日経に「テーマパーク入場料1万円時代 『時間をお金で買う』消費広がる」と題する記事があります。ディズニーランドやUSJでは1万円の入場料以外に並ばずに乗り物に乗れる有料チケットがあり、それに対して「時間を買う」という話です。USJのエクスプレス パス プレミアムは大人、子供にかかわらずおひとり様税込み35200円、入場料が1万円強なのでこれだけで5万円近くかかります。多分、海外からの人は時間を買うのかもしれません。

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時間は買えるか、といえばYESです。ただ、時間を有効かつ意味ある形で購入できているか、といえばこれは単純ではないかもしれません。
例えばタクシーを使うケースを考えてみます。バスが来ない、あるいは遅刻しそうだ、という場合にタクシーに乗るのは時間を買っていると言えそうです。では雨の日にタクシーに乗る場合はどうでしょうか?これは楽をするという意味合いが強いと思います。
会社の重役になると運転手付きでご出勤という方もいらっしゃいます。アジア的な発想です。なぜ、役員だと車があるのかといえば本質論からすると通勤時間も仕事をするという意味合いです。ただこの本質はかなり捻じ曲げられたと思います。わずか15分のところに住んでいても運転手が迎えに来るというのは見栄が主体。またステータスが邪魔して「満員電車に乗れない」こともあるでしょう。実際、役員がクルマの中で仕事をしている人はどれぐらいるのか、といえば半分もいないと思います。
むしろ、北米では結構大きな会社の社長でも自らハンドルを握るのですが、理由の一つに仕事と家庭のモードの切り替えではないかと察します。1日の仕事と生活の切り替えやメリハリとも言えます。日本で社長が運転するとなれば秘書あたりが、「社長、もしも事故にあわれてお怪我でもされたら経営に影響しますのでお控えください」というのでしょう。いや、秘書が社長を守らなければ役員あたりから秘書失格の烙印を押されるのが関の山であります。
お前はどうしているのか、といえば時間は効率化の一部ですので24時間をどう配分するか、ここに的を絞るようにしています。つまり、遅刻しそうだからタクシーに乗るケースは遅刻しそうになる時間配分が間違っていたと考えます。そうならないようにするのが効率化です。例えば翌朝、大事なミーティングを控えているのに深酒をしたら寝坊のリスクだけではなく、ミーティングで集中できないという成果の問題が生じてしまいます。
私は顧客とミーティングをしても体内時計でほぼ1時間ピッタリで終わります。理由はそれ以上は私が集中できないこと、もう一つはミーティングの趣旨は概ね20-30分で話は終わるからです。あとの30-40分はその周辺話などになり、本質の話からは離れるものです。
むしろ時間を買うという概念は各駅停車VS特急列車の考え方を持ち出した方が良いと思います。24時間をどのスピードで動くか、という発想です。ぎゅっと詰め込み、やれることを全部やって一日を終えた時は「充実した日だった」になるし、何もしなければ無為な日を送ったということになります。ぎゅっと詰め込むのが特急列車ですね。例えば私の会社のパソコンは2画面を2台、つまり4画面で仕事をするのですが、理由はパソコンの処理の待ち時間に別のことをするためです。処理時間数秒の間にできることをやる、つまり「秒を買う」のです。疲れないのか、とよく聞かれるのですが、このスタイルで何十年も仕事をしているので何とも思いません。
私がスマホは一日3度ぐらいしか見ないと申し上げたのはスマホを見る意味がないからです。緊急の用事があれば電話してくるでしょう。なのでスマホを見る=駅に止まる=時間を浪費するを避けることで実質的に時間を買っている状態にするのです。
余談でSFチックな話をすると重力がより少ないところだと時間が早く進み、地球上の地べたにいるケースは時間が遅く進みます。なぜそうなのかはアインシュタインの一般相対性理論の話なのでご興味ある方は紐解いてみてください。ここで私が得たヒントは動画はなるべく1.25倍でみるようにしています。1.5倍はそれに集中しなくてはいけないのですが、1.25倍ならほかのことをしながらでも頭に入ります。これも時間を買うと言えるでしょう。
では冒頭のディズニーやUSJでお前はエクスプレスパスを買うのか、と聞かれたら「買わない」です。理由は混雑しているところにわざわざ人が集まるのはテーマパーク全体の雰囲気が祭りチックになりその人のマインドを非日常の世界に誘うことに意味があるのです。なので通常の入園料を払い、乗り物に3つぐらい乗れればあとはパレードや並ばなくても見られるアトラクションや雰囲気で十分満足できます。これは満足度(効用)という経済学の範疇でも説明できると思います。一口目のビールが一番うまいというあの考え方ですね。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年5月11日の記事より転載させていただきました。






