黒坂岳央です。
「人生に明確な目標を持て」などとよく言われる。昔はその言葉を真に受けて、しょっちゅう人生目標を練ることをやっていた。
だが今は違う。正直、こんなものはまったく無意味と考えている。将来を予測して具体的なゴールを設定してもどうせ当たらない。当たらない占い師をやることに時間を使うのではなく、もっとやるべきことがあると思うのだ。

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将来のことなんて誰にもわからない
まず、大前提として社会も人生も、将来のことは誰にもわからないし、世界のトレンドは自分の力ではどうやっても覆せない。
一例としてコロナ禍を考えてみればいい。2020年、パンデミックで世界中の人々の生活やキャリアが一変したが、あらかじめこのイベントを逆算して人生戦略に盛り込むことなど出来た人はいただろうか?また、生成AIの登場で米国ではキャリアに大きな変革が起きたが、事前にそれを予想してうまく立ち回る人など誰一人いなかった。
さらに、個人レベルで見ると、人生の想定外だらけである。筆者自身についていえば、結婚・子供を持つわずか1年前まで、自分が子持ちのパパになるなんて人生で一度も考えたことはなかった。
また、キャリアについていえば、会社員の頃に将来独立し、ニュース記事やYouTuberになるなんて1秒も考えたことがなかった。
直近で言えば、今から1年前に「新天地へ引っ越しをして家を買い直す」なんてチラリとも想像もしなかった。
そう、細かい未来設計などどれだけ時間をかけてシミュレーションしたところで、ほぼその通りにならない。考えるだけ時間のムダである。
人生のベクトルは決めておく
一方で重要なのは「人生の大局的な方向性」だ。こちらは細部まで突き詰めておく価値は高い。
筆者の場合、仕事で常に意識しているのは「自分の強みを活かす仕事をする」である。サラリーマン時代にはこの視点がなく、そのために何度も転職していろんな会社で働いたが、結局大成することは出来なかった。しかし、独立してからは一貫して「自分の強みを活かしたい」というベクトルを持っていたので、いろんな仕事をしてこの軸からブレなかった仕事だけが手元に残った。
また、人生についていえば「お金より思い出と成長」を意識している。以前は仕事に忙しく、旅行は数年に一度行くかどうかというレベルだったが、今ではほぼ毎月飛行機に乗って旅行や出張に出かける生活に変えた。
人生の大局的な方向性さえブレなければ、あらゆる想定外があっても大間違いをすることはないと思うのだ。
逆算思考が有効な領域と無効な領域
これまで「逆算して戦略を立てても無意味」という話をしてきた。一方で、「逆算思考」が通用する領域もある。
たとえば資格試験の勉強は逆算が有効だ。目標の試験を設定し、必要な参考書を積み上げ、合格に必要な知識を蓄えていけば、結果はほぼ予想通りに再現できる。実際、自分自身も英語資格の取得を始め、あらゆる勉強はゴール逆算思考で実現してきた。
だが、「◯ヶ月で合格する」「半年で必ず成果を出す」といった時間的な目標設定は意味が薄い。特にスキマ時間で取り組む社会人にとっては、逆算の「期限」を設定しても、仕事や育児からたくさんの想定外イベントが生まれるので、現実的にその通りには進まない。
大切なのは「質の高い勉強を継続する」という大局の軸であって、期限ではないのだ。
目標があるとむしろ足を引っ張られる
人間は不確定性に強いストレスを感じるように出来ているため、人は計画を作ることが大好きである。どうせ当たらない計画を立てることは時間のムダでしかないのだが、これは一種の娯楽といえる。キャリアや旅行も実践するのは気が重いという人も、計画を立てることは楽しい。
そこを踏まえていうと、下手に人生目標を持つとむしろ足を引っ張る要素になりかねないことも少なくない。
筆者は会社員の頃、自分は会計の専門家で国際的な企業で働くべきという目標を持っていた。実際、目論見通り実現出来たがまったく自分の強みを活かせず、苦手なチームプレイで結果を出せないで自信を失っていた。
「あなたは性格的に会社員は向いていないので独立したほうがいい」という妻の提案で独立をした。だがその数年後に自分がYouTuberになるなんて思ってもなかった。当初、自分の中でYouTuberというイメージは「ふざけてスライム風呂に飛び込んで笑いを取るピエロ」くらいの解像度だったのだ。自分の価値観、将来のことは自分でもわからない。
これがもしも「いや自分は会計の専門家であるべきだ。当初の計画を変更するべきではない」と頑なに変更を拒んでいたら今の人生はなかった。まだ若かったので自分の柔軟性に救われた格好となった。
この経験があるので、今も人生目標はなにもない。「◯年までに利益◯円!社会的地位はこのくらいで!」みたいなのは何も考えていない。その時々のビジネス環境やマーケットニーズを見ながら、自分の強みを活かして社会の役に立てる仕事をするだけである。
◇
将来を詳細に予測することはほとんど無意味である。だが「方向性」だけは明確に持つべきだ。
人は誰しも不確実な世界を生きている。だからこそ、詳細を固めるよりも「軸を持ち、柔軟に動ける余地を残す」ことが、結果的にもっとも強い戦略になるのだ。
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