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本稿では、筆者に寄せられた薪ストーブ被害者の要望書を紹介する。
この内容を読まれれば現代住環境での薪ストーブの煙は有害で「人と環境に過酷で加害性が極めて高い」という事実、欧米諸国で規制が当然のように強化される理由が理解できると思う。因果関係は無いと断言する行政府の勉強不足を指摘しておく。
これは2024年に当該被害者が関係官庁に向けて対処要望を発出したものであり、言わば木材燃焼煙で隣人を半殺しにするような健康被害の悲痛な現実と行政府・首長・議会議員の悪意ある怠慢が克明に記されている。
また、本事例にあっては(苦情を受け逆切れするような)薪ストーブ使用者に典型的に見られる非人道的かつ極めて自己中心的で反社会的な姿勢が顕著に示されていることが特筆されるが、他の被害者も似たような経験をされているとの数十例の報告を筆者は頂いているし筆者も同様の経験を現在進行形でしている。
そのような背景事情であることから、頂いた原文では個人情報が含まれるので投稿者の安全保護に充分配慮し、当該部分はマスク・削除・表現の変更を筆者の判断で加えていることをお断りしておく。
安全確保の必要とは、当該被害者に対し薪ストーブ業界関係者による嫌がらせ・危害を加えられる可能性が充分に懸念されるためである。
筆者は毎度ながら繰り返すが、各行政機関および各議員に対し、この問題への実効性ある対処を要請する。
そのための根拠が必要である、というなら相応の信頼性が高い機材を使用した「実際に薪ストーブ家屋付近で長期間測定した汚染物質」についての科学的情報の提供をする用意があることを申し添えておく。
筆者は本稿ではこれ以上の注釈を加えないが、冒頭で3点だけ苦言を呈してから要望書を紹介しよう。薪ストーブ業界の酷さについては言うまでもないことだが。
- 隣人加害を承知しながら薪ストーブを使用する者は反社会性が極めて高いという事実。
- 薪ストーブ煙害を認知しながら実効性ある対策等を行わない行政府の悪意ある怠慢。
- 薪ストーブ使用家屋の周辺住民たちの怒りはピークに達している危険性が有ること。
被害者から行政府への要望書
環境省 水・大気環境局大気環境課 御中
【薪ストーブから発する煙、臭気による健康被害、生活被害からの救済を求めるご要望】
私達は隣のZ事業者事務所で使用する薪ストーブから発する煙及び臭気により、日常生活ばかりか健康面、精神面からも甚大な被害を受けている者です。
被害を受け始めて以降、在住しているP市・R市長に対し何度も救済を求めましたが、法規制がないことを理由に対応して頂くことができず、被害は続いています。
一方、私達同様、薪ストーブの煙、臭気による健康被害、生活被害を受けているにも関わらず救済を受けることができず、大変困っている方々が日本全国に多数居られることがわかりました。
同時に、環境省 水・大気環境局大気環境課発行の「木質バイオマスストーブ 環境ガイドブック」には、排ガス成分と健康影響や薪ストーブの主なトラブルと原因、ご近所への配慮等が記載されていることもわかりました。
つきましては、是非、本問題を国の取り組むべき重要課題の一つと捉えて頂き、スウェーデン等薪ストーブ先進国と同様、住宅街での薪ストーブ使用禁止等、健康被害や生活被害を鑑みた法令や条例の制定を願いたく、ここに伏してお願い申し上げる次第です。
なお、以下に今までの経過や私達が行って来た対応等を詳細に記しましたので、状況をご理解頂くとともに善処頂きたく、何卒宜しくお願い申し上げます。
1. 経過
・2010年12月、静かで緑多く空気が綺麗な現住居に運よく広い土地を購入し、理想の間取りと設備を備えた一戸建て住宅を建てることができました。以後、庭で採れた新鮮な野菜を食し、ウッドデッキで庭を見ながら寛ぎ、隣の公共施設から聞こえる元気な声でこちらも元気を貰えるという、夢に描いたような理想的な生活の場を得ることができました。そこで、此処を終の棲家と決めるとともに、地域の仲間づくりもし、地域活動も始めました。
・2022年10月、隣の公共施設跡地にZ事業者が自社の事務所を建て、同事務所に設置した薪ストーブを使用するようになって、それまでの生活が一変しました。先ず、薪ストーブから発する煙と悪臭により、窓を開けることも、洗濯物や布団を干すことも、庭に出る事すらできなく、日常生活が脅かされるようになりました。
・更に、この苦痛によりA、妻Bとも以下の身体的異変(健康被害)を生じました。
A:
2023年1月 ストレス性胃炎発症 現在も処方薬服用中
2023年2月 不眠症 現在も市販薬服用中
2023年9月 徐脈現象発症 重度心房ブロックと診断され、ペースメーカー埋め込み手術を受ける。P市より第1種身体障害者と認定される。
B:
2022年11月 ストレス性胃炎発症 現在も処方薬服用中
2022年12月 情緒不安定、動悸、頭痛、不眠症等を発症、診断を受けるが原因不明。ストレスによるものではとのこと。発症都度処方薬服用。
2024年9月 めまい症状発症。診断を受けるが原因不明。処方薬なし。
これらの健康被害のうち、最も重大な疾患のAのペースメーカー埋め込み手術については、手術を受けた同病院で毎年人間ドックを受診しており、一度も心疾患についての指摘が無かったため、原因を担当医に質したところ、薪ストーブの煙に含まれる有害物質と夏の酷暑による可能性が高いとのことでした。
