S&P 500は決算よりもDeepseekに振り回された週間となった。
月曜のアジア時間から指数先物の下げが止まらず、月曜はNVDAが17%安までワープし指数も引きずられたが、少なくとも指数はそこから押し目買いが優勢となり、指数レベルでAI関連の過剰投資が行われたという評価にはならなかった。
NVDAだけは輸出規制懸念も重なり週末まで戻らなかったが、指数ベースでは「Deepseek窓」は一週間のうちに埋められた。もっとも窓を埋めたところでは週末以降のヘッジが入り、金曜の指数は大きな上ヒゲ陰線となった。
ナスダックもウェッジ上抜けを追いかけたポジションはDeepseekのせいでアイランド・リバーサルになったが、金曜に反落に転じる前に辛うじて救出している。決算は重かったが、週明けから振り落としが済んだことでヘッジ不足ということではなくなり、MSFTなどは滑ったものの指数に悪影響を与えるには至らなかった。
金曜引け前にはトランプ政権によるカナダ、メキシコ、中国への関税が発表されたことが下落を加速させた。
それで織込みきれたかというと、週末にはカナダとメキシコが対抗措置を発表しているので不完全と思われる。2018~2019年においても米株指数の下落は関税発表の日よりも対抗措置発表の日の方がきつかった。ただ(対中国だけであったが)1日で2%以上の下落に繋がったケースは限定的であった。
野村によるとマクロHFのポジショニングは年末年初に大きく軽くなっている。
GSが集計したレバレッジファンド・AMの先物ポジションも同様である。これは当然ポジショニングの全体像ではないが、水準的な逆張りも意義があるように見えるし、方向性にも逆らいづらいようにも見える。
JPMによると1/31までの週で個人投資家がETFと個別株を8bio買い越した。うち個別銘柄の相当分をNVDA関連が占める。個別株だけでなくレバレッジETFにも大掛かり押し目買いが入った。
とはいえこのテーマは本質的には個別銘柄のものである。その時価総額ウェイトが大きすぎるから指数のテーマに見えるだけである。DeepseekがNVDAのとって脅威かどうかばかりが分析されたがそこはテーマではない。DeepseekはあくまでもOpenAIの脅威であり、NVDAの脅威はトランプである。
NAAIMは再び一気に悲観化した。
インサイダーの売りはDeepseekショック直前にかなり大規模なものになったが、直近のデータではやや減速した。
テクニカル。指数ベースでは下値での押し目買い意欲が確認された週と言える。機械は再び1日2%以上の指数下げが見られたらしばらく売りに傾くと思われるものの、先週月曜のように2%下げを回避できた場合、ポジションも大して重くないこともあり機械は基本的に買い戻し優勢が続きやすいだろう。
先週に続き、問題はあくまでも個人のポジショニングであり、これは先週を通して更に明瞭に悪化している。例えばニュースにもなったNVDAの巨額の買い玉のコストは明白であり、来週の課題は個人が関税のヘッドラインでぶん投げさせられるかどうか、に尽きると思われる。
前回高値に突破し損ねた高値・兼上ヒゲ陰線の6120は日次レジスタンスとなる。サポートは週足の5775と引続き遠くて頼りにならない。従って前者が近い間は売り場となり得る。週末は何があるのか分からない実感が戻ってきたため、今後も毎週金曜はヘッジ優勢になりやすいかもしれない。ロングの味方になるのはシーズナリティであり、決算を続々と通過することでブラックアウト期間は明け始めている。
- NY市場サマリー(27日)ドル下落・円上昇、利回り急低下 ナスダック・S&P急落 | ロイター
- NY市場サマリー(28日)ドル/円上昇、利回り上昇 ハイテク株回復 | ロイター
- NY市場サマリー(29日)ドル堅調、利回り上昇 株反落も下げ幅縮小 | ロイター
- NY市場サマリー(30日)ドル小幅高、利回り低下 株反発 | ロイター
- NY市場サマリー(31日)ドル上昇、利回り上昇 株反落 | ロイター
- 米国株式市場=ナスダック・S&P急落、中国新興AI躍進でエヌビディア17%安 | ロイター
- 米国株式市場=上昇、「ディープシーク・ショック」からハイテク株回復 | ロイター
- 米国株式市場=反落も下げ幅縮小、FRB金利据え置き | ロイター
- 米国株式市場=反発、企業決算を消化 テスラなど高い | ロイター
- 米国株式市場=反落、トランプ関税に身構え | ロイター
編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年2月3日の記事を転載させていただきました。