経済対策と選挙対策と同義か?:国を挙げて政党が国民に賄賂を出す日本

産経のオンライン版の見出しを見ていてムカついてきました。「立憲の消費税をめぐる党内分裂」、「森山幹事長発言を受けた現金給付思惑」、「自民党内の森山案 対 高市案の対立」、「れいわ大石共同代表の消費税廃止論」がトップ記事にずらり並びます。今年度予算が通過し、夏の参議院選が近づく中、各政党は祭りをしたいのでしょう。主義主張を述べる、ところが政党内でその意志は統一されることがなく、揉めに揉める、これが今政治の世界で起きている事実であります。

森山裕幹事長と高市早苗経済安全保障担当相 自民党HPより

いったいこの盛り上がりはどこから出てきたのか、これが正直、自作自演ではないかという気がするのです。石破首相の経済対策の失言報道は本年度予算を国会で討議している最中であったことから「お手つき」とされました。いざ、予算が通過すると各党、各政治家は選挙対策、特に自らが選挙に立つ立場となる参議院の議員はどんな飴玉を国民にお見せするかにかかってきます。世の東西を問わないといえばそれまでですが、声高に叫ぶ減税、現金給付は具体的に何を根拠にそう主張するのか、これがわからないのです。

日本という国は基本的にPreventive(予防的)措置を取らない国です。何かコトがおきてから対策をするというのが原則でした。これを前例主義と称する場合もありますが、要するに将来を予見してその対策を事前に行うという発想は日本には根付いていないのです。

ところが、今回の政治家の発想はまさに予防的措置であります。トランプ関税が日本経済に及ぼす影響は大きく、それを「国難」と首相は称しました。私にはこの発想が理解できないのです。民間企業は需要と供給、資本主義社会の荒波に揉まれ、優勝劣敗のチャレンジを日々行っているのです。リスクをどう評価するか、それをヘッジしているのか、これは民間企業が克服すべき課題であります。ところが時々、「官民」という言葉が走り、官主導で道を作るというわけです。これは官民ともに都合がよすぎる話でしかないのです。

つい先日までは春闘で沸いていました。2年連続で5%台の賃上げで大手企業の初任給の爆発的上昇が目についたのは記憶に新しいところです。物価高に追い付くか、と言われれば3月に発表になった2月の消費者物価指数は3.0%上昇なので一応、春闘はそれをクリアしています。もっとも99.7%の中小企業にはその恩恵がないとされますが、確実にトリクルダウン的に賃金引き上げは起きます。特に人口減の日本では賃上げをしないと労働力を確保できないので中小企業が「うちはとてもとても…」という甘えは許されないのです。賃金上げられないなら店を畳むか、という瀬戸際にあるとも言えます。

これを一部の人は経営者目線と称するかもしれませんが、そうではないのです。物理的に優秀な労働力が足りないので余力のある会社が高賃金で労働力を釣り上げている、それだけなのです。とすれば労働者は少なくとも何らかの賃金アップという報酬はあるはずなのです。それなのに政治家がこれは国難であり、物価高対策が必要というのは「本当かい?」と疑いたくなるのです。

一部の企業レベルでは確かに厳しいかもしれません。賃金は上げる、アメリカ向けは関税で売れないというアンコ状態だからです。一方で、アメリカ向けで苦しむのは日本だけではないのです。アメリカとビジネスしている世界中の企業は皆同じ境遇です。そしてその穴を埋めるべくプロダクトをどこに仕向けるかといえば日本は関税率も低いし、CPTPPもあるのです。日本市場は大いに解放されており、海外からの物品であふれる公算が高いのです。

日銀は現在の経済状態を悪いとは思っていません。故に金利を引き上げてきたし、本来なら5月ぐらいにはもう一度上げようか、というところにいるのです。たまたま関税問題に端を発した朝令暮改のトランプ氏発言に世の中が振り回されていることで利上げ判断を保留するかもしれませんが、企業業績は好調を維持しているのは事実です。

ということは政治家の祭りは餅撒き的発想であり、我が党の餅が一番うまいぞ、という票獲得以外の何物でもないのです。これじゃ国を挙げて政党が国民に賄賂を出すのと何が違うのか、という話です。現金給付で一人2-3万円もらってしまえばそれで皆さんは買収されたも同然とも言えないでしょうか?

外から見ると実に冷ややかな目でしか見られないのですが、報道を含め、異常だと思っています。これぞ本当の国難であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年4月15日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

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