
10月4日に投開票となる自民党総裁選ですが、世評では「地味」「盛り上がらない」「代わり映えしない」などという人もいるようです。
いやいや、ちょっと待って下さい。
有力候補が「戦後最年少の40代の総理」か「憲政史上初の女性総理」かという二択になっている時点で、こんなエポックな総裁選は今までなかったといえるのではないでしょうか?
しかも、結構この二人の「方向性の違い」は、現実にどれほどかはともかくとして、
・高市になったら日本はもう終わりだ!
・小泉になったら日本はもう終わりだ!
みたいなことをSNSではかなりの人が言っていて、いやいやこれもちょっと待ちたまえよ、そんな簡単に一国が終わってなるものか、という感じがする。
というわけで今回は、有力候補とされている高市・小泉両氏の人物評や、それぞれが総理大臣になったらどういう感じになりそうかを予想する記事を書きます。
個人的に、色々と調べてみたあげく、「どっちがなっても日本は終わったりしないし、それぞれなりに最善を尽くしていくだけだ」という気持ちに”今は”なっています。
1. そもそもどっちが優勢なのか?
最初にこの話をしておくと、フワッとした人気のバロメーター的な観点ではなく、自民党総裁選の制度の仕組みに詳しいタイプの人の色んな分析を読んでいると、一応「小泉進次郎が優勢」という予想が出ているらしいです。
ご存知のように最初の投票は「党員票と議員票」の合算で、決選投票は議員票だけで決まる構造なわけですよね。そして「議員票」では圧倒的に小泉進次郎推しが多い見通しらしい。
なんか、一部の「電話調査による結果」では「党員票」の時点ですら小泉さんが優勢という結果すら出ていたりするらしく、そうなったら議員票は盤石な小泉さんになるのは明らかですよね。
一方で、この「電話調査による結果」というのが曲者で、今ネットの「最右翼層」界隈では全力で猛烈な高市早苗プッシュが起きていて、それがどういう影響を持つかですよね。
ただこれが、既に「高市早苗しかありえない!」というタイプの最右翼層は、新興右翼政党に流れて自民党員をやめちゃってたり、あるいは議員票でも最右翼層議員は落選しまくっちゃったりしていることで、「自民党の」総裁選を行うとなると小泉さんが有利になりがちな力学があるとか。
とはいえ、ノンポリとはいえリベラル寄りな感性を持ってるうちの妻も「次は高市さんでいいんじゃない?」とか言ってて、そういう「世間の空気」は明らかにあると思います。
実際、調査によっては「次の自民党総裁は?」というオープンアンケートで高市さんが一位だったりするので、最後までわかりません。
党員票で高市さんがものすごく大量票を獲得してくると、その先でその流れに乗りたい議員票が集まってくるかもしれないので、そうするとワンチャン高市総理もありえるのかも、ってことみたいですね。
ではまず、高市さんになったら「日本は終わる!?」のか、それとも・・・みたいな話を考えてみましょう。
2. 高市さんの意外なバランス感覚と、大真面目な政策通の部分
「高市さんになったら日本は終わる」と考えている層は、基本的にリベラル寄りの人とか、あまりにも野放図な財政拡張をすることの悪影響を懸念している声とかでしょう。
あと、最近の高市さんは「最右翼層のお仲間」が言ってることをあんまり検証しないでSNSで放言して、「ごく一部の支持者からは喝采、それ以外からはヤバい!と思われる」みたいな振る舞いが重なっていて、それで結構警戒されてる面があると思います。
知り合いの、政治家へのインタビュー仕事とかも多いジャーナリストの友人も、
高市さんは本当に危なっかしい。
…というようなことを色々なオフレコ事例を元に教えてくれて、それ聞いてると「ちょっとそれは・・」っていう話も多い感じがします。
だから僕も一ヶ月前ぐらいまでは高市さんになったらヤバいかもね・・・と思ってたんですけど、ここ最近の色んな討論会の振る舞いとか、発表された政策パッケージとか見ると、「そうそう、こういう要素もあった人だったよね」というポジティブな印象が増してる感じがあります。
僕が高市さんについてちゃんと印象を持ったのは「vs岸田」の2021年の総裁選に出たときだったんですけど、(今はもう誰も覚えてないですけど)その時の出馬会見とかは、当時のTwitterで「リベラル系ジャーナリストとかフェミニストアカウントとか」からも
「敵ながらアッパレ」「やるじゃないか」
…みたいな扱いだったんですよ。
もちろん、その人達は「敵の敵」となると一気に点が甘くなるタイプの人たちではあるけど、とはいえ「ちょっとでも許せないことがあると徹底的に批判しまくらないと気がすまない人たち」でもありますよね。
