
gremlin/iStock
黒坂岳央です。
ネット上を騒がせているChatGPT o3。実際に触ってみると、4oとはまったく異質な印象を受けるモデルだ。
たとえば、外食時の写真を投稿すると場所を特定したり、効果音を作れたり、プロが作成したような画像を生成したり、高度なプログラムを即興で書いたりする。
明らかに、o3はこれまでのモデルの壁を一つ超えてきた。映像や音声の生成以前に、情報の「圧縮率」がとにかく異常に高い。脳内で情報を展開しきれないと、「回答の意味がよくわからない」となってしまうほどだ。
そんなo3に「頭のいい人とは何か?」と抽象度の高い、やや哲学的な問いを投げかけたところ、「頭が良いと感じさせる回答」が返ってきた。
実際出てきたものはこちら。
情報処理:膨大な情報の中から本質を素早く抽出し、 最小限の言葉で要点を整理できる(高い圧縮力)「短く話しても要が分かる」
いわゆる「高い圧縮力」だ。
これは逆のケースを考えればわかりやすい。仕事ができる人は言葉が短く、難しい話を「要するにこういうことですね」と、スパッと伝えてくる。周囲もスムーズに理解できる。
一方で、仕事がうまくいかない人ほど、難しい話や専門用語をそのまま垂れ流し、説明が長くて伝わらない。その結果、「この部分、再確認させてもらってもいいでしょうか?」というような余計な確認作業が発生し、時間がムダに消えていく。
ビジネスにおける敗北とは、リソースをムダにすることだ。それはお金だけでなく時間も含まれる。時間という貴重な経営資源を節約できる人は、確かに“賢い人”といえるだろう。
推論・構造化:事実・原因・結果を多層構造で整理し、 未知の課題に汎用フレームワークを当てはめて解く「未知でも筋道が立つ」
筆者が過去に見た“頭のいいビジネスマン”の例では、原因不明のトラブルに直面したとき、周囲が混乱する中で冷静に原因を整理し、可能性を一つずつ潰しながら論理的に解決に導いた。
教わっていない分野でも、「知らないから無理」とは言わず、とりあえずやってみて得られたデータを分析し、行動を変えながら解決に向かっていく。こうした姿勢こそ“未知に筋道を立てられる力”だ。
メタ認知:自分の思考や感情のクセを客観視し、 必要に応じて戦略や視座を切り替えられる「自分を俯瞰できる」
メタ認知の欠如は、日常的に非常によく見られる事象である。
この力が欠けている場面は日常に溢れている。
- 求職者がスキル不足を棚に上げ、「この年収しか提示されないとは…」と不満を漏らす
- 婚活で自分と釣り合わないスペックの相手ばかりにアプローチして撃沈を繰り返す
- SNSで他人を批判しながら、自分も同じことをしている
人間は基本的に主観の生き物で、他人のことは見えても自分のことは見えにくい。
仕事や勉強でもうまくいかない人の典型は「自分がやりたいことはやるけど、必要なことや求められていることはやらない」という思考だ。
「頑張ってるのに成果が出ない」「認められない」と悩む人は、往々にしてメタ認知が不足していて、独りよがりな努力をしてしまっている。
学習適応:失敗やフィードバックを歓迎し、 学習速度を上げるために行動を即座に微調整する「毎サイクルで賢くなる」
筆者はこれまで、家族経営の零細企業から、東大卒が多数在籍する東証プライム上場企業まで、さまざまな人たちと働いてきた。
その中で、仕事ができる人ほど「失敗を失敗と思っていない」という共通点がある。逆に、うまくいかない人は失敗するたびに自分を責めて、悪態をつき、モチベーションを失っていた。
賢い人は1つの失敗から10を学ぶ力がある。それゆえに失敗しても自己肯定感を削らず、「ここから何を学べるか?どんな分析ができるか?」と前向きに行動し、毎日アップデートしていく。その積み重ねが、知的な洗練を生むのだ。
水平思考:異分野の概念同士を横断的に結びつけ、 常識外の選択肢を生み出せる「ずらして見る発想力」
たとえば、テーマパークの行列対策を考える場合、「入場制限をして混雑を減らす」というのはよくある話だが、発想を変えれば、「待ってる間にパレードやショーを展開することで、そもそも待ち時間を苦痛な時間から楽しい時間に変えてしまう」という視点もある。
常識を外したアイデアを出せるかどうか。それが頭の良さの本質の一つでもある。
コミュニケーション:相手の前提・語彙・関心を素早く察知し、 思考の最短経路で対話を進める「伝わる最適ルートを選ぶ」
ビジネスの現場では、「いかに経営資源を節約し、最小コストで最大伝達ができるか?」が重要だ。
優秀な人ほど、短い時間で多くの情報を的確に伝える。逆に、非効率なコミュニケーションをする人は、だらだらと長時間会議を開いては参加者の時間を奪い、結局何も成果が残らないことが多い。
倫理・利他性:知識や影響力を、長期的な他者・社会の 便益と整合する形で行使する「賢さを良い方向に使う」
近年、言葉巧みに人を騙す詐欺が蔓延している。皮肉な話だが、詐欺師のほうが凡人よりもはるかにコミュニケーション力があり、有能に見えることもある。きれいなスーツ姿に身を包み、相手から信用を勝ち取る術を熟知しているのだ。つまり、頭の良さが悪い方向に使われているのだ。
一方で、本当に賢い人の中には、高収入が見込める民間企業をあえて選ばず、国家や社会の発展に貢献すべく、公務の道を選ぶ人もいる。そうした“利他的な知性”は、まさに尊敬に値する。
◇
ここまでざっと俯瞰してきたが、AIが導き出した「賢い人の条件」は、どれも「確かにそうだ」と感じさせられるものばかりだ。
世間では、賢い人=高学歴・高収入・大企業というイメージが強いが、それはあくまで結果論に過ぎない。まず“賢さ”が先にあって、その知性を活かして合理的な選択を積み重ねた結果として、進学や就職、キャリア形成に成功しているのだ。
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