高市早苗氏のツイートが話題を呼んでいる。長期金利が上がっており、減税や給付金で財政赤字を増やしたら、2022年の「トラス・ショック」のような金融危機が起こるおそれがあるという森山幹事長の心配に対して、彼女は次のように答えた。
森山幹事長のご発言として報道された記事によると、「森山氏は鹿児島市内での講演で2022年にイギリスで起きた“トラス・ショック”で政権が短命に終わった例を出した上で、財源の裏付けのない減税政策は国際的な信任を失うと述べ、減税論に釘を刺しました」…との事。…
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) April 13, 2025
Q. この「国際経常収支」をめぐる奇妙な話をファクトチェックして。
GPT: この投稿にある「財政赤字を国際経常収支とネットする」という主張は、いくつかの誤解を含む可能性があるため、以下で丁寧にファクトチェックと経済学的整理を行います。
✅ 結論(要約):
「日本は経常収支が黒字だから財政赤字を心配する必要はない」との主張は、経済学的に正しくない。財政赤字と経常収支は直接ネット(相殺)できる性質のものではなく、三面等価や国民経済計算上の恒等式に基づいた別の関係で説明されるべきです。
経済の恒等式による整理
家計・企業・政府・海外の「四部門のバランス」恒等式
マクロ経済には次の恒等式があります:
(民間部門の貯蓄 - 投資)+(政府の収支)+(海外部門の収支)= 0
あるいは:
民間黒字(S - I) = 政府赤字(G - T)+経常収支(CA)
S
= 貯蓄I
= 投資G - T
= 政府の支出超過(財政赤字)CA
= 経常収支(貿易黒字+第一次所得収支など)
つまり:
- 政府が財政赤字(G > T)の場合、どこかがその分資金を余らせている必要があります(たとえば家計が貯蓄を増やす、経常収支が黒字など)。
- しかし、これはあくまで恒等式であり、因果関係ではない。
高市氏の主張と問題点
「日本の経常収支が黒字だから、財政赤字があっても問題ない(=トラス・ショックのようなことは起きない)」という論理には、以下のような誤認識が見られます。
① 経常収支と財政赤字は直接「ネット」できない
- 経常収支が黒字でも、政府の債務が持続不可能になるリスクは別途存在します。
- 例:日本は長年経常黒字ですが、債務残高はGDP比で世界最悪水準。
② 経常黒字 ≠ 信認の保証
- トラス・ショックで問題になったのは、「財源の裏付けのない減税+金融引き締め環境での市場の懸念」。
- 日本も将来、金利上昇や信用不安があれば同様のことが起こり得ます。
③ 経常黒字でも通貨急落はあり得る
- 経常黒字だからと言って通貨防衛が保証されているわけではない(例:1997年の韓国危機、通貨防衛失敗)
参考:経常収支が黒字でも財政破綻が懸念された事例
国名 | 経常収支 | 財政状況 | 備考 |
---|---|---|---|
日本(現在) | 黒字 | 債務高水準、超低金利に依存 | 金利上昇でリスク増大 |
イタリア(2010年代) | 経常黒字 | 高債務 | 国債利回り急騰経験あり |
ギリシャ(2008以前) | 経常赤字 | 高債務 | 信認失い債務危機へ |
総合評価:
主張 | 評価 | コメント |
---|---|---|
経常黒字だからトラス・ショックは起きない | ❌ 誤解を招く | 経常収支は関係するが、それだけでは信用や市場反応を判断できない |
財政赤字を資産や経常収支と「ネット」で見れば問題ない | ❌ 単純化しすぎ | 財政の持続可能性には金利、成長率、歳入歳出構造など多くの要素が関与 |
減税による税収増(ラッファーカーブ的主張) | △ 議論の余地あり | 状況による。必ずしも税収増とは限らない(過去日本では増収効果薄い) |
Q. 日本で「トラス・ショック」が起こる可能性はありますか?
はい、「日本でトラス・ショックのような現象が起こる可能性はあるか」という問いに対しては、以下のように整理できます:
✅ 結論(要約):
短期的には起きにくいが、中長期的には起こり得る。
理由は、日本の財政は表面上持ちこたえているものの、低金利依存・高債務体質であるため、金利急騰や信用不安が起きれば類似のショックは十分にあり得る。
トラス・ショックとは何だったのか?
- 2022年、イギリスのトラス政権が発足直後に減税と財政支出の大幅拡大を打ち出した。
- 財源の裏付けが乏しく、かつイングランド銀行がインフレ抑制のため金融引き締め中だったため、市場が恐怖。
- 結果:
- 英ポンドが急落
- 英国債が暴落(金利急騰)
- 年金基金などの運用機関がパニック売り
- 政権がわずか44日で崩壊
日本との比較:共通点と相違点
項目 | 日本 | トラス政権(英) | コメント |
---|---|---|---|
政府債務水準 | 非常に高い(GDP比260%超) | 高いが日本よりは低い | 財政リスクはむしろ日本が大きい |
中銀の姿勢 | 長期的に低金利政策(YCC)を維持 | 金融引き締め中(インフレ対応) | 日本はまだ「安心感」あり |
通貨の信用 | 円は経常黒字国通貨・安全資産扱い | ポンドは投機的に売られやすい | 一時的な円安はあるが、パニック売りは少ない |
金融市場の反応性 | 相対的に粘着性が高い | すぐに反応し暴落 | 日本市場は政治リスクにやや鈍感 |
⚠ 起こるとしたらどんな条件か?
以下のような条件が重なった場合、日本でも「トラス・ショック的」事態はあり得ます:
- 減税や給付金などで巨額の赤字国債発行
→ 投資家の需給不安と「日銀の買わない国債」増加 - 国際的な信用低下(例:円の売り加速、格下げなど)
- 年金・保険・地銀などの金融機関が国債リスクに巻き込まれる
→ 連鎖的売り(ロスカット連鎖)
現状の「防波堤」
- 日本は現時点で:
- 国債の90%以上を国内投資家が保有
- 経常収支黒字(=外貨準備余裕)
- 日銀が国債市場の最後の買い手(準財政ファイナンス状態)
したがって、すぐに暴落には至らない構造ですが、それは「構造的な脆弱性を覆い隠している」だけともいえます。
総括
判断 | 内容 |
---|---|
起きる可能性 | 中長期的には十分ある(特に利上げ局面や信用失墜時) |
現時点のリスク | 低金利政策と国内消化体制により抑え込まれている |
重要な教訓 | トラス・ショックは「市場は国家財政の整合性を見ている」という警告 |
石破首相の退陣は遠くないが、その後任として高市氏は有力である。しかし彼女がこんなお粗末な経済知識で減税や給付金をばらまいたら、日本でもトラス・ショックが起こるだろう。