当時の高市さんの会見は、保守派の「気持ち」をちゃんとすくいあげながら、とはいえそれ以外の有権者にとっても受け入れられる絶妙なラインを取り、常に現実的な政策の落とし所も考えながら話すような態度があって、当時の自分は本当に感銘を受けて以下の記事を書きました。(当時めっちゃ読まれた)

上記記事にも書きましたけど、その会見の印象がすごい鮮烈だったので、当時の「右派YouTubeチャンネル」に高市さんが出ているのもいくつか見たんですけど、その番組のちょっと偏見がすぎるような論調にはヤンワリと距離を取り、訂正が必要なデマが含まれているとヤンワリと指摘したりあるいはサラリとスルーしたりしながら、パッパッと現実的な細部の案をどんどん出してくる感じはすごい印象的でした。
当時の自分は、「こりゃ女性初の総理大臣ありえるんじゃない?」とか思ってたんですけど、問題はここで岸田に敗れてからなんですよね・・・
その後、久々に「vs石破」の総裁選に出ているのを見ると、岸田に敗れてから「必死に仲間を募らなくちゃ」となったのか、かなり「最右翼層との適切な距離感」が失われて、今色んな「最右翼層以外の日本人」が懸念している「あの高市さん」みたいな印象が前に出てくる感じになってしまった。
でもこれは、ある意味で女性としての「ガラスの天井」みたいなものもあっただろうし、「必死に仲間を募らなきゃ」みたいな部分を他人は否定できない部分もあるな、と思うところはありますよね。
政治家が必死に選挙区の夏祭りに出まくることについて、「それが政治家の仕事じゃないだろ」みたいな批判はフェアなのか?みたいな問題がある。
そういうこともちゃんとこなすことが民主主義社会では重要で、そういう風にすることによってこそ「人々のナマの思い」を理解することもできるのだ、という指摘はありえますよね。
問題は最近の高市さんの「最右翼層とべったり」な態度は「擬態」なのか「本当にそう」なのか・・・という問題で・・・
3. 危なっかしいのは確かだが、ガチの政策マニアならではの信頼感もある
もちろん、
「ふっふっふ、あれは高市さんが最右翼層の支持を取り付けるためだけに行う高度な擬態だったのだ!」
…みたいな話では全くないと思ってて、ご本人はもっと直感型にフラフラとあっちいったりこっちいったりしてるだけだと思いますし、それが近くで見てる中道派ジャーナリスト的存在からすると「危なっかしい」という評価になるんだと思います。
ただ、そういう「人付き合い的な部分の危うさ」から離れた部分では、ちょっと1時間ぐらい会見したら誰にも伝わる「異様に政策マニア」的な部分が良い影響を持っていて、どこかに「2021年頃にはあった高度なバランス感覚」を感じさせる部分があります。
例えば、発表した政策パッケージの以下の部分などですが・・・
・給付付き税額控除の制度設計に着手
・責任ある積極財政で税収増の強い経済に
・政府純債務残高の対GDP比をゆるやかに下げる
・・・などなど、これは地味に「高市氏に抱かれている懸念」を和らげつつ最右翼層からみてもそこまで分離しているようには見えない、絶妙なラインを狙った打ち出しであるように思います。
「給付付き税額控除」というのは、「減税ポピュリズム」と「ガチの緊縮財政派」の間ぐらいにある政策ですし、「責任ある積極財政」と言っておきつつ、「政府純債務残高の対GDPの比を”ゆるやかに”下げる」という上限設定も丁寧に行っている。
このワーディングを選んだのは高市氏ご本人なのかどうかはわかりませんが、私が2021年当時にネット動画を見て「へえ、こんな人なのか!」とポジティブに驚いたような資質が、一応垣間見れるところがあると思います。
「党派」よりも先に自分なりに理想とする政策イメージがちゃんとあって、今は必死に仲間を募るために「党派的」な動きをしているけれども、本当には「その政策自体」を見て動ける部分がある人なのかも?という部分は大変期待して良いと個人的には感じています。
4. ”積極財政”をやるのはいい…要はバランスが大事
高市総理が誕生すれば、少なくとも石破路線よりは「積極財政」への転換が行われるのでしょう。
ただ本質的な問題は、「緊縮か積極かの二択」ではなくて、常にグラデーションの中にあります。
「日本の財政はギリシャより悪い」といった石破氏の立場が印象的ですが、「あまりにも無責任な積極財政」に対抗しなくては・・という強い意志を持って政治を行うと「緊縮」すぎる方向に触れてしまいかねない。
昨今の選挙で示された国民の意思として、「石破的」な立場まで行くと緊縮すぎる、と感じている声が大きいという民意は明確に示されていると言えそうですし、あとは「どの程度」の積極財政になるのか、というポイントです。
では実際、日本の財政拡張はあとどれだけ耐えられるのでしょうか?
