備蓄米放出でも米価下がらず:価格を維持したい農水省とJAの思惑通りの展開に

コメの価格上昇が続いており、4月中旬には全国のスーパーでの5キロあたりの平均価格が4220円に達し、16週連続で値上がりしました。政府は価格抑制のために備蓄米を放出しましたが、効果はほとんど見られていません。

背景には2023年産米の不作と精米歩留まりの減少に加え、訪日客の増加や災害への備えなどによる需要増が重なり、需給バランスが崩れたことや、精米処理能力の限界や輸送・包装資材の不足、さらには農水省への報告義務といった事務負担が、備蓄米の流通の遅れをさらに悪化させているといわれていますが、それらは根本的な原因ではありません。

このような状況下で、コメの店頭価格は当面高止まりすると見られています。

どれだけ消費者を困窮させても国消国産にこだわりたいJA

そもそも農水省はコメの供給不足への明確な対策を持っていません。

政府は備蓄米の入札を繰り返し実施しており、価格にはある程度の下落傾向が見られましたが、それでも十分とは言えません。長年の減反政策によって生産量は1970年代の半分以下に減少しており、維持のために年間数千億円の補助金が投入されている状態です。こうした補助金に依存した生産体制は持続可能ではなく、今後10年で累計数兆円の財政負担が見込まれています。

また、JA農協は「国産重視」「輸入反対」を掲げつつ、実際には輸入穀物を使って利益を上げており、主張と実態に矛盾があります。この結果、消費者は高額なコメや乳製品を買わざるを得ず、とくに子育て世代を中心に家計への負担が重くのしかかっています。

コメ価格が高騰するなか、環境の変化による品質低下が懸念を示す専門家もいますが、世界的にはコメの生産量は増加傾向にあります。2023年から2024年にかけては3%増加しており、供給不安は日本固有の政策問題が大きな要因とみられます。

にもかかわらず、関税の影響により1俵(60キロ)あたりの価格の多くが関税分で、5キロで約1700円の負担となります。年間300キロのコメを消費する4人家族では、関税だけで10万円以上を余計に支払っている計算になります。

国民の多くは「食料危機には国産が必要」と考えますが、過度な農業保護や非効率な支援策が続けば、財政と消費者の負担は今後も拡大する一方です。農業を守ることと、生産性の低い構造を温存することは別問題であり、構造改革や輸入自由化を含めた現実的な議論が求められています。

 

いずれにせよ、問題は関税だけでなく、流通経路にも大きな問題があることが誰の目にも明らかなものとなりました。もはや部分的な修正では不十分であり、農水省とJAの抜本的な改革、あるいは解体が必要だと思われます。