子育ては親育て!育児を通じて成長できたスキル3選

黒坂岳央です。

毎日、子供と一緒に過ごして気づくことがある。育児とは一般的に、親が子供を育てるものと考えられがちだ。しかし実際には、親もまた子供に育てられているのではないだろうか?ということだ。調べてみると「子育ては親育て」という言葉があり、実は親の方も成長していることがわかった。

筆者自身、育児を通じて、確かに親として成長したと実感する場面が多々あった。その中で特に身についたスキルを3つ紹介したい。

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1. 忍耐力の向上

まずは忍耐力、これが最も強くなったという実感がある。

仕事や勉強をする上で長期的に努力を続けることは、どちらかといえば得意な方だと思う。必要なことなら、苦痛の要素があっても何年でも継続することはできる。継続する技術をずっと学び、検証し、改善してきたからだ。

しかし、育児は一筋縄ではいかない。仕事や勉強は基本的に自分の努力次第で成果を得られる。しかし、育児の相手は論理が通用しない子供だ。建設的な議論も、論理的な提案も思うようには進まない。

育児における忍耐力が必要な最大の理由は1つに集約できる。すなわち、「不確定性が強く、予測不可能な相手に柔軟に対応する必要がある」ということに尽きる。

仕事でも相手主体の展開はよくあるが、上司や取引先もある程度好みや思考、価値観は付き合う中でわかってくる。そうなれば徐々に相手の行動も予想できるようになる。

だが、子供は昨日までOKだったことが、今日はもうNGになることがよくある。生まれたばかりの頃は、毎日この変化に振り回されていた。「ああ、どうしよう」とうろたえることも多かった。

だが、今は違う。「はいはい」とイチイチ深刻に受け止めず、笑いながらでも子供の機嫌を損ねずに対応できるようになった。気がつけば対人関係全般における柔軟性や忍耐力が高まっていた。

2. 人間心理の深い理解

大人はなかなか本心を出さないし、我々日本人は本音と建前があるので余計に分かりづらい。

しかし、子供は本当に正直だ。空気を読まずにストレートに欲求をぶつけてくる。これはまだ精神的に未熟だからなのだが、それ故に人間心理の本質を学ぶいい機会になると感じている。

たとえば子供は「見てみて!」とよく創作物の評価を求めてくる。赤ちゃんも親の気を引くためによく泣く。これらの原動力の多くは承認欲求であり、人間である以上、承認欲求は赤ちゃんでも持っている強い欲求なのだと理解できる。

大人になると誰しも、承認欲求をそのまま求めたりはしない。みっともないとわかっているからだ。だからそう見せないよう、テクニカルになる。こじらせた大人になると、ブランドや肩書きで欲求を満たそうとすることもある。

そして人がコミュニケーションを試みる時は悩み解決、もしくは承認欲求の解消のどちらかがほとんどであることを理解することで、「ああ、これは話を聞いて共感してほしいのだな。では自分が話さず相手に話させよう」といった相手のニーズを意識した振る舞いができるようになったと感じる。

結局、人の欲求部分は一生変わらない。育児を通じて、人の根本的な欲求がよく分かるようになるので、子供を喜ばせるのと同じアプローチで大人を喜ばせるのが上手になる。これにより、対人関係スキルが向上するのだ。

3. 人生のマネジメント能力

独身だった頃と、子供を持った後とで異なる最大の違いは「自分のため」から「家族のため」に変わったことだ。これにより、人生全体のマネジメントを家族中心の戦略に変えるようになった。

自分一人が生きていくなら、都心の便利なロケーションにあるマンションへ住むことを選ぶだろう。しかし、今はまったく異なる価値観を持っている。

子供の成長を意識すると、教育環境や周辺治安、買い物、公園など自分一人では選択基準に決して登らない要素をしっかりと考慮する。今後、引っ越しをする先もこのような観点から選択した。

また、世間的にも「資産運用は資産の最大化をするためにする投資戦略」といったものが受けている。自分も昔は似たような考え方をしていて、「40代はまだ時間があるので、資産運用はできるだけリスクテイクを」という感覚を持っていた。

だが今は違う。子供たちが自分たちの手を離れた20年後、妻と二人になってから大金を得ることにあまり価値を見いだせなくなったのだ。老後はどうせ、今ほど必要なお金は減るのは明白だからだ。

多少運用効率が落ちても構わない。それよりも、子供たちがそばにいる今こそ、手元のお金を体験や教育に投資するほうが価値があると考えるようになった。

独身の頃は、マラソンのように遠い未来を見据えた投資戦略を考えていた。しかし今は、子供との時間を大切にするため、短・中距離走のように、今この瞬間を大事にする資産戦略に価値を見出すようになった。

「子育ては親育て」という言葉の通り、育児とは親が子供を育てるだけでなく、親自身も成長していくものなのだと実感する。そしてそのスキルは仕事だけでは身につかないものもあったようと感じている。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。