冒涜をしてきたのは誰だったのか
豊島鉄博「還らない命・幸せ無限大」を冒涜として通報
殺害された小尻知博記者を冒涜するリプライ。あまりにも看過できないので、X社へ通報しました。@liberalist2023 pic.twitter.com/1rRCHF7fDM
— 豊島鉄博 (@tetsuhiro0723) May 3, 2025
沖縄タイムス記者で朝日新聞に出向していた経験のある豊島鉄博氏が「還らない命・幸せ無限大」と書かれたX上の投稿を冒涜として通報しました。
朝日新聞阪神支局を襲撃した赤報隊事件に関する朝日新聞記事のシェアに対して返信欄につけられた投稿ですが、この文言は朝日新聞川柳で採用・掲載された川柳でした。
やはり、そういう風に読めてしまいますよね()
安倍総理銃殺事件に関して死者を冒涜した朝日川柳での一句
「還らない命・幸せ無限大」というのは、豊島記者が朝日新聞に出向していた期間の2022年7月15日の朝日川柳で掲載された、民間人作成、西木空人(栗田亘)選の句です。
これは「還らなくなった命と幸せは無限大で、失ったものは大きい」という、悲しむ句でした。
しかし、「命が還らないということを受け、その出来事は幸せが無限大だ」或いは「命は還らないが、今の幸せは無限大だ」という読み方も出来てしまうものでした。
文脈上もその要素が強調される配置でした。
なぜなら、朝日新聞の場合、日頃から故安倍元総理に対して非合理的な批判を繰り返し、記者会見等の現場でも不合理な要求や理不尽な態度で記者が質問等をして嫌がらせの常習犯だった上に、当該句と同じ欄で安倍政権に対する否定的評価の川柳を掲載しているからです。
だからこそ悪意が込められてるとしか読めなかった。
それを安倍総理銃殺事件に関する句と並べ、だが原発訴訟に関して選んだとするやり口の汚さ(他の句の酷さも相俟って)に憤った者は多かったです。
が、今回の豊島氏の投稿に付けられた投稿には、そのような文脈が全く無い。
にもかかわらず、豊島記者が「殺害された小尻知博記者を冒涜するリプライ」と理解したというのは、朝日新聞の川柳欄の記載は、やはり「そういう意味」と解する余地が非常に大きいということでしょう。
なお、川柳を詠んだ人は私人です(素性は知らないが、一応そういう事になる)。
その人が詠んだ意図とは異なる趣旨に読めてしまう文脈にブチ込んで「掻き乱そうと」するやり口は、一般的にみて当人に対しても失礼でしょう(本人の本心は知りませんが)
そういう悪性もある事案であると言えます。
株主が東電の損害を幹部に請求し賠償額13兆円が地裁で認められた訴訟
さらに言えば、元の句も実際の出来事と内容がズレています。
この訴訟は*1、原告である株主から「東電が被った損害」について取締役の任務懈怠を理由に賠償請求したのであって、事故関連で亡くなられた方々が損害賠償を請求したのではないんですよ。
※損害の中身は廃炉・汚染水対策費用、被災者に対する損害賠償費用及び除染・中間貯蔵対策費用。高裁判決が今年6月に予定されている。
だから、この訴訟の話では、亡くなられた方々やその遺族に仮託して論じる素地が無いため、「原発事故関連で死者が出た」こととは一切関係が無い。*2
そういうヘンテコな句であると言わざるを得ません。
文脈とは無関係でも、原発事故の影響を過大に評価した風評加害の内容
そして、原発事故関連の死者は、民主党菅直人政権による避難強制によるものが主な原因・遠因なのに、東電に帰責させているのは別の誤解を生み出していると言えます。
還らない命が無限大に等しいほど多い、という意味が妥当するのは、東日本大震災での津波による死者・行方不明者の被害です。原発事故に関して言うのは、実態と乖離しています。
放射性物質を大量に浴びた結果の死者や健康被害というものはただの一人も生じていません。それを「還らない命…が無限大」というのは、原発事故の被害を不必要に過大に喧伝しており、風評加害の内容にすらなっていると思います。
しかも、「賠償額が13兆円」ということからも「幸せ無限大」と読めてしまう余地が大きい話でした。訴訟で争われた内容が「命」とは無関係な事柄だからです。
なお、「・」=ナカテンは並列の意味というのが文化庁の説明*3でも見られますが、そのような意味であるということは学校教育では決して習わないし、全国民における一般的な知識と言えるか微妙なところでしょう。
仮にそうだとしても、川柳ならば5・7・5や7・7の配置になるはずなので…
「還らない 命・幸せ 無限大」
とする方法もあるにもかかわらず、わざわざ
「還らない命・幸せ無限大」と繋げているのは、元の投稿された句がそうだったからなのか?それとも編集したからなのでしょうか?
他にも、「高裁も 最高裁 もなかりせば」という句があり、「高裁も 最高裁も なかりせば」とするのが日本語の意味のまとまりとして自然と思われますが、こうした構成になっているのは元の句がそうだからなんでしょうか?
それとも、川柳の決まりなんでしょうか?川柳の決まりだとしても、読者は一般人なわけで、一般的な国語の読み方を標準として意味内容が評価されることになるため、不用意な意味を持たせるものになる場合は注意するのが当たり前でしょう。
このような意味で、朝日新聞の川柳に掲載された句には様々な問題があるということが、改めて明らかになりました。
*1:東京地方裁判所 令和4年7月13日 判決 平成24年(ワ)第6274号 損害賠償請求事件、同第20524号、同第30356号、平成25年(ワ)第29835号
*2:東電が被った損害に、事故関連死によって企業のレピュテーション低下が発生し、株価が下落した等の観点からは関係があるかもしれないが、当該判決では損害賠償額の算定に際してそのような認定はしていない。
*3:新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)
編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2025年5月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。