古くなったモノの買い替えサイクルが長くなった理由

朝、洋服に着替える時にふと思うことがあります。「この服、何年来ているのだろう?」ファストファッションが流行だった時期、女性服は「安かれ悪かれワンシーズン」なんていうものありましたが、SDG’sが席巻したこともあり、あまり流行に左右される洋服は止めよう、なんて思った方もいらっしゃったかもしれません。

お恥ずかしい話ですが、私がフィットネスするときに履く短パン。ミニマリストの私は3つしか持っていないのですが、そのうちの1つは何と20数年前にユニクロで買ったものです。未だほつれすらなく、色落ちもせず、この製品の強さはどうなっているのだろうと不思議に思うほどであります。アパレル業者の方からすれば20数年も使われると「商売あがったり」と思われるでしょうが、それぐらい商品は壊れなくなったと思うのです。

政府調査によるとスマホの買い替え期間は4.4年とあります。私の場合、スマホの機器代金が2年リースで月々の使用料に組み込まれているので2年後に残存価値で買い取るか、新しいのに買い替えなくてはならず、私の場合、買い取って新しいのを新規に当地で使い、古いのを日本で使う携帯(いわゆる2台持ち)用にして、更に古いのは日本で中古で売却といった具合でこればかりは消耗品のような感じになっています。ただ、私はスマホはあまりいじらない方なので4年経っても全然ヘタっていないし電池の寿命もまだ十分にある状態です。もったいないと思うのですが、そうせざるを得ない仕組みに乗せられているのでしょう。

クルマの平均買い替えは新車が7.7年、中古車が6.2年と出ます。これは日本の話ですが、北米では車は足としての実用性がより重視されるため、とことん乗り潰すぐらいの勢いでメーター3周目(20万キロ越え)は珍しくないでしょう。スマホもそうなのですが、車も最近はデザインすら目新しさがなく、どうしても購買意欲を掻き立てるものがあるのか、といえばそうでもありません。

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会社の取引先相手が「オタクのBMW売ってよ」と再三言ってくるので私も以前からEVのSUVにしたいと思っているのですが、会社の右腕(=大蔵省)が「この車は乗りやすいし荷物もたくさん積めるから嫌だ」と拒絶されています。もう11年目なんですが機能的には何も申し分ないことは事実です。月極の駐車場事業をやっているので顧客のクルマを見ても以前ほど買い替える人はいません。多分クルマフリークだった世代が買い替えする年代から外れてきており、次の世代はそこまでクルマに固執しないということもありそうです。

先日、イベント出店してアニメ関係の本などを販売していて思ったこと。売れ線は価格の高いしっかりした本。円換算で一冊7-8000円もする書籍がポンポン出るのですが、安っぽい本やサイズが小さい本は思ったほど売れないのです。つまりオタクがコレクターとして収集する以上、いかにも「スゴーイ!」と思わせるような数百ページもありそうなずっしり重いものを好んで買うのです。きっと家の本棚に並べても人が来た時に自慢できるでしょう。

要はしっかりしたものを厳選して買う、この傾向が出てきているように感じるのです。モノの買い替えサイクルが長くなった理由として壊れなくなったことは大いにあるのですが、もう一つは「良いものは何時までも使える」ということです。これも私の自慢話になるかもしれませんが、19歳の時、英国で短期の英語研修の帰りにパリに褒美旅行で立ち寄った際、スイスのバリーの靴を清水の舞台から飛び降りるぐらいの気持ちで買いました。確か当時でも5万円ぐらいしたと思います。とても履きやすい黒の革靴で大事にして時折履いているのですが、実は今でも時々履いているのです。44年前の靴が今でも履けるのです。

私の物持ちの良さという点ではこの靴と昭和30年代製のナショナルブランド(現パナソニック)製の赤いヘアドライヤー。これ、まだ使える代物です。博物館に寄贈できそうですよね。

私の感覚ではモノは既に溢れているし、今すぐ買い替えたり買い足したりする必要がないこともあり、モノを買わなくなったのだろうと思います。では何に金を使うのか、と言えば飲食とサービスなのでしょう。サービス消費は人によります。私のように航空機のビジネスクラスに価値を見出せない人もいるので人それぞれかもしれません。

モノの消費が積極的ではなくなったもう一つの理由はモノが家にあると邪魔になる、という理由はあると思います。家の中がモノであふれている人っていますよね。あれがいかにも一世代前の感じがするのです。私は不動産事業をしているので家のインテリアやデザインも気になるところですが、基本的にどの物件も「すっきり」がキーワードです。よって北米住宅はオーブンにしろ、電子レンジにしろ壁収納できっちり収まっているし、冷蔵庫も表面が木目でキッチンのキャビネットと同じようなトーンにしてキッチン全体になじむようなオプションもあります。こういうデザインは日本にはないのですよね。

一度断捨離してみるのもよろしいかと思います。本当に必要なものなんて知れているものです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年3月16日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。