長崎坂道散歩:坂と洋館をめぐる旅

2月11日 建国記念の日。

長崎駅にやってきました。長崎に来たのは1年半ぶり。前に来たときは駅前がまだ大工事中だったのですが、見違えるようにきれいになりました。

もう私の知ってる長崎駅じゃないですね。

きれいになったのはいいことなんですが、駅が西にずれてしまって路面電車の停留所と離れてしまったのが難点です。

① 祈念坂

その路面電車に乗って石橋停留所までやってきました。大浦天主堂やグラバー園がすぐ近くにありますが、今回はそれらの中には入りません。

長崎は坂の町。石を投げれば坂に当たりほど当たり前に坂があるのですが、そのなかでもいくつか名のついた坂があります。今回はそんな坂道を散歩してみようと思ったのです。

石橋停留所から南山手方面に歩けばすぐに坂。というか階段。この町は本当に平地が少ないです。国際あいさつ通りと呼ばれる、国際とつくわりには細い道を歩いていくと「祈りの三角ゾーン」と呼ばれる場所に着きます。左手に神社、右手に寺、そして向こうには大浦天主堂の屋根。三つの異なる宗教施設が一望できるスポットです。異文化が交わり合う長崎らしい光景ですね。

祈りの三角ゾーンから人しか通れない細い路地に入り、大浦天主堂の脇を通る坂道を歩きます。ここは「祈念坂」。

居留地時代から残る坂だそうで、石畳やこの上から見られる景観が印象的なことから映画のロケ地にも選ばれています。長崎発のアイドル「祈念坂46」とか生まれないかな。

祈念坂を登りきるとそこには洋館がありました。南山手レストハウスと名付けられた石造りの建物は江戸時代末期に建てられたとされており、旧居留地の初期段階で建てられた貴重な建物です。

エレガントな建物の中は長崎を舞台にしたアニメの展示がされていました。

南山手レストハウスにはテラスがあります。映画に出てきそうなテラスの前に広がる庭。そこ見下ろす長崎の町の情景がまた素晴らしい。

平地の少ない長崎の町。山の上の方まで家々が連なっています。これぞザ・長崎という景色です。

庭からは山に連なる家々の景色が見られましたが、玄関からは長崎港の景色もよく見えます。海も山も両方の景色を楽しめる絶好のロケーションだからこそ初期の段階から居留地として建物が建ったのでしょう。

② ドンドン坂

南山手レストハウスを出てまた少し南山手を歩きます。ここは名もない坂なんですが、向こうに海が眺められてこれもまた長崎らしい絵になる景色です。

右手にかつて修道院だった建物をリノベしたホテルとレンガ通り。
ここもまた絵になる風景。

さて、いよいよ次の目的の坂「ドンドン坂」にやってきました。深く陸地の間に入り込んだ長崎湾に向かって坂は下っていきます。雨が降ると雨水がドンドンと音をたてて流れてくることからこの名がついたと言われています。

狭い坂を下っていきます。ここから望む長崎湾の夜景も素晴らしいそうです。

通り沿いにある普通の住宅。普通の住宅がもう芸術品。

③ オランダ坂

ドンドン坂を抜けたら南山手に別れを告げて東山手方面に歩きます。最後は長崎で坂といえばここ!というくらい有名な「オランダ坂」を歩きます。

オランダ坂は日本三大がっかりの観光名所といわれていますが、観光客の皆さんは坂に何を求めているのでしょうかね。異人館のように煌びやかな洋館がびっしり並んでいるのをイメージしている方も多いようですが、ここにも旧居留地時代の洋館が点在しています。当時長崎では西洋人を総称して「おらんださん」と呼んだことからここがオランダ坂と呼ばれることとなりました。

オランダ坂に並ぶ洋館群の中で、活水女学院にほど近い東山手十二番館を訪ねました。塗装がはがれかけていて少々古びていますがそれがかえって歴史を感じさせてくれます。明治元年に建てられた東山手では現存するものの中で最も古い洋館で、当初はロシア人居留者が、のちにアメリカの居留者がここに住んでいました。

建物の中にも外にもベンチが多くあるので
ゆっくり座って建物を堪能するのもいいでしょう。
ベンチに注ぐ冬の陽光がスポットライトのようです。

坂道の脇で毛づくろいするネコ。
港町がからなのかネコを多く見かけました。

町を歩けば坂道にあたる、坂道だらけの長崎。その中でも南山手、東山手は外国人の居留者が多く住んでいたため洋館も多く残り、坂道をのぼりやや体に疲れが来ているところをオアシスのように気持ちを癒してくれました。

みなさんも長崎に来たときにはオランダ坂のような名所も然り、住宅地の名もない坂を巡ってみるのも楽しいものだと思います。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年2月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。