黒坂岳央です。
筆者自身も国内外のAI研究者をフォローし、研究会や技術発表に積極的に参加。さらに、AIサービスへの課金や実務での積極活用を通じて、日々その変化を肌で感じてきた。
過去の技術革新では、しばしば煽り気味な情報発信や過度な期待が先行することもあった。しかし今回のAI革命に関しては、はっきりと「本物」だと断言できる。現在思考系ですでに仕事を変えているからだ。
進化を目の当たりにする中で、今後確実に需要が失われていくスキルや職種も見えてきた。
ここでは、法整備や規制の影響を受けにくく、現時点で“すでに終わった”と判断できるスキルに絞って独断と偏見でご紹介したい。

Cemile Bingol/iStock
1. 簡単な事務作業
今後、単純作業に従事する事務職は、AIの進化と普及により確実に淘汰されていくだろう。
筆者自身、かつては法人・個人問わずアウトソーシングを活用し、ビジネスの効率化やスケールアップを図っていた。しかし今では、その方向性を180度転換している。
つまり、もう大半の外注を止めてしまったのだ。その理由こそ、AIの実用性の飛躍的な向上にある。
たとえば、議事録作成、簡易的なプログラムの構築(VBAやPython)、ウェブの軽微な修正といった業務は、今やAIが高精度かつ高速にこなす。
さらには「この業務はプログラミングをすることで自動化できますよ、よければ必要ならスクリプトも作成しましょうか?」と、まるで有能なアシスタントのように提案してくれる。
かつては「AIは人間の補助」という前提があったが、今や「AIの方が速く、精度も高い」場面が増えている。
この現実を前に、外注にコストをかける合理性は急速に薄れ、業務の自動化が実際に進んでいるのだ。
2. 責任の軽いスキル
ビジネスの現場で「一人前」とは、自ら考え、行動し、責任を持って成果を出せる人材を意味する。逆に言えば、「自走できない人材」は、今後ますますAIに代替されやすくなるだろう。
なぜなら、指示を待って作業をこなすだけの仕事は、AIが最も得意とする領域だからだ。
AIは自律的に判断し、定型業務を正確かつ効率的にこなす。そして何より、コスト面でも圧倒的に優れている。
もちろん、AIは最終的な責任を取ることはできない。だからこそ、AIが出力した成果物をレビューし、必要に応じて修正を加え、品質を担保するスキルが今後さらに重要になる。
具体例を挙げよう。
- 会計・経理業務: 仕訳入力などのルーチンワークはすでに自動化されつつある。フィンテックの普及により、人間の介在が不要な場面が増えている。
- 翻訳スキル: 初級〜中級レベルの翻訳は、AIの方が速く正確だ。これからは校正・ローカライズ、機械翻訳の仕上げといった“付加価値”が求められる。
◇
もちろん、すべての業務がAIに代替されるわけではない。
しかし、「思考停止でこなせる業務」や「指示待ち型の働き方」は、真っ先に淘汰されるだろう。
これからの時代に求められるのは、AIを使いこなし、最終的な品質を担保できる“上流”の能力だ。自ら学び、変化を受け入れ、そして自律的に価値を生み出せる人材こそが、AI時代の勝者となるだろう。
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