色んな人が色んなことを言っていますが、どうせ本当は誰もわからないのだから、究極的には”やってみる”しかない。
イギリスの通称「トラスショック」的なことが日本で起きるのかどうか?それは誰もわからない。絶対そんなもの起きない!と断言してる人だって別にそんな絶対的な根拠があって言ってることではないので。
しかし高市氏なら、案外その辺のバランスも目配りしながら、ガードレールとの距離を常にはかりつつハンドル操作をするような舵取りが実はできる人なのでは?と個人的には感じています。
そういう意味で、「高市総理大臣」誕生にあたっては、最近の高市氏の「仲間を募る」ための「あまりに危なっかしい」発言の裏にある、ある程度高度なバランス感覚もあるように見える部分に期待したいですね。
案外そういう面では、「左翼どもや財務省が何を言おうと日本に財政破綻はないのだああわはははは」みたいな党派論争に心底熱中しまくるタイプではなく、モクモクと3日間徹夜して政策ペーパーを自分で書くような政策オタクの高市さんこそが、「もし本当に積極財政を試す」のならば、その舵取りの適任性がある存在なのでは、という感じもします。
刻一刻と色々なマーケットの数字や、円安やインフレその他の副次的な影響を多面的に見ながらジャッジしていく難しい舵取りとなりますが、
もし国民が「それを望む」というのならば、
…という観点で考えれば、案外高市総理大臣に難しい舵取りをお願いするのが良いと個人的には感じています。
多種多様な政策アイデアに精通する高市氏が主導する、「前向きな投資」の未来が見えてくるといいですね。
5. 年下の総理大臣という驚天動地
次に小泉進次郎氏の話に行きましょう。
ちょっと突然何の話?っていう話を聞いてほしいのですが、数日前に深夜営業のインドカレーレストランで晩ごはんを食べていると、その上の階にあるカラオケスナックから爆音で
『ギンギラギンにさりげなく』(近藤真彦)
…を歌っている声が聞こえてきて、大声で合いの手を入れてる人たちの声も大変楽しそうで、久々に「昭和〜平成の日本」の空気を感じるなあ、とほのぼのしたということがありました。
私は1978年生まれで、この歌は1981年のヒット曲なので、この歌ってるオジサンは少し年上のバブル世代なのかな?と思いながら食事をしていたのですが、その後続く選曲が
…が来て(さっきの男性が歌っていたがかなり上手かった)、さらにはアニメ『キテレツ大百科』のテーマソングである『はじめてのチュウ』をガガガSPというバンドがロック風に編曲した曲(2008年発表)と続いて、おもわず
「このオッサン同世代なのでは?」
…と思ってしまったということがありました。
そして私はふと気づいてしまったのです、
「小泉進次郎が総理大臣になるということは、”この世代”が日本国の総理大臣になるってことなのか!」という驚天動地の真実に!
(ちなみに本人のブログによると小泉氏のお気に入りはウルフルズらしいです。)
石破首相の「青春時代の歌」がキャンディーズだったことを考えると、小泉氏が総裁選で勝てば次の総理大臣の「青春時代の歌」は、チャゲアスだったり小沢健二だったりコムロだったりアムロだったり、そして何ならモーニング娘。やAKBといった「時代」の空気で育ってきた人物ということになるのです。
いったい何の話をしているのだ?と思われたかもしれませんが、それってすごいことではないでしょうか。
今40代の私はもちろん、50代の方も、そして60代の方の大半ですらも、「日本の総理大臣が年下!」ってめちゃくちゃ驚天動地の初体験ではないでしょうか?
