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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『資格起業バイブル』から、再構成してお届けします。
誰もが「誠実に対応しよう」と考えている
Q:普段の態度について、どのようなことに気をつければ仕事が来るのでしょうか?
法律という重要な仕事を扱う士業は、普段から厳格な行動をしたほうがよいと考えています。それは、仕事は信用が第一だからです。ただ一方で、「性格は面白いほうが仕事が取れる」と聞いたこともあります。士業はどのような対応をすれば仕事がくるのでしょうか?
法律職はイメージの非常に強い職業です。清潔にクリーニングされたスーツ、首もとまで締め上げられたネクタイ、手元には万年筆と分厚い六法全書。こういったイメージを持っている人は比較的多いのではないかと思います。しかしながら、実際のところはどうかというと一般的なビジネスパーソンと外見的な変わりはなく、現実的な士業の世界もこれに近いといえるのです。
最近でこそ、ノーネクタイの弁護士や私服の税理士など多種多様な士業が増えてきましたが、まだまだ多数派としては固いイメージのままの世界だといえます。
もっとも、これらの固いイメージが決して悪いということはなく、法律は間違えが許されない世界ですから、厳格に仕事を執り行うことは重要です。
しかし、問題なのは厳格な世界にいることによって、性格まで影響されてしまうことが多々あるということなのです。言い換えれば、「真面目な雰囲気」に呑まれ、多くの士業が「控えめで、普段は大人しい対応であるべき」と無意識に考えてしまっているのです。
多くの士業のホームページを検索してみてください。そのサイトにもっとも多く見られるが「誠実な対応をします」というものです。誠実な対応はもっともなのですが、大多数が士業とは大人しく誠実な対応をするべきだと考えています。つまり、お客様から見れば、どの士業もまったく同じような人に見えてしまうのです。
経営者は、「面白い士業」を求めている
では、お客様から選ばれる士業になるためには、いったいどのような対応や見せ方をすればよいのでしょうか。ここでは顧客視点で考えてみましょう。
あなたが税理士を探していたとします。多くの税理士の売りが「誠実な対応」や「迅速な手続き」です。あとの差は報酬くらいしかありません。その中で、積極的にマーケティングに取り組んでいる税理士がいる。そんな税理士がいたら、「この税理士のほうが面白そう」と感じませんか? つまり、お客様は「どうせ士業に仕事を頼むなら、面白い人(興味深い人)を選びたい」と考えているのです。
実際に、私が取り続けてきた会社の設立手続きというのも、極端な言い方をすれば誰がやっても大きな差が出にくい仕事だといえます。私が会社をつくったからといって、売上が伸びる保証などどこにもなく、せいぜい間違いなく会社を設立した、という結果があるに過ぎません。そうなれば、「頼んでその後得をする人」に依頼したいと考えるわけです。
私の場合は、「インターネットマーケティングに強い」という2003年ではまだまだ珍しいタイプの行政書士だったため、多くの人が「どうせ会社をつくるのだったら、今後もビジネス的にお付き合いできる人がよい」ということでたくさんのお客様に支持されてきました。
このようにお客様にとっては、「誠実な対応」ができるのはわざわざアピールすることもないくらい当たり前のことで、それ以上に面白い人を求めているのです。つまり、ただ普段の対応を誠実にしているだけでは、「普通」なのです。仕事をもっと取りたいと考えれば、それ以上に自分自身のバージョンアップをする必要があります。
あなたなら、どちらの士業に依頼しますか?
「つまり、ただ普通に士業をするだけではなく、ビジネスに積極的な姿勢があるということが重要なのでしょうか?」という問いに対しては、そのとおりであるといえます。例に挙げた税理士でも行政書士でも弁護士でも、経営者を相手にする仕事であればビジネスに積極的であることは有利な条件です。今日からでも遅くはないので、ぜひビジネスを学び積極的な姿勢を身につけてください。
ところで、まだまだビジネスに積極的になれるほど知識も経験もない場合はいったいどのようにしたらよいのでしょうか。その場合はとにかくお客様を楽しませ、喜ばせてください。普段のコミュニケーション、ブログ、ツイッターなどのソーシャルメディアでの情報発信やお客様の飲み会に参加して歌って踊ってもよいでしょう。
「そんなことで仕事が取れるのですか?」と思われるかもしれませんが、経営者から見れば士業はユーモアセンスのない人たちの集まりと思われています。誤解を恐れずにいえば、士業は「つまらない」と思われているのです。
もしそこで、あたかもタレントや芸人のように人を楽しませてくれる士業がいたらどうでしょうか。もちろんこういうものは個人差がありますので絶対はありません。
しかしながら、全国的に見ればユーモアがある人、言い換えれば宴会芸を「私が先陣切らせていただきます」といえる人のほうが「面白い」といわれ、仕事が集まっているのです。必ず踊りなさいといっているわけではありません。ビジネス的な協力ができないのであれば、少なくとも誰かにとって「面白い人」になる必要があるとお伝えしたいだけです。
私自身、開業して約20年ほどですが、最近はファッションに気をつかう人やユーモアにあふれる人は増えてきたと感じています。今はこうしたちょっとした「面白い性格」でも、ほかの大多数はつまらない士業だと思われていますので、比較的士業の中では注目を集めやすい存在になっています。
いつまでも全体が真面目な業界のままで有り続けるかどうかはわかりません。もし、あなたがビジネス的に貢献できることが少ないと感じていたら、ぜひまずは性格から変えてみるのはいかがでしょうか。経営者は常に面白い士業を求めているのです。
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年1月30日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。