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1. 経済活動別の国内総生産
前回は、経済活動別に労働者1人あたりの国内総生産、固定資本減耗、国内純生産についてご紹介しました。
固定資産への投資が多い経済活動ほど、固定資産の維持費が嵩み、労働者の正味の生産性がその分目減りする事になります。
今回は改めて、経済活動別の国内総生産と国内純生産の総額について確認してみましょう。
まずは、国内総生産(GDP)からです。

図1 経済活動別 国内総生産 日本
OECD Data Explorerより
図1が経済活動別の国内総生産です。
製造業(青)が1990年代の水準より目減りしつつも、最も付加価値を稼ぐ産業となっています。
続いて卸売・小売業、不動産業と続きます。
4番目が建設業から、専門・科学技術へと移り変わり、それに近い水準で保健衛生・社会事業となっています
建設業は1990年代は40兆円を超える規模でしたが、2022年は30兆円を下回り、公務と同じくらいのようです。
また、2020年、2021年は宿泊・飲食業、運輸・倉庫業で、コロナ禍の影響とみられる減少傾向が確認できます。
2. 経済活動別の固定資本減耗
続いて、経済活動別の固定資本減耗についても念のため確認してみましょう。
固定資本減耗は固定資産の減価分で、企業会計で言えば減価償却費に相当するものです。
国内総生産の分配面でも計上される項目となります。

図2 経済活動別 固定資本減耗 日本
OECD Data Explorerより
図2が経済活動別の固定資本減耗の推移です。
やはり製造業が圧倒的な水準ですが、不動産業の規模が大きい事もわかります。
不動産業には家計の持ち家の帰属家賃も含まれますので、その影響も大きそうです。
続いて、公務や卸売・小売業、運輸・倉庫業、電気・ガス・空調供給業などが続きます。
3. 経済活動別の国内純生産
続いて、国内総生産から固定資本減耗を差し引いた国内純生産についても見てみましょう。
国内純生産 = 国内総生産 – 固定資本減耗
国内純生産は、それぞれの経済活動で固定資産の維持費を差し引いた、企業や家計の正味の取り分を示します。
固定資産残高が多く、固定資本減耗が多い経済活動ほど、正味の国内純生産は目減りする事になります。

図3 経済活動別 国内純生産 日本
OECD Data Explorerより
図3は日本の経済活動別 国内純生産です。
非常に特徴的なのが、製造業と不動産業がそれぞれ大きく目減りしている事です。
まず製造業に着目すると図1の国内総生産では圧倒的な水準でしたが、国内純生産では卸売・小売業に近い水準となっていて、2022年には逆転されています。
付加価値の総額では製造業が最も多い最大産業ですが、労働者の稼ぐ正味の純付加価値では卸売・小売業が最大という事になります。
不動産業も国内総生産に対して国内純生産は大きく目減りし、近年では専門・科学技術と保健衛生・社会事業に抜かれています。
近年では物価が大きく上昇していて固定資本減耗の負担が大きく、国内純生産が目減りしている影響も大きそうです。
4. 日本の国内純生産の特徴
今回は経済活動別の国内総生産、固定資本減耗、国内純生産についてご紹介しました。
日本は固定資産残高が多く、その減価分である固定資本減耗の負担が大きいのが特徴です。
特にその傾向は製造業と不動産業で大きいようです。
また、産業規模そのものは大きくないですが、電気・ガス・空調供給業や情報通信業も固定資本減耗の影響を大きく受ける産業と言えます。
固定資産への投資で付加価値が増えている面もありますが、裏を返せば投資が多い割に付加価値がそれほど稼げていない事にもなりそうです。
固定資産への投資を行い、固定資産で付加価値を増やしていく事も重要と言えますが、それ以上に労働者がより付加価値を稼げるように転換していく必要性を示唆しているようにも見受けられます。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2025年4月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。