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中国経済の長期低迷
中国経済の低迷は言われて久しい。名目成長率は毎年5%程度維持しているようであるが、過去の毎年10%を超える高度成長から見ると低迷と言えよう。名目5%成長についても、かねてより専門家からは「水増し」の疑いが指摘されている。
中国は14億人の人口を抱えているから、毎年5%程度の名目成長率では、国民生活の向上をもたらすことはできない。現に若者の失業率は20%前後にも達しており、大学を出ても就職は容易でない状況である。この点は人口1億2000万人で失業率2%台の完全雇用に近い日本とは著しく状況が異なる。
深刻な「不動産不況」
とりわけ、中国の「不動産不況」は極めて深刻である。これは高度成長を続けるため、中央政府と地方政府が長年にわたり不動産建設に有効需要をはるかに超える莫大な投資を続けた結果である。
このため、新たに建築した高層マンションなどの多くの不動産が売れずにありあまり、廃墟と化している状況である。その結果、北京、上海を含め全国の不動産価格が暴落しまさに「不動産バブル崩壊」である。
中央政府の補助金対策
このような低迷する経済状況の根本原因は構造的な「有効需要不足」にあることは明らかである。中国では長年の高度成長により国民の間に不動産、各種電化製品、自動車などの「もの」がありあまり、「もの」がいきわたり、「もの」が売れなくなっているのである。
このため危機感を持った中央政府は、不動産、各種電化製品、自動車などの購入者に対して、20%程度の補助金を支給する対策を打ち出したが、「有効需要不足」は構造的であるから、一時的効果に過ぎず、恒常的な需要不足対策にはならないであろう。
中国経済低迷は構造的
以上からいえることは、中国経済の低迷は構造的であり、もはや過去のような高度成長は不可能だということである。したがって、中国は「内需」には期待できず「外需」すなわち貿易に活路を見出すしかない。
しかし「外需」についても、共産党政府の補助金による鉄鋼、自動車等の過剰生産や「安売りダンピング」については欧米諸国の反発は強い。トランプ政権の「関税政策」も貿易依存度が大きい中国にとって大きな打撃になる。
経済低迷の中国に「台湾侵攻」の余力はない
このような経済の低迷が今後も長期継続すれば、中国には経済的にも「台湾侵攻」の余力はなくなる。経済の低迷は軍事力の拡大にとっても大きな負担となり当然影響するからである。
中国経済の低迷は構造的であるから、中国についても、かつて米国との軍拡競争に経済的に敗北し崩壊したソ連の二の舞になる可能性は否定できない。
「台湾侵攻」は中国共産党政権にとって莫大な人的物的負担を強いる極めて危険な賭けである。「台湾侵攻」の有無は中国経済の動向がカギを握っているのである。