【たとえ話】100円の子ども食堂と、社会保険制度のこれから

音喜多 駿

「社会保険料を下げたい」と毎日街頭で訴えていると、必ず聞こえてくる声があります。

「負担が軽くなるのはありがたいけど…制度が破綻しない?医療や介護のサービスが減るんじゃないの?」

そんな不安も無理はありません。でも、だからこそお伝えしたい。

なぜ“負担を見直す”必要があるのか。

今日はその理由を、少しわかりやすいたとえ話でご説明したいと思います。

100円の子ども食堂が抱えたジレンマ

ある地域に、生活が厳しい子どもたちのために、100円で食事を提供する「子ども食堂」がありました。

本当は一食1000円かかります。でも、善意の寄付やスポンサー支援で、100円で提供できていたんです。

安くておいしいと評判になり、本当に困っている家庭にとって、かけがえのない場所となっていました。

ところが…

「別に困ってはいないけど、100円なら食べとこう」
「どうせ100円だし、食べきれなくてもいいか」

──そういう人たちも徐々に増えていきました。

寄付も集まりにくくなり、食堂の赤字は膨らみ、いよいよ運営が厳しくなります。

そこで運営側は、200円、300円への“値上げ”を検討しました。

しかし利用者からは「100円じゃなきゃ無理!」と猛反発。

「困っている子どもたちのために」頑張ってきたスタッフたちは、値上げできず踏みとどまった結果──
食堂は、ついに潰れてしまいました。

最終的に、もともと1000円を払える家庭の子は他のレストランに行きました。

でも本当に困っていた子どもたちだけが、温かい食事を失ってしまったのです。

医療や介護も、まさに同じ状況です

このたとえ話は、まさに今の「日本の社会保障制度」と同じ構造です。

高齢化と医療技術の進化により、医療や介護の費用は年々膨らんでいます。

その“割引分”を支えているのが、働いて保険料を納めている現役世代。

現実には、給与の約3割近くを社会保険料として天引きされています。

それでも「誰でも安く、安心して医療を受けられる国」であり続けるため、ギリギリのところで支えてきました。

でも今──

「100円なら薬もらっとこう」
「せっかく保険だし、診てもらっとくか」

そんな“なんとなくの受診”や、“必要のない保険利用”が制度を圧迫しています。

結果、支える現役世代の負担は限界を超え、制度そのものが持たなくなりつつあるのです。

私たちは、医療を見捨てるわけじゃない

私たちが目指すのは、困っている人が医療や介護から取り残されない社会です。

そのためには、制度の持続可能性を確保しなければなりません。

だからこそ──

  • 本当に困っている人を守るために、年齢を問わず一律3割の窓口負担をお願いする(生活困窮者には還付制度など救済措置を用意する)
  • 市販薬と同じ成分の薬は、薬局で買える人には自費で買ってもらう
  • 財源を歳出改革で生み出して、社会保険料そのものを引き下げる

そういう「現実的で、公平な制度」に変えていこうという提案をしているのです。

現役世代は、何も見捨てようとしているわけではありません。

月に何万円も保険料を払って、700円でも800円でも支援し続ける覚悟はあるんです。

でも、それでもなお「100円じゃなきゃ嫌だ」と言われて制度が潰れてしまったら…

最後に困るのは、支える力の少ない高齢者や、病気と向き合う方々です。

支え合いの形を、次の世代へ

社会保障制度を持続可能にするためには、“みんなが平等に安く受けられる”幻想から脱却する必要があります。

そのための見直しであり、改革であり、そして社会保険料の引き下げです。

私はこれからも、声を上げ続けます。

「みんなが安心して使える医療制度」を、次の世代にちゃんと残すために。

どうか皆さん、ご理解とご協力をお願いいたします。

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編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2025年7月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。