トランプ大統領にこそ反乱法を適用できないものか

内乱の状態の責任は誰に

トランプ米大統領に就任して以来、米国内はおろか世界で大混乱が始まっています。カリフォルニア州ロサンゼルスで不法移民摘発への抗議デモが拡大し、州兵、海兵隊が動員態勢に入っています。夜間の外出禁止令も出され、メディアには「まさに内戦だ」という市民の声が流れています。

地元のニューサム知事(民主党、次期大統領選に立候補も)はトランプ氏を批判し、州兵や海兵隊の動員差し止めを裁判所に申し立てています。トランプ氏は抗議デモへの対応に反乱法を適用する可能性を示唆し、「暴動が起きたら、間違いなく発動する」と言明しています。

さらにトランプ氏は「抗議デモは平和、公共の秩序、国家主権に対する本格的な攻撃だ」と断罪しています。抗議デモはニューヨーク、シカゴなど全米の主要都市に拡大し、政権への批判が高まっています。国際的にも高率の関税(相殺関税)をかけ、世界貿易を大混乱に陥れています。不法移民摘発に絡む治安問題というより、トランプ氏の乱暴、強引な統治に対する反発が根底にあるのでしょう。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

日本からみていても、「平和、公共の秩序、国家主権に対する攻撃」を仕掛けているのは、トランプ氏本人の方ではないかと思っている人は多いでしょう。こんな状況下で、敵対国からミサイルでも撃ち込まれれば、覇権国崩壊につながりかねません。

日本の識者らも「トランプ政権の要職には、政治、外交、経済などのプロフェッショナル(専門家、官僚)がついていない。トランプ氏の乱暴、無謀な試みを押しとどめようとする人物は起用されていない」と懸念しています。トランプ氏はこれまでの国際、国内の秩序をまず破壊し、ゼロベースから米国の都合のよい秩序を構築しようと考えているに違いない。

見出しにとった「トランプ氏に反乱法の適用を」については、米国内でも「トランプ氏こそ反乱を起こした張本人である」、「トランプの行動は民主主義への攻撃である」といった非難が、前回の大統領選の時から起きています。対外的には同盟国を属国扱いし、国際機関を機能不全に追い込み、国内では三権分立を無視し、民主主義国家を否定する独裁政治のような振る舞いを続けています。

「反乱法の適用」は法技術的には、不可能だとされます。反乱法は「あくまで治安維持のための軍事的動員権限であって、個人(例えばトランプ氏)を反乱者として適用する法的な枠組みではない。それでも反乱法の話が出てくるのは、象徴的、道義的、政治的な意味を込めて主張しているためです」(ChatGPT)と。

つまり暴動、内乱が発生した時、大統領が州兵などを動員して、治安回復にあたる「治安側」の道具が内乱法であり、大統領自身を適用対象にするには、法理論的に無理があると、Chatさんは回答してきました。

ではどうするか。ChatGPTさんに米国内の議論を聞いてみましたら、「刑事訴追(選挙結果の否認事件、連邦議会襲撃事件の扇動など)、憲法修正第14条(大統領資格の失格)、選挙による審判(26年の中間選挙、28年の大統領選挙)、共和党内の反乱(弾劾を可能にする議員数の確保)などの主張」が聞かれるそうです。

私は、市場の動揺(トランプ・リスク)もトランプ氏の暴走の歯止めにはなると思います。世界経済に悪影響を与え、インフレを招き、景気後退もありうると考え、株価、債券、ドル相場のトリプル安が起きました。それで関税問題の決着に時間的な猶予を与えるよう方向転換しました。当面はトランプ氏に対する「市場のブレーキ」に期待していいのかもしれません。

それにしても、トランプ氏に続いて、バンス副大統領までが連邦準備委員会(FRB)のパウェウル議長の「金融政策では政治的な配慮はしない」との利下げ拒否発言に反発しました。民主主義は多様な意見で構成され、政治権力者に対する独立した機関、システム、プロフェッショナル(専門家、官僚)からのチェックが必要です。日本政府も、「関税交渉ではウインウインの関係を目指す」とばかりいうではなく、米国の動くをもっと大局的な見地からみつめ、けん制する必要があります。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2025年6月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。