S&P 500は最悪の水準から反発

S&P 500は「1日で2%以上動いた時は~」どころでない鉄火場の一週間となった。週末では特段ヘッドラインがなかったにもかかわらず、先週の記事を書いていた時点では指数は時間外で大幅に下落しており、約1年ぶりに4000台で寄り付くことになった。それでも構わず先週の記事ではブル目線とした。

月曜4/7は安寄りの後、「トランプ政権が関税発動に90日間の猶予を検討している」とのヘッドラインが流れ、指数は一時暴騰した。もっともすぐにホワイトハウスに否定され指数も反落するのだが、第二次トランプ政権としては珍しくこのリークは恐らく本物の検討を正しく反映していたと言える。

火曜4/8は米国の中国に対する104%までの報復関税もあって派手な寄り天となり、水曜4/9の寄り付き前に中国政府が84%までの報復関税を発表したが時間外の反応は鈍く、水曜4/9の場中にトランプ政権が中国以外への関税の90日猶予を発表したことで指数は暴騰した。イントラデーで暴騰するとレバレッジETF等が引け近辺に順張りでエクスポージャーの追加を行うことが分かっており水曜4/9は引けピンとなったが、引けた途端に流れはまた変わる。

木曜4/10は恐らく逃げ遅れた投資家の売りで終日押され気味とまり、前日の上げと比べたら小さく見えるものの大幅に反落した。金曜4/11の時間外に再び中国政府が125%までの報復関税を発表したが、「それ以上付き合わない」と追記したこともあって再び時間外の反応は鈍く、金曜はミシガン何とかを乗り越えて堅調に週を終えることになる。

先週の記事ではニュースの陰極は既に通過しつつあるとして、テクニカル分析を諦め「ここまでの調整における傷が浅く、また過剰なレバレッジで首の皮一枚になっていない限り、下値を叩く必要性をもはや感じない」としていた。

結果的に米中の関税引き上げレースが続いたことで「ニュースの陰極」は先週半ばまでずれ込んだが、それでも前向きな目線で何ら問題なかったのである。結局、S&P 500は週間で2023年以来の上昇幅を記録した

とはいえ気楽に取り組めるような上げではなく、S&P 500の日中値幅は月曜8.51%、火曜7.27%、水曜10.77%と2008年秋のGFC以来で最大の値動きの連続となった。

GS CTAは既に十分ポジションを落としているものの、長期スレッショルドまでぶち抜いておりGSは4月中旬まで緩やかな売り増しが続くと推定する。もっともこれは1週間前までのデータに基づいており、先週指数が切り返したと言えば切り返しているので、上昇トレンドに復帰することでCTAにはそのうち買い方向に向かわせることもできるだろう。

一方、1日2%どころではない値動きが続いているので、Volコントロール型の買戻しは遠い。もっとも先週に限って言うと大幅に動いた翌日の引け前に目立った売りも見られていないので、既に大半のポジションを振り落とされている可能性もある。

BofAのCTAは深いショートからの買い戻しを示唆する。

極めて久しぶりに、BofAがリスクパリティのポジショニングを推定したものが流れてきた。株式は年末から落とされているが、直近でボラティリティが上がった債券をぶん投げているのが興味深い。国債が安全資産でなくなったということか。MOVEの高止まりはVIXの急速な低下を阻害する。

DBの統合ポジショニングも15%パーセンタイルまで縮小している。

久々のBofAのディーラー・ガンマプロファイルは5500近辺でゼロになるまでネガティブガンマ域が続く。5500に取り付いてポジティブガンマ域に潜り込めればじり高に移行できるし、できなくても木曜のOp Exでネガティブガンマは解消されやすいだろう。金曜はグッドフライデーである。

GSプライムブローカーの顧客は近年見られない水準までショートを傾けた。

BofAは海外投資家からの米国売りを指摘する。

一方、個人投資家は2、3月の買い越しに続いて4/9の上げも追いかけている。

ナスダック3倍ETFのTQQQにも大きな資金流入が見られた

フォワードEPSコンセンサスはまだロールアップしており、それに対して一直線に下落した指数は割安感を出している。問題は関税でどこまでEPSが低下するかである。

NAAIMは早速跳ねている。これが中途半端な水準に位置していること限り、本格的な上昇局面はまだ望めない。

決算期は徐々に本格化している。

テクニカルは少し手掛かりが増えてきた。金曜は日足下ヒゲ陽線となり5200が日足サポートとなる。上では週足レジスタンスが5700に刺さっている。更に日足ベースでも3月から始まった下落局面でラリーの頭を2回抑えた25SMAが5530近辺まで降りてくる。

関税の掛かり方をチャートに投影すると、10%一律関税 +国別「相互」関税 +中国との貿易戦争を前提にしたフェーズは5100より下、ローズガーデン直前の値動きからただの10%一律なら5700近辺、という整理になる。

90日間の猶予を楽観寄りに考えて実質的な撤廃と考えるとしてもその間、中国に対する関税率がチキンレースを経て引き上がったため、5700はかなり遠い。この手のファンダメンタルズからの予想をいい方向に裏切ってくれるきっかけを与えてくれるのは激しい金利低下だが、今のところむしろ逆の展開になっている。ただ電子デバイスの対中国関税からの除外が週末に流れたりと、ニュースフローはどちらかというとポジティブ寄りではある(ニュースの陰極は通り過ぎた)。

日足ベースでは5200 -5530レンジをまず意識することになるか。5200を下にブレイクした場合は一旦仕切り直しとなる。5530を超えて来るとポジティブガンマ域にも入ってくるため、ヘッドラインの飛び方にかかわらずかなり安定感が戻ってくるだろう。


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年4月14日の記事を転載させていただきました。

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