また、Bは薪ストーブを使用し煙や悪臭を感じる都度情緒不安定となり、ヒステリー現象を起こしていましたが、今年9月、薪ストーブの使用を始める時期に近づいた途端、めまいを訴えるようになりました。
このままでは、二人とも間違いなく精神的におかしくなりそうです、またAは心疾患が酷くなり重篤な症状になるかも知れない状態です。
2. 対応行動と結果
・2022年10月、薪ストーブから発生する煙と臭気を感じ始めてすぐ、Z事業者を訪ね、被害を受けている実態を申し出て改善を求めましたが、Z事業者は「当方は法的に何も悪いことはしていない、何か文句があるなら裁判で」との、にべもない返事で、対話できる状態ではありませんでした。
・このため、2022年11月にH町会を訪ね、対処をお願いしましたが、町会としては隣同士のいざこざには対応しない。と受け付けて貰えませんでした。
・このため、2022年12月、P市⾧宛に「薪ストーブから出る煙と臭気、煤による被害の排除に関する要望書」を提出し、P市議会議⾧宛にも同要望書を提出しましたが、本件は市議会では不採択となり、P市⾧からは薪ストーブの燃焼臭が周辺に発生している様子は認められないとの回答があったのみでした。
・納得できない回答だったため、P市⾧宛に2023年3月及び同年4月でこの回答を糺すとともに薪ストーブの使用制限の条例制定を求める質問状、要望書を提出しましたが、法令で規制のない薪ストーブの使用を制限することは薪ストーブ使用者の財産権を侵害することになるとして却下されました。
・その後、2023年9月にAは重度心房ブロックと診断されペースメーカー埋め込み手術を受ける重篤な病気を患い、担当医からはこの原因が薪ストーブから出る煙にある可能性が高いと指摘されたため、2023年10月、P市⾧宛に薪ストーブの使用規制を求め、我々の健康と生活権、環境権の保護を訴える質問状を提出しました。しかし、身体的被害については市は見解を示す立場にないとの回答しか得られませんでした。
・このように、生命に係わる重大な身体的被害に対してもあまりにおざなりな回答と感じたため、2023年11月、P市⾧宛に再質問状を提出しましたが、身体的被害と薪ストーブの煙、煤の因果関係に関する科学的根拠が不明であり、法的規制のない機器の使用に関する民事上の事案であることから、市として見解を示すことができないとの被害事実を無視するかのような回答でした。
・この間、本件に関し相談していましたP市議会議員のお計らいにより、P市環境保全課職員も同席のもと、11月にZ事業者と本問題の改善に関する話し合いの場を設けて頂き、この場でZ事業者から煙や臭気の発生を抑える努力をするとともに薪ストーブを使用しない日を増やすこと、費用負担があれば薪ストーブ撤去の考えもあること等の歩み寄りが期待できる発言がありましたが、何故かZ事業者はその後直ちにこの時の発言を覆したばかりか、以後私達と話し合うつもりもないと態度を豹変させました。
(この話し合い時の記録は録音すると同時に骨子を記録文書の形で取り交わしてもいます。またZ事業者の態度豹変は話し合いに同席頂いたL議員、元政党系新聞編集⾧のN様が同社に記録文書の同意について話に行かれた時の状況です。)
・2024年に入り、何とか薪ストーブの使用を始めるまでに本件の解決の道筋をつけたいと思い、4月、市⾧宛に「薪ストーブの煙と臭気による被害の救済を求める再要望書」として、住宅街での薪ストーブ使用を規制する措置を設け、生命権と健康に関する権利を求める要望書を提出しました。
しかしながら、それまでと同様、薪ストーブは法規制の対処となる施設に該当せず、規制の根拠がない。薪ストーブ設置に法的な規制はなく「財産権」として保障されており、市から制限をかけることはできない。また、生命権と健康に生活する権利については行政上の介入は行えないとの回答でした(これらの経緯に関する資料等は全て記録として残してあります)。
・2024年5月、薪ストーブの使用を始める時期までには何とかして本件を解決したいと願い、この時の回答にあった「公害相談ダイヤル」(総務省公害等調整委員会事務局)を訪ね相談し、同局でのアドバイスに従い、同月にQ県環境政策部環境政策課を訪ね、相談の上、指定様式によりQ県公害審査会への調停手続き申し立てをしようとしているところです。しかしながら相談後4カ月を過ぎた現在に至っても本件に係る確たる返答はありません。
以上の通り、私達は日常生活だけでなく生命の危険さえ脅かされる被害を受けているにもかかわらず、P市は法規制がないという理由一つで薪ストーブ使用に関する条例一つ作ろうともせず、私達の生命と生活を守るための対応を何もしようとはしてくれません。
一方、Q県公害審査会を紹介頂いた総務省公害等調整委員会に相談にお伺いした際に、私達同様薪ストーブの煙や臭気の相談が日本全国から多数寄せられていることを知りました。
現在は同審査会で調停をして頂けるのかどうかすらわからない状況ですが、調停して頂けたとしても当事者同士の解決に過ぎず、全国に多数居られる同様な被害者の救済にはなりません。
従って、冒頭にも記載しました通り、本問題を国の問題として捉え、少なくとも住宅街では薪ストーブ使用を規制する等の措置を講じて頂きたく、ご要望する次第です。
どうか私達を、私達同様の日本全国の被害を受けている方々をお助け下さい。
私達の生命を、健康を、生活をお守りください。
編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2025年3月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。