中居さんの一件から経営姿勢問題に至り、コマーシャルのスポンサーが一気に見送り姿勢となる中、株価だけが急騰してるのがフジメディアホールディングス。アメリカのアクティビスト、ダルトン インベストメントが経営問題に関して様々な書簡を送りつけ、最近では「現在の経営陣は日枝氏の影響力が残る残留組だ」とし、総入れ替えを主張しました。

フジテレビジョンHPより
その上でダルトンが示した12名の新役員候補はトップにSBIの北尾吉孝会長兼社長を据え、メディア関係者を含むなかなかの人選ですが、方向性がまとまるかどうかはよくわかりません。
2005年ごろ、堀江貴文氏がフジテレビの当時の親会社のニッポン放送の買収を企てた際、北尾氏は買収阻止側に回って暗躍しました。それは北尾氏にとって日枝体制を温存させ、現在に至る社風を残す一因を作ったわけで今回の新役員候補の要請には悩んだとされます。
一方、村上ファンドの創業者、村上世彰氏も当時、フジテレビとニッポン放送のねじれた親子関係を修復すべく暗躍します。2004年11月頃に堀江氏のニッポン放送株大量買い付けの動きを事前察知して村上ファンドは同株の株価の値上がり期待し株を買い付けました。後日インサイダー取引となり、有罪判決となった経緯があります。当時、村上氏はフジに対し、共同持ち株会社を設立し、その下にフジテレビとニッポン放送をぶら下げる案を出すも失敗に終わっています。
今回、村上氏の長女、野村絢氏がフジの大株主に現れ、4月3日現在では野村氏の関連会社保有分も含め、同社の筆頭株主に躍り出ています。
一方、フジテレビ因縁の関係といえば堀江氏そのものでありますが、ご本人は既にフジメディアホールディングスの株式を取得して、株主総会に乗り込むと意気揚々であります。つまり、20年前のあの同窓生が皆集まるようなものであります。今年の数ある株主総会の中でも最大級の注目を浴びることは間違いないでしょう。
お前はどう考えているのか、と聞かれるとそもそもメディアの在り方が大変貌を遂げる中、フジが一つなくなっても何一つ困らないと申し上げたその気持ちは今でも変わりません。ただし、社会的意義ではなく、エンタメ会社として、日本全国に無料の地上波放送を通じて影響力を持つという意味ならば商売価値は当然あるわけです。
北米はテレビ放送は有償という大前提があります。ケーブルとかサテライトテレビと称するものですが、無数の放送局がある代わりに一つひとつの局の専門性が高く、自分の好きなジャンルのチャンネルを見るという仕組みです。当然ながらこの仕組みではアメリカやカナダの全土ベースとしてはなかなか大ヒット番組が出せず、結局、国民全体で盛り上がるのはスポーツとか音楽番組が主流となります。日本のような「芸能」というジャンルは育ちにくいとも言えるのです。
日本は安いギャラのお笑い芸人から高いギャラのベテランに至るまで「芸能人」と称する方々が驚きのアクションや華麗な動きをしたりして茶の間の話題になります。広末涼子のようにテレビに出たい一心で芸能界に入る人が多いということです。しかも無料でそれらの番組を楽しむことができるのは日本のメディア力がいかにパワフルかを表しているとも言えるでしょう。また全国区の民放は数社しかないわけで経営努力次第ではかなり収益性が高まることもあり得るでしょう。
その中で現在のフジテレビの経営陣は、これも以前申し上げましたが、日枝体制が長く続いたことで社内にしっかりした判断力と行動力を持つ人材が不足している可能性は高いとみています。(鈴木体制がなくなった後のセブン&アイが混迷したのと同じ構図です。)つまり日枝氏のメディア世界観が社内に教義のように蔓延しており、「フジ=メディア」というフレキシビリティのない発想にとらわれている可能性が高いとみています。
よって経営刷新による期待感は出てくると思います。また、ダルトンは不動産の切り離しを主張しているようですがそれは正しいと思います。企業が本業以外に不動産で稼いでいるケースでは本業が伸びないことは往々にしておきます。サッポロビールにしても朝日新聞にしても同様なのですが、なぜダメかといえば「本業がだめでも不動産があるさ」という安心感で経営にシャープさが無くなってしまうのだと思います。
フジの現経営陣とアクティビストの戦いになるわけですが、現時点で単純計算するとダルトンと関連グループで7.2%、北尾氏のSBI傘下のレオスキャピタルが5.1%、村上氏のグループが11.8%で村上氏がダルトン氏と歩調を合わせるとしても24.1%にしかなりません。ただし、各グループとも買い増しする可能性はあるし、彼らに協力してくれる人も多い気がします。また個人株主は株価上昇を期待するので経営刷新に賭ける手はあるでしょう。
蓋を開けてみないと何とも言えませんが、現経営陣がそのまま残ることは現状難しい気がします。むしろ、日本のメディアの構造は地方の放送局との提携関係を含め、どうなのかなぁという気がしています。フジが変われば業界地図が大きく変わることもあり得るでしょう。私はそういう意味での期待感は持っています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年4月17日の記事より転載させていただきました。