではなく、インフラの整備と点検は追い付かないのが現状だと思います。いわゆる下水の近代的整備が始まったのはこの6-70年であり、1回目の寿命が来ている場所も相当あります。日経によると下水管で耐用年数の50年を超えたものが3万キロあり、10年後には9万キロにもなるとのこと。それらは全て交換していく必要があり、とてもじゃないですが追い付けるとは思えないのです。以前、橋が老朽化して落ちたり、渡れない橋ができた報道もありました。折しも国会では予算の審議をするわけですが、日本の将来の予算構成はずいぶん変わっていくのかもしれません。

野中郁次郎氏、逝く

誰それ?と言われそうです。日本を代表する経営学者で世界にも通じる数少ない方でした。正直申し上げると私は野中氏の著書は読んでいません。雑誌の特集や記事などで野中氏の功績や考えは読んでいますが、氏のアウトプットの難易度が高いのです。最も著名な著書である「失敗の本質」(野中氏を含む6名の共著)ぐらいは手に取ってみようと思います。これは日本軍が失敗したことを追求した名著とされます。これをバブル崩壊後の日本の状況と重ね合わせることで経営的視点から分析を試みるテーマの記事は多く掲載されてきました。

野中郁次郎氏 Wikipediaより

日経の野中氏の編集委員記事のくだりに「考案した経営メソッド『SECI(セキ)モデル』も、知らない企業経営者はもはやいまい」とあります。そんなことはありません。私は知りません。多分、知っている経営者は少ないと思います。本好きの私でも手が伸びないのは難解だからでしょう。ある意味、氏の高度な知的レベルを我々凡人にもう少しわかりやすく落とし込んでくれればきっと野中氏の名声はもっと違ったものになっていたことでしょう。

ところで私は今「教育経済学」なる分野の本を読んでいます。教育と経済学をくっつけるというのも斬新なのですが、人的資本という発想を取り入れています。ところがこの野中氏は人的資本という発想には違和感があるとし、人間とは「未来志向で意味をつくる動的主体であり、他者との関係性のなかで人になる。つまり、資本を生み出す存在が人間なのだ」(日経)とあります。よく読まないとわかりにくいのですが、経済学的アプローチで取り込む人的資本という発想はそもそもが間違っているとも読めそうです。このあたりになると哲学的ともいえ、様々な考えと意見が出そうですが、野中氏が経営界に既存の発想にとらわれず、グサッと切り込みを入れた点は素晴らしい功績であったと思います。

後記
建築中の海上の浮型事務所がほぼ完成し、フェリーに乗り北に180キロほど行った田舎町の工場のヤードに行きました。距離は大したことなくてもフェリーの待ち時間や移動時間を含めると朝5時に家を出て戻りが夕方6時。打ち合わせは1時間だけ。そして今はそれをバンクーバーまで運ぶ牽引船の契約、保険契約、更に専門家による運航計画書の作成ととにかく事務手続きに翻弄されています。現場では電気と配管の工事の作業が急ピッチで進みます。なにせほとんど未経験の分野なので「へぇ」の連続。ですがこれを面倒くさいとは一度も思わないところが大事なんだと思います。ドンとこい、です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月1日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。