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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。なにもないところから資格を使ってどう稼ぐのか? 資格を取ることで人生を逆転させた、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』から、再構成してお届けします。
資格選びでカタログを最初に見てはいけない理由
資格は威力を持っています。しかし、使い方によっては自分が振りまわされてしまうことがある、その最初の失敗が資格選びです。
多くの場合、資格の図鑑のようなものを見て資格を探します。または、雑誌などについてくる資格のカタログなどを見て、なんとなく資料請求してしまう傾向にあります。
もちろん、資料を集めるのは決して悪いことではないのですが、そのまま資料請求し、勉強をなんとなく始めてしまうと、情報に振り回されてしまうといった罠に陥りやすいのです。
では、どのように資格を選ぶことが大事なのでしょうか?
資格を選ぶときに重要なのが、資格のカタログや図鑑などから始めないことです。比較するのではなく、「見ないこと」、これが大事なのです。
順を追って説明しましょう。
あなたは何がしたいのか?
資格をカタログから探すと、いったいどうなるのか。まずは興味のあるジャンルを探します。法律・会計にしようか、それとも語学力にしようか、またはクリエイティブ系かIT系か……。このようにジャンルから選択します。
そして、たとえば独立起業もできそうな法律・会計を選んでみる。行政書士、社会保険労務士、税理士、司法書士などたくさんの資格があります。その中で、「合格率が高くて、使えそうな資格がないかな」と、さらに資格を探します。
「どうやら行政書士か社会保険労務士の資格が難易度的にも妥当だし、収入も稼げるらしい。よし、まだ新しいほうの社会保険労務士を選ぼう。社労士になろう!」
こういう決意をしてしまいます。そして、試験を受けて無事、社労士になれました。
しかし、こういった資格の選び方をしてしまうと、その後は何がしたいのかわからない状態になる可能性がきわめて高いのです。
「社労士にはなったけど、次はどうしたらいいの……?」という状態になってしまい、意味もなくダブルライセンスの取得に走ったり、資格を使うことができず、腐らせてしまう結果になってしまったりするのです。
重要なのは資格の種類ではなく、あなた自身が何をしたいのか。自分が本当にやりたいことを考えることが、カタログを見るより先なのです。漠然としたイメージでもかまいません。いったいあなたは、どのような状況が実現できたら最高ですか?
たとえば行政書士。これを選ぶにも、「合格率が現実的」「年収が見込める」「将来性がある」などの選択基準で選ぶと、取得してから苦労します。
行政書士を選ぶのでしたら、「法律に関係する仕事がしたい」「できれば大きい会社相手ではなく、小さな会社や個人を相手にしたい」「誰かに振りまわされずフリーで動きたい」……。本来はそういったことを思い浮かべてから、資格を選ぶべきなのです。
こうした理由で行政書士を取得するなら、資格取得から開業後までがイメージできているので、資格依存症にもなりにくいですし、悪しき専業理想主義にとらわれることもありません。まずは、自分自身が本当にやりたいことを考える必要があります。
せっかく何十時間、何百時間と勉強して資格を取るわけですから、無駄にはしたくありません。あなたにとって最適な資格を最初の段階で選ぶべきです。
また、ステータス資格であっても考え方は同じです。カタログを見て、ウェブデザイナー系のステータス資格などを見て「これからはウェブデザインくらいできないと」という考えで選択しないこと。一見常識的な判断のように見えますが、自分のやりたいことと離れてしまっている可能性があります。
ですから、「自分がやりたいことのためのスキルアップ、あるいは信頼証明になる資格はどれか?」という視点で選択してください。
たとえば、「自分はウェブデザイナーになりたい」のだから「Webデザイナー検定」を受けるというような手順で選択してください。小さなことのように思えますが、やりたくないことは続きません。じっくり自分の気持ちと対話して、選択してください。
勤務経験も資格につながっている。
さらに、これまですでに一定のキャリアがある場合の資格選択基準としては、キャリアを生かすというのがひとつの基準となります。見せ方にもよりますが、まったくかけはなれた資格を取ると、キャリアに一貫性が欠けます。
自分自身のキャリアと一貫性があり、(1)自分の能力を高めるスキルアップ的な要素、(2)仕事の幅を広げる要素、を選択基準にするといいでしょう。
質問を変えると、「あなたがどのような能力を高めたら、お客様は仕事を頼みたくなりますか」というものと、「もしあなたに別の能力があることで、お客様が喜んでくれるとしたら、それはどのような分野の能力ですか」ということになります。
たとえば、ウェブデザインをやってきた人が、色彩検定を取得し、仕事のバリエーションを増やすというのはよい選択です。ただし、これも「自分自身の本来やりたいこと」が重要ですので、やりたくない分野を選んでしまわないように気をつけてください。
以上のように、「まずはカタログから」という考えはなくしてください。
「自分がどうなりたいのか」、まずはここを考えることが、戦略を練るうえで最も重要になります。これは、スキル資格でもステータス資格でも、考え方は同じです。
「自分がやりたい仕事をやるためにスキル資格を取る」ということ、「自分がやりたい仕事の能力を高めるため(あるいは証明するため)にステータス資格を取る」というスタンスでいることが重要なのです。
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
士業専門の経営コンサルタント。2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、のべ全国3,000名以上の士業から相談を受け、相談件数は優に2万件を超える。主な著作に『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業BIBLE』(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。最新刊『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。
X(旧Twitter) : @yokosuka_ai
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年6月10日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。