先日、「最近の新人は年功序列に回帰する傾向がみられる」という調査結果が発表され、波紋をよんでいます。

【参考リンク】新入社員は成果主義より年功序列に回帰? 調査開始から36年で初めて逆転 「意識の保守化」と見なす前に企業が取り組むべきことは
調査開始以降一貫して新人=実力主義志向というものだっただけに、この結果はかなりのインパクトですね。

【参考リンク】就活で「ジョブ型」採用が増加 職種確約で配属に納得感
これをもって(死に体の)日本型雇用の復活だ!みたいに感じている人も若干はいるようですが、はたしてそんなに単純なものなんでしょうか。
そもそも、ここにきてなぜ急に新人の志向が変化したのか。
いい機会なのでまとめておきましょう。今回はキャリアの“だまし”についてです。

年功序列を希望する新人が増加?
新人が年功序列でいいやと思い始めたのは「初任給が高くなったから」
結論から言うと、初任給が高くなったから。これに尽きますね。
新人というのはよく言えばストレート、悪く言えば単細胞なので、基本的に自分の周囲の状況だけで判断するものなんですよ。
だからまだまだ年功序列が健在(つまり初任給が組織最安値水準からのスタート)だった時代は「こんな激安初任給でやってられるか、これからは実力主義だ!」と直感的に感じていたわけです。
一方、ジョブ化と売り手市場激化により初任給が大きく底上げされ始めると「あ、最初にこれだけいただけるんであれば、ここから少しづつ上がる年功序列でいいっす。っていうかそっちのが楽そうだし」ってなるものなんですね。
たまに新卒の面接で「入社後に初任給から下がらないですよね?大丈夫ですよね?」と聞いてくる人がいますが、そういう人は間違いなく「そこから始まる年功序列の物語」を期待しているとみていいでしょう。
彼らの期待する入社後の賃金カーブを図にするとこんな感じです。

ただ、現在の初任給の異常な底上げというのは、
もう年功序列じゃダメだから実際の仕事内容に応じて賃金を決めよう→最安値の初任給から見直そう
というジョブ化の流れが根底にはあるわけです。
だから、そもそも一律の賃金カーブという考えが今後は描きづらくなるはず。たとえば年功に胡坐をかかず実力でバリバリ勝負出来る人材はどんどん上に行くことが可能です。

【参考リンク】NEC、ジョブ型で27歳部長級誕生 「先輩の部下」を育成
一方、受け身でマイペースな人はたぶん30歳くらいから大して昇給しなくなり、結果的に氷河期世代より低い賃金でピークアウトするはずです。
結果、実際にそういうタイプの人を待っているであろう賃金はこんなイメージになります。

なので結論としては、
- 新人の年功序列回帰なるものの本質は、多分に楽観的願望に基づく誤解である
- 日本企業が年功序列をベースとした日本型雇用に回帰することは今後もあり得ない
ということになりますね。
付け加えておくなら、組織としては上記のような新人の楽観的思い込みはできるだけ早期に是正すべきでしょう。
というのも35歳以降にどういったキャリアが身についているかは、実は最初の5年間が非常に重要だからです。
もちろん「それでもいいんだ、自分はワークライフバランス一本足で行くんだ」という人は別にそれでもいいです(そういう人材を採用した採用部門の問題は別途考慮すべきでしょうが)。
上記は結構重要な話だと思うので、新人が下に配属されたという人、頑張ってたくさん新卒採用したという企業の人事担当の人は、是非研修などで話してあげるとよい気がします。
最後に一点。本報道に付けられているコメントをつらつら読んでいると、割と多かったのが「今まで会社の成果評価でひどい目にあったから年功序列回帰は当然だ」という類のものです。
同情はしますがそれはあくまでオッサンの感想であって、本テーマ(新人の年功序列回帰)とは無関係なのは言うまでもありません。
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以降、
・なぜ今の新人にとってスタートダッシュが重要なのか
・キャリアのだましに引っかかった人たち
Q:「国民民主党はホントに改革出来るんでしょうか?」
→A:「筆者も聞きたいくらいです」
Q:「フィルターのせいで人生がかえって退屈なものになっている気がします」
→A:「ちょっとでも引っかかるものには体当たりしてみるくらいのスタンスです」
特別読み切り「地方女子大でジェンダー学を専攻する大学3年生が人事部に内定する方法」
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