小泉氏個人の能力や識見に期待というよりも、私はその単純な「総理大臣が年下になる」という圧倒的な事実がもたらす効果に大変期待しています。
6. 歴史認識問題の「若返り」にも通じる変化
少し別の例を出しますが、今年の夏、辻田真佐憲氏という40代の歴史研究家の方が書かれた『「あの戦争」はなんだったのか(講談社現代新書)』という本がかなり売れたこともあり、「8月の歴史振り返り定例イベント」のようなところであちこちで辻田氏がコメントしているのを見ました。
あるウェブメディアの対談では、辻田氏と同じ40代の歴史研究家がズラリと並んでこの話題について話していたのですが、それを見ていると圧倒的に「世代交代」を感じました。
というのも、これはその動画の中で彼ら自身も言っていた事なのですが、「ほんの数年前までこれをやっていたのは戦前生まれの80代の重鎮だった(半藤一利氏や保阪正康氏など)」からです。
辻田真佐憲氏の本は、戦後の「イデオロギー対立の道具」にされてしまった歴史を、中立的に解きほぐし、反省すべき点は反省し、しかし評価するべき点は評価するべきだ、という「そりゃそうですよね」的なフラットな視点で書かれており大変興味深い内容でした。
「8月の歴史振り返り恒例イベント」でコメントする人が、「少し若返った」どころか「一気に」若返った事は、内容的にも漸進的な「少しの変化」ではなく、世界観全体がフラットになり、「20世紀型イデオロギーから脱却した現実志向」という全く新しいパラダイムに立脚するものに転換しつつあるのを感じて大変好感しました。
この「歴史認識問題を語ってる論客が、一気に30歳若返った」ような状況は、「総理大臣になる世代が一気に30歳若返る」小泉進次郎総理大臣の存在感にかなり近いのではないでしょうか。
では、もし小泉氏が首相になったとして、その「世代交代」はどういう根本的な変化をもたらすでしょうか?
7. 2−3年の猶予期間をいかに使うかが鍵
この記事を書くにあたって、右の人から左の人まで、総裁選について色々述べられている意見を聞いていて違和感があるのは、
総裁選が終わったらすぐ総選挙
と単純に信じている人がかなりいることです。私が何か見落としてるかもしれませんが、そんなはずはないですよね?
高市さんが総裁になり、それで自民党の支持率がめちゃくちゃ激増して「今やるしかない」みたいな事になる奇跡でも起きれば別ですが、そうでなければできるだけ解散総選挙などしないのが「当然ありえる未来」ではないでしょうか。(それでいいのかという原則論は別にありますが)
それを考えると、高市さんが総理になってもできる限り国民民主などとの連携(十分過半数になる)で乗り切る事が予想されますし、小泉さんになった場合はさらに、もっと踏み込んだ「自公&維新連立」すら噂されています。
実際に「連立」まで踏み込むかは別として、自公維を足せば十分過半数は取れるので、むしろ「世間の支持率」とは別に政権運営自体はしばらく安定する可能性が高いと思います。
急いで解散するような事をしなければ、次の選挙まで2〜3年程度はモクモクと仕事をすることができる。
そこでともかく「とりあえず2年間」の猶予が得られ、そこで過激なポピュリズム傾向に引っ張られずに仕事ができるとすれば、それは日本にとってポジティブな意味を持つと言えるのではないでしょうか。
外国人問題、現役世代の負担軽減問題、物価高問題・・・と、昨今の選挙の混乱で、とはいえ「国民が求める課題が何なのか」は明確になったと言えそうですよね。
「ポピュリズムは何が問題なのかは示せる。どう解決するべきかは示せない」
…という格言みたいなものがありますが、「小泉&自公維新連立」は「高市&国民民主協力」よりも政治的に安定することが予想されているようなので、
「明らかになった問題を2年ぐらいかけてモクモクと処理する」
…というような未来は十分ありえると思います。
イメージとしては、支持率が上がったり下がったり色々しながらも、選挙をできるだけ遅らせてモクモクとやるべきことを積み重ねていった岸田政権のようなあり方になりえる・・・といえるのかも?
今の日本の有権者の状況は、「アベノミクス期の太平の眠りから無理やり覚まされる黒船としてのインフレや円安」という激変状況の中で少し冷静さを失っている面があります。
そこでいわゆる、
一本だ。落ち着いて一本行こう。まだあわてるような時間じゃない。
…的なペースの変化をもたらせることができれば、そこから先は、日本の上の世代の宿痾だった「イデオロギーがすべて、現実は無視」みたいな論調を離れたところで、
「必要なことを必要なように」
やっていける可能性は十分あると思います。
8. 進次郎がそもそもアホっぽくて信頼できない問題www
とはいえ!ここで問題なのが、進次郎がアホっぽくて信頼できない、そんな舵取りができるとは思えない、みたいな話なんですけどw
でも小泉進次郎って党内の「あらゆる勢力」から好かれてるらしく、もりたてて協力しようという声はかなりあるらしいです。
あれだけ問題を起こした農業票の大部分もそこまで離れてないという調査結果をネットのどこかで見たりしたんