日本の新卒がマレーシア移住?社会人経験ゼロでもOK?海外就職のリアル

keanu2/iStock

海外移住は、ビジネスや投資で成功した人だけの特権ではありません。実は、意外にも若い海外移住者が多いのです。

今回は、その中でも特に若い、大学卒業後すぐにマレーシアに移住した加藤さん(仮名)に、ここまでの経緯を聞きました。(インタビュー日:2025年1月24日)

大学卒業後すぐにマレーシア移住

――大学を卒業してすぐにマレーシアに移住したとうかがいましたが、難しくないでしょうか。

加藤:私は、日本で大学を卒業してすぐ、22歳のとき、マレーシアに移住しました。こう言うと、どうやってビザを取得したのか?と聞きたくなる人も多いでしょう。

数千万円の資産を持っていれば、MM2H※1)やPVIP※2)などのビザも取得できるでしょう。また、経営者としての実績があれば、自分でラブアン経済特区※3)に法人を設立してビザを取得できるでしょう。でも、大学を卒業したての私には何もありませんでした。

ただ、マレーシアにあるBPO会社に雇用され、そのおかげで、ビザも取得できました。

※1)MM2H:マレーシア国内に定期預金を組み不動産を購入することで取得できる、マレーシアの長期滞在ビザ
※2)PVIP:マレーシア国内に定期預金を組むことで取得できる、マレーシアの長期滞在ビザ
※3)ラブアン島:法人税が3%と非常に低く設定されているなど、ほかの地域とは異なる税法が適用されているマレーシア国内の特別な地域

加藤さんが普段使いする中華料理店
加藤さん提供

マレーシアのBPO企業は、社会人経験がなくても採用してくれる!

――海外の会社に雇用してもらうというのは、弁護士・会計士などの国家資格を持っているとか、金融などの専門分野の経験があるとかでないと難しいと思うのですが、どうして雇用されたのでしょうか?

加藤:私を雇用してくれた会社はBPOの会社です。BPOは、「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略です。会社がビジネス全体の一部分を外注することがありますが、そうした外注業務を受託して仕事をすることです。BPOで一番よく知られているポピュラーな事業は、お問い合わせ窓口などだけ外注する「コールセンター」でしょう。

BPOの事業のなかでもコールセンターは、技術や経験が要求されることはあまりないので、社会人経験が無くても採用されますし、採用されればビザも取得できます。

――採用のハードルが低いと言っても、誰でも採用されるということは無いですよね?

加藤:コールセンター業務は日本企業から受託するので、日本語を話せることが必須です。あとは、顧客からのリクエストなどをタイピングする必要があるので、最低限のタイピング技術も必要です。でも、必要条件はこれだけです。ですから、日本語を話せる人であれば、ほぼ誰でも雇用されると言ってよいでしょう。

マレーシアのBPO企業では、20代から50代まで幅広い日本人が働ける

――そうすると若い人が多いのか、逆に、中年以降でも採用してもらえるから中年以降が多いのか、まったくイメージが湧かないのですが、どういった年齢構成でしょうか?

加藤:マレーシアに来てから2回転職して、いま私が勤めている外資系BPO企業の場合、60歳定年なのですが、20代が20%強、30代が50%弱、40代と50代が約15%ずつです。ですから、30代が多いとはいえ、年齢的にかなり分散していると言えます。知っている限りで、56歳で採用された人もいます。

マレーシアBPO企業、日本語しかできなくても月に約30万円、英語もできれば月に約35万円

――BPO企業での仕事、勤務時間はどうでしょうか?

加藤:担当するプロジェクトによっては、夜勤や土日勤務もありますが、基本的に、1日の9時間勤務(そのうち、昼食休憩1時間、小休憩30分なので、実質労働時間7時間30分)で週休2日です。ですから、決して厳しいとは言えないでしょう。

――給料はどれくらい貰っていますか?

加藤:BPO企業のなかでも様々な職務がありますが、コールセンター業務について見てみると、日本語だけできる人の場合、月給9,000リンギット(約30万円)、日本語に加えて英語ができると月給10,000リンギット(約34万円)くらいが採用時の目安です。ここから9%の税金が引かれます。

ちなみに、社会保険料は任意加入で給料の11%が天引きされるのですが、日本のような「賦課方式」と違って「積み立て方式」ですから、自分の支払った社会保険料は自分に還元されますし、毎年5~6%の利子がついているので、お得です。私は加入しています。

――マレーシアの企業だと東京よりも給料が安いのかと思っていましたが、そんなことはないんですね。

ワーホリでオーストラリアに行くより、マレーシアでBPOの方が稼いで貯金もできる!

――最近、ワーホリでオーストラリアに行って月給30万円以上も稼ぐ若者が増えているなどの報道を見かけますが、マレーシアに行って稼ぐのもアリですね。

加藤:そうですね。東京の物価の2倍以上すると言われるオーストラリアと比べると、物価も安く暮らしやすいです。

オフィスの近くのコンドミニアムを借りる場合、だいたい月額2200リンギット(約75,000円)~ですし、離れた場所であれば、もっと安いコンドミニアムはいくらでもあります。

加藤さんの住むコンドミニアムとプール
加藤さん提供

加藤:食事も、わたしは独身で、だいたい8割から9割は外食ですが、1食500円から1,000円ですから、東京よりも安いですね。

ちなみに、マレーシアは、マレー系・中華系・インド系の人々が住んでいるのですが、マレー料理・インド料理よりも中華料理の方が、安くて美味しいと思うので、ほぼ毎日中華料理です。

――これは、大っぴらに聞いてはいけないのかも知れませんが、勤務時間が短めですから、稼いで貯金したいという人の場合、オンラインでできる仕事を副業でやることもできそうですね。

加藤:そうですね、副業も十分できますし、やっている人も多そうです。マレーシア居住者が海外で得る所得については、マレーシア国内で所得税がかかりませんから、日本のクライアント向けの副業など、良さそうですね。

これからも、BPO企業で仕事を続けていく?

――加藤さんの今後のプランはありますか?

加藤:わたしは、大学卒業後すぐにマレーシアに来て働き始めたので、日本で働くこととの比較はできませんが、マレーシアでは、サービス残業をさせられるとか、上司に怒鳴られるとか、仕事上で嫌な思いをすることが全くありません。

ですから、日本に帰国して働くことは考えていません。

とはいえ、BPOの仕事をしていると、「BPOを一生続けていく?」と聞かれることもあります。

たしかに、BPOは、クライアント企業から割り振られた作業をこなしていくので、スキルが付かず、将来が不安になりやすいというのは、あるでしょう。

ただ、海外に住むことで英語を使えるようになる、管理職を目指す、ということで、自分のバリューを上げていこうと思っています。

筆者、OWL Investments 代表取締役・弁護士の小峰孝史が執筆した新刊「富裕層3.0 日本脱出」が2024年12月25日に発売されました。

フリーランス・スモールビジネスオーナーが海外移住して、税負担を軽くし資産形成、お子様をバイリンガルに育てるための裏技を詰め込んだ、2025年の最新ノウハウ本となっています。