参政党の政策は、本来なら高齢者層にしか響かないような内容が多いにもかかわらず、なぜ若者を含む現役世代から一定の支持を得ているのか。AIとの議論のなかで、この問いに対して以下のような分析がまとまった。なかなか的を射た整理だと自負している。
実際の政策内容――積極財政、反グローバル化、農業保護、医療費削減、再公営化――はいずれも経済合理性に乏しく、むしろ中高年層に訴求する懐古的かつ左派的な要素を多く含んでいる。だが、これらを「覚醒系保守」の語法でラッピングし、「真実に目覚める者」として若年層に訴えている点が参政党の特徴である。
参政党の主張は、基本的には「昔はよかった」という感覚に訴える懐古主義である。この傾向は、京都における共産党支持とよく似ている。私には、京都の共産党支持とは、昭和初期や戦後30年代の「理想の京都」への回帰願望に支えられているように思える。当時、戦災を免れた京都は、他都市に比べて生活インフラや文化が相対的に保たれており、「最も暮らしやすい都市」として記憶された。その後、京都は近代化に乗り遅れ、都市機能が中途半端になったが、「かつては良かったのに自民党が悪くした」という印象を振りまくことで共産党は支持を得てきたように見える。
参政党HPより
これまで、若年層にとって実利のある政策を展開してきたのは維新である。老朽化した施策の整理や、浮いた財源を減税や現金給付に回すという方針は、現役世代にとって明らかに合理的な選択肢である。
これに対し、参政党や日本保守党は、小泉改革やアベノミクスが切り崩した郵政、公共事業、農協などの利権を「復活」させようとしている。いわば岩盤利権の再構築であり、本来であれば若者にとって歓迎すべきものではない。
それでもなお、現役世代の一部が参政党に惹かれるのは、やはり彼らの感情に訴えるコミュニケーション戦略の巧妙さによるものだろう。以下、いくつかの要素に分解できる。
1. メッセージの明快さと「反体制」パフォーマンス
「教育の立て直し」「国を守る」「命を守る」といった、短くて強いスローガンを掲げ、政治不信や不満の感情をすくい上げている。政策の具体性は乏しくとも、「今の政治はどこかおかしい」と感じている層には十分に訴求力がある。特に、「反グローバリズム」「反コロナ対策」「真実を暴く」といった語彙は、既存メディアや制度に対する違和感を持つ若年層と親和性が高い。
2. SNS戦略・YouTube等による情報の浸透
街頭演説や討論動画をYouTube・TikTok等で拡散する手法により、新聞やテレビでは政治情報を得ない層へのリーチを実現。特にアルゴリズムによって推奨される政治系動画を通じて、既存政党に比べてはるかに高い浸透力を獲得している。
3. 現状不安に対する「精神的安全保障」の提供
医療、ワクチン、食の安全など、科学的根拠には乏しいものの、誰でも理解できる「不安」と「解決策」をセットで提示するスタイルは、特に子育て中の親世代に響く。子どもを守りたいという本能的願望に訴えることで、「非科学的でも感情的には納得できる正義」を演出している。
4. ノスタルジーの政治化
外国人増加への不安や、「無駄な支出の多い社会」という語り口が、「かつては良かった日本」という印象と結びつきやすい。参政党は「再公営化」「農業支援」「教育の再生」など、素朴で保守的に見える提案を通じて、現役世代が抱える閉塞感に共鳴を試みている。
だが実際には、公営事業の非効率、農協を通じた高額な農薬・機械代の負担、国際価格と乖離した農産物価格、談合による不透明な公共調達など、「昔の制度」が若年世代にとって利益をもたらす要素は何もない。むしろそれらは、改革対象として批判されてきたものだ。輸入食品の方がよほど安全なのだが、有機農業中心で食料自給率100%を目指すといった主張も、現実味に乏しいが安全な食品が食べられるなら我慢すると意識させる。
ポピュリズムの背景にある思想的傾向
こうした傾向は単なる懐古趣味にとどまらず、より深い思想的背景を含んでいる。
- 「善なる人民 vs. 墜落したエリート」という道徳的二元論
- 18世紀啓蒙思想と合理主義に対する懐疑
- 合意形成や制度的熟議よりも、「空気」に従う直接民主主義的衝動
- グローバル化による変化の速さに対する戸惑い(特にITや国際化への反発)
- 問題を“敵のせい”にして排除すればすべてが解決するという魔女狩り的思考
こうした背景意識を持つ層にとって、自民党のような最大公約数型の合意形成はまどろっこしく映る。さらに、公明党のように古典的な民主主義の枠内で地道な問題発見・制度設計・予算制約を尊重する政党も敬遠されやすい。維新が掲げる「減税と自己責任」のスタイルすら、ポピュリズムの情念には応えきれず、沈没を余儀なくされた。
立憲民主党は政策評価では振るわないものの、共産党との協力によって議席を増やす見通しである。共産党自身は縮小傾向にあるが、着実に立憲を内部から影響下に置きつつあるのかもしれない。
そして、国民民主党は、「現役世代の手取り増加」という支持を得やすい政策を、財政規律上のコスパを度外視した形で展開し、いわば“禁断の果実”を食べることで躍進したとも言える。
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