インフレで得する人、損する人

黒坂岳央です。

最近のニュースでも耳にすることが増えてきた物価が上昇する「インフレ」。

ニュースやSNSではまるで「これから地獄になる」と言わんばかりの危機煽りばかりだが、インフレは平等にすべての人に悪ではない。そうではなく、インフレで得をする人、損をする人に明確に分かれる。

我が国は過去30年間、ずっとデフレ経済が続いていたので気持ちを180度転換して、思考や行動、人生戦略を練り直すときが来ているだろう。

claffra/iStock

インフレで得をする人

インフレで得をする人はどんな人だろうか?

まず、株式や金、不動産といったインフレに強い資産を持っている人である。インフレが進むことで所有する資産が上昇するというシンプルな理由である。

そして次に高額所得者やビジネスオーナーだ。付加価値の高い仕事をしている人ほど、物価上昇以上に賃金上昇の恩恵を受けるので、人によっては実質所得が増える。

よしんば、勤務先がそうでなくてもハイスキルワーカーなら転職が容易なので、高待遇の会社や石油やエネルギー業界など、インフレに強い産業へ移動するリスクヘッジが可能だ。

また、企業経営者は、インフレによる価格転嫁できるのでもちろん、すべての業界がそうとは言えないが比較的強い立場にあるといえる。

最後に固定金利のローンを抱える人だ。インフレすると借金の「実質的な価値」が目減りする。固定金利で借りている場合、返済額はそのままでも、お金の価値が下がることで実質的に“得”になるのだ。

つまり、これからは住宅ローン、iPhoneなどの高額スマホ、奨学金などは現金一括払いではなく、できる限り長期ローン返済でゆっくり返していく方がお得なのだ。

インフレ時に損をする人

ではインフレで損をするのはどんな人なのか?一言でいうと、インフレで得をする真逆の行動ということだが、厳密に取り上げていきたい。

最も損をするのは現金しか持っていない人だ。インフレが現金の価値が減少していく事象なので、ただ現金を持っているだけではドンドン資産価値が目減りしていく。

そして年金受給者や無職である。インフレで年金支給額の調整はあるものの、激しいインフレには対応できず、実質的な生活水準が下がってしまう。

また、無職で収入がない状態で物価が上がると、支出だけが増えて生活は厳しくなる。数年前、世界中で流行ったFIREブームも今後はわからない。確かに彼らは株式という資産を持ってリタイヤするのだが、インフレ経済化で株が長期低迷すればFIRE生活の継続は難しくなるだろう。

努力が報われやすくなった

インフレに対してひたすら否定的な見方をする人が多いが、筆者はそうは思わない。

企業は付加価値を高めて収益率を高める努力が報われる。

ビジネスマンもスキルに投資し、稼ぎを増やしてインフレ連動資産を買い続ける。

こうした努力は、むしろデフレ経済下より報われやすくなったと言えるはずだ。デフレ経済ではお金を使わず、貯金が一番報われる社会であったため、節約が最適解、買い物は最小限にして値下げを待つのが一番良かった。

だが、これからは違う。積極的に努力して力をつけ、インフレに対抗することが最適解になる。もちろん、これは痛みを伴うが成長という観点で見た場合はデフレより良いという視点もあり得ると思っている。

インフレでは努力して稼ぎを増やし続けなければ、待ちの姿勢では圧倒的に不利になる。だが「働いたら負け」という諦め的な空気よりよほど健全だろう。

日本のみならず、すでに世界規模でインフレしており、さらに人口減少でその勢いに拍車がかかっている。時代は変わったのだと環境認識をして、来る新しい時代に備える必要があるだろう。

デフレからインフレに切り替わることで、できるなら仕事を変え、資産配分を変え、欲しいものは早く買ってしまった方が合理的になった。生き方を180度転換するのはなかなか難しいことではあるが、変化に対応できるものが強者である。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。