日本の変化を妨げる「見えない力」は何なのか?

Juergen Sack/iStock

日本の銀行の振り込み手数料が高いことが話題になっています。メガバンクでは、窓口での他行への振込手数料が税込990円となっており、ネットを使わないと、かなりの高負担になります(画像は三菱UFJ銀行より)。

カンボジアの銀行では、口座開設すると銀行のアプリを使ってQRコードによる無料の送金が簡単にできます。

これはカンボジアの国内であれば、別の銀行口座の他人同士の口座間でも可能です。日本のPayPayと同じ感覚で銀行口座が使えるのです。

QRコードの便利なサービスのお陰で、今やカンボジアではクレジットカードを使う人は今やほとんどおらず、お店の支払いや友人同士のお金の精算も、銀行アプリからQRコードで無料。家賃や管理費の支払いも対応可能です。

日本の銀行もネットサービスを行っていますが、使い勝手が悪く、気軽に利用することができません。

銀行だけではありません。ライドシェアもカンボジアの方が進んでいます。

グラブ(GRAB)と呼ばれるウーバー(UBER)と同じようなアプリのサービスがあり、現在地と行き先を入力すると料金が表示され、配車がすぐに完了します。

日本でも似たようなアプリがありますが、タクシー会社に繋がり通常のタクシー料金に加え配車料金が上乗せされる割高なサービスです。

カンボジアでは、乗車する車両も割安なトゥクトゥクから、一般車を使ったサービスまで複数の選択肢から選べます。

支払いはクレジットカードでもできますが、多くのカンボジア人はQRコードで行っています。現金はもはやほとんど使われません。

新しい銀行サービスにせよタクシー会社以外の車を使ったライドシェアにせよ、日本でも導入しようとすれば、技術的な問題はほとんどありません。

しかし、既存の金融機関やタクシー業者の収益性を低下させることになります。

そんな既得権益を守るために変化を妨げようとする「見えない力」が既存の利便性の低い高コストサービスを延命させているのです。

そのツケは結局、日本の消費者が負担しているのが現状です。何とも困った状況です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年3月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。