黒坂岳央です。
独立後、再びサラリーマンに「再就職する人」はゼロではないが実際はかなり少ないと思っている。
筆者もその一人だが、独立して初めて「サラリーマンのうちにやっておくべきことがあった」と痛感した。巷でも色々と言われているが、本稿では独断と偏見で感じることを取り上げたい。

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1. クレカ作成と住宅ローン
これはどこでも言い尽くされているが、クレジットカードの作成と住宅ローンの話だ。サラリーマンは想像以上に信用がある一方、収益がどれだけあっても独立するとどうしても信用は落ちてしまう。
クレジットカードは毎月、延滞せず確実に支払いをすることが信用の実績となる。難しいのは最初にクレジットカード会社に信用してもらう、つまりは新規作成をしてもらうことにあるのだ。会社員の間にクレジットカードを作成し、しっかり毎月支払い実績を作ることでその後もクレジットカードを使い続けることができる。
また、家を買う時はたとえ潤沢なキャッシュがあっても、それには手を付けずに借金して買うのが望ましい。住宅金利は現在、0.5%前後と他の借金と比べるとその金利は破格の安さだ。手元のお金は資産運用に回し、安い金利で借りたお金で家に住む、というインフレ経済下で非常に有利な戦略を取ることができる。だがこちらも独立すると審査が通りにくくなるのでなるべくサラリーマンの間に家は買っておいた方が良い。
2. 仕事のスキルと経験
正直、これは1つ目より重要度は高い。サラリーマンの特権として、「企業側にリスクテイクをしてもらい、自分はノーリスクでスキルアップと業務経験が積める」という点にある。独立するとこれを嫌でも痛感することになる。
業界経験、業務経験があれば、少しくらい不足している点があっても「まあこの人ならやってくれるだろう」とチャレンジさせてもらえるし、しかもその間は結果がすぐ出なくても給与を払いながら待ってくれる。
ところが独立するとリスクは相手ではなく、自分が取る側へと変わる。つまり、自分にお金を支払ってくれるクライアントを安心させるために、自ら自腹を切ってスキルアップの自己投資を行い、積極的に仕事の経験値を稼いで実績を作って相手にオファーする。
過去の仕事を繰り返すだけでは、スキルアップも経験値の蓄積もできない。独立後は年齢が不利になることは少ないものの、自ら積極的に学び続けなければ、ビジネスキャリアが停滞してしまう。
それを考えると大卒後、確実に給与を払ってくれて研修やらOJTやらをしてくれる会社は大変ありがたい存在に感じる。
3. サラリーマンを理解する
日本では、労働人口の約90%がサラリーマン(雇用者)である。
仕事をしていると、高卒や大卒でいきなり起業した人とコミュニケーションを取る機会がある。その中には、社会人の常識やビジネスマナーが不足している人もいると感じることがある。
生き方はその人の自由ではあるものの、世の中の大半を占める立場を理解した方が独立後の仕事もやりやすい、というのは間違いないだろう。
筆者は30代半ばで脱サラしたが、それまでの仕事でサラリーマンがどういう心理で働いているか?どんなニーズを持っているか?どういうビジネスコミュニケーションやマナーが好ましいかを、しっかり理解できたことは良かったと思っている。
独立後もクライアントと円滑に仕事を進める上で、相手の立場を理解することが大きな助けになっている。仮に、大卒直後いきなり独立していたら常識やマナーを知らないまま損をしていた部分も少なくなかったと思う。
人生で一度はサラリーマンを経験しておいて損はない。よく「サラリーマンの経験は起業後に役に立たない」という意見があるがそんなことはない。少なくとも、世の中のマジョリティを占める人の立場を理解しておくことは、コミュニケーションを取る上で大変重要だ。
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独立すると、サラリーマン時代には気づかなかった「やっておくべきこと」が数多くあったと痛感する。「いずれ独立したい」と考えている人は、今のうちにできる準備を意識して行動しておくべきだ。
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