SoFi「2030年会員数5,000万人」その時の売上・利益・EPSは?(後編)

(前回:SoFi「2030年会員数5,000万人」その時の売上・利益・EPSは?(前編))

前編では「2030年会員数5,000万人」までの道のりを探り、大まかな売上予測を出した。今回は改めて売上予測とともに、Adjusted EBITDA・1株あたりの利益(EPS)も予測したい。

※ Adjusted EBITDA:企業の本業による収益力を示す指標で、利払い、税金、減価償却費、一時コスト(株式報酬や買収関連費用など)を除いた利益。日本の「営業利益」に近い性質を持つ
※ 以下は「数あるシナリオの一つにしか過ぎない」ことはあらかじめご了承ください。

売上予測(ローン事業・金融サービス事業)②

「5,000万人の会員が平均3契約(アカウント)を保有する」というCEO Anthony Notoの目標が実現できれば、2030年末の契約(アカウント)数は1.5億となる(2025年第1四半期末時点で1,592万件のため、10倍近くの契約(アカウント)数が必要となる)。

現在の契約(アカウント)数の内訳をみると、金融サービスのアカウント数の伸びが著しく、金融サービスが全契約(アカウント)数に占める割合は2025年第1四半期時点で87%であることから、その87%は2030年末時点で95%になると仮定する。

※ 契約(アカウント)数:ローン事業における融資契約数に加え、金融サービス事業における「預金」「投資」などの口座数やアカウント数、クレジットカードの発行枚数などを合算した数値。たとえば、1人の会員がローン1件、預金口座1件、投資口座1件を持っていれば、契約(アカウント)数は3。

そうすると、2030年末時点の契約(アカウント)数の内訳は以下となる。

・ローン事業における契約数:750万
・金融サービス事業におけるアカウント数:1億4,250万

現在の1契約(アカウント)あたりの四半期売上はローン事業194ドル、金融サービス事業22ドルとなっている。

ここから、2030年の1契約(アカウント)あたりの売上は、ローン事業はおおむね横ばいのため200ドルとし、金融サービス事業は右肩上がりで推移しているため50ドルとする。(このあたりは感覚的なもので、あくまで参考値である。)

 

上記前提に基づくと、各事業における2030年の売上は以下となる。

・ローン事業:750万契約×200ドル×4=60億ドル
・金融サービス事業:1億4,250万アカウント×50ドル×4=285億ドル
※ 四半期売上を1年換算するため「×4」としている

売上合計:345億ドル

売上予測(技術プラットフォーム事業)

技術プラットフォーム事業の2030年の売上予測は、『SoFi「2026年EPSガイダンスの達成が見えた!?」(後編)』で見たように、2026年以降の成長率は加速するように思うため、15%とすると、2030年末の売上は約9億ドルとなる。

よって、売上を合計すると354億ドルとなるが、各事業セグメントに含まれる社内取引や調整項目5%とし、各事業の売上合計から差し引くと、340億ドルが2030年の売上となる。

Adjusted EBITDA予測

SoFiの長期利益率目標30%をあてはめ、Adjusted EBITDA100億ドルとする。

Adjusted EPS

2030年のAdjusted EBITDA100億ドルは、『SoFi「2026年EPSガイダンスの達成が見えた!?」(後編)』で算出した以下2026年のAdjusted EBITDA 15.8億ドルの約6.3倍となる。Adjusted EPSも同様にスケールすると仮定すれば3.5ドル(0.56×6.3)。そして、ここから株式希薄化を約20%織り込むとすれば、2030年のAdjusted EPSは2.8ドル程度となる。

上記試算には様々な前提があるため、精緻な予測はできないが、会員数5,000万人、会員あたりの平均契約(アカウント)数が3(現在の約2倍)になった場合、ざっくりとEPSは3ドル前後となった。

現在の株価は約13ドルのため、2030年の予想EPSに基づくとPERはざっくり4倍程度となる。

成長シナリオのリスク

もっとも、現時点ではこれは「絵に描いた餅」にしかすぎない。すぐに思い浮かぶ懸念点の一例として、1会員あたりの契約(アカウント)数が長らく横ばいということがあげられる。

これがCEO Anthony Notoが目標とする3にならず、このまま横ばいで推移すれば、ローン事業・金融サービス事業における上記売上は2分の1に縮小することから、この試算自体が何の意味ももたなくなる。

会員数は順調な伸びを示しているが、会員あたりの契約(アカウント)数は現状伸びる気配がないことから、2030年会員数5,000万人よりも、平均契約(アカウント)数を3にするという目標の方がよりハードルが高いかもしれない

今後もSoFiの業績・戦略については定期的にアップデートしていく予定である。

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