尹錫悦大統領の弾劾が迫り、反日過激派の李在民氏が後任最有力となる中で、日韓関係は冬の時代をまた迎えそうだ。

李在明氏 同氏インスタグラムより
『誤解だらけの韓国史の真実』(清談社)という本を2015年に刊行した。朴槿恵大統領が「告げ口外交」を展開し、安倍首相が打開策を探っていた頃だった。
外交的配慮はあまりしていないので、韓国・朝鮮の人から見て少し気に入らないところもあると思う。また、日本人にとっても、保守派・親韓派いずれからも嫌がられるのではないかと心配したが、幸い、これまでにない中立的な日本語による韓国史だと評価された。
なにしろ、方向がどうであれ、配慮ばかりしていると真実から離れていくと思う。とくに韓国との関係においては、相手の面子を立てないとうまくいかない。逆に言えば、立場に配慮してやれば、ある意味で柔軟だが、韓国には主張すべきところはきちんとしていかないと、あまり良い関係はつくれないと思う。
その後、韓国とは安倍首相と朴槿恵大統領が日韓慰安婦合意などを通じて改善の兆しが見えたが、文在寅大統領のちゃぶ台返し的な反日外交のために、大阪G20のような機会にもバイ会談は開かれないことになった。

安倍首相と朴槿恵大統領 首相官邸HPより
そこで、自分もいくつかの本などを書いて厳しく批判した。とくに、『ありがとう、「反日国家」韓国 ― 文在寅は“最高の大統領”である!』(ワニブックス)は地味だが、日韓交渉を詳細に精査して反論した労作だと自負している。
『捏造だらけの韓国史 ― レーダー照射、徴用工判決、慰安婦問題だけじゃない』(ワニブックス)、『日本人のための日中韓興亡史』(さくら舎)、『韓国と日本がわかる最強の韓国史』(扶桑社BOOKS新書)も同様だ。
しかし、自分の韓国ものの中でも、やはり出発点は『誤解だらけの韓国史の真実』なので、全面改定したいと思っていたところ、清談社から5月に発売されることになり、予約を受け付けている。読む歴史であると同時に、系図や地図、年表も充実している。また、韓国語の読みも在日の方にしっかり検証してもらった。
日本人と韓国人ほど仲の悪い隣人もいない。日本人は韓国人が大嫌いで、韓国人は日本人を憎んでいる。
この不幸な関係は、疎遠であるがゆえではなく、親密さから来ている。言葉も近く、顔や身体的特徴、風習も似ており、他の外国人より接触する機会もはるかに多い。その近さゆえに、かえって粗が見えるのではないかと思う。
歴史についても、互いのプライドが正面衝突する。近年、嫌韓歴史本がブームになっているのもそのためだ。
一方、日本国内では反体制、特に反天皇制の立場から韓国の国粋主義的な歴史観に便乗してそれを利用する人たちも多く、事態を複雑にしている。
そうした背景もあり、日本で刊行されている韓国の歴史本は、嫌韓か媚韓のどちらかになってしまう。そこで本書では、中立的な外国人になったようなつもりでこの隣国の歴史を、同じ姿勢で日本のこともとらえながら描いてみた。
その結果、外交的配慮はあまりしていないので、韓国・朝鮮の人から見て少し気に入らないところもあると思う。また、日本人にとっても、保守派・親韓派いずれからも嫌がられるのではないかと心配したが、幸い、これまでにない中立的な日本語による韓国史だと評価された。
なにしろ、方向がどうであれ、配慮ばかりしていると真実から離れていくと思う。特に韓国との関係においては、主張すべきところはきちんとしていかないと、あまり良い関係はつくれない。文在寅時代の中国など、高句麗や百済はいずれも中国人の国だったなどと言いたい放題だが、特に恨まれているわけでもなく、中韓関係はどんどん深化しているのだから、日本人も言いたいことは言えばいい。
とくに古代史の分野では、韓国が先進国で日本に一方的に物を教えたとか、日本が半島を支配したことはないといった見方は、はっきり否定すべきだ。稲作が温暖な日本より寒冷な半島で先に発展するはずがない。また、日本の半島支配は中国の史書にも、好太王碑にも書いてある動かしがたい史実だ。
一方、日本と韓国の民族と言語のルーツについては、初版の出版から10年のあいだにゲノム分析が進化し、「日本人のルーツ」について、縄文人に後発の弥生人が渡来して多数派になったという『二重構造説』が有力になり、縄文人が稲作を習得して変化したと主張する少数説と対立していた。
それが、三千年ほど前に、遼寧省西部の遼河西岸の民族が初歩的な農業と日韓両国語の母語をもって南下して朝鮮半島や日本列島に住みつき、さらにその後に中国などから稲作農民がやってきたという『三重構造説』、つまり弥生人の渡来を二段階に分ける説が唱えられた。
これによって、日本語と韓国語がなぜ似ているのかといった多くの謎が解ける。ただし、それはその西遼河人が日韓両国民の主たる先祖であることを意味するものではないし、弥生人の第二期の渡来が、従来「弥生人の渡来」と言われていた時期なのか、古墳時代なのか、また厳密にどこから来たかも確定していない。
とはいえ、日本語と韓国語のルーツについては、だいたいこの説で説明がつくと思うし、今後は「三重構造説」の精緻化によって、真実がだんだん明らかになってくると思うので、改訂にあたってはそれを採り入れた。
「天皇家は朝鮮半島から来た」などという説を、立派な社会的地位のある人が言うことがあるが、何の根拠もない。
また、日本は中国に対して新羅・高麗・朝鮮王国と違って完全な従属関係にあったことはなく、その論理的帰結として、日本と半島の国の対等外交は成立しなかった。「韓国と対等だった」と言えば向こうは喜ぶので、そうしてあげたい衝動にかられることもあるが、それは中国とのあいだの歴史認識も歪めるので、賢明ではない。

韓国 ソウル Marco_Piunti/iStock
日韓併合を含めた近代の歴史について、日本が反省すべき点が多いことは否定できないが、外交関係でどちらかが一方的に悪いということは普通ない。
そうした点も含めて、むしろ韓国の人の反応を気にするより、欧米など第三国の人たちから見て「客観性に欠ける」とか「それはおかしい」と思われないように注意するほうが大事ではないかと思う。
また、韓国も今や堂々たる先進大国である。ここ半世紀に韓国が成し遂げた偉業と現状からすれば、過去の問題についても、その国際的地位にふさわしい大人の姿勢をとってくれてもいいのに、というのが正直な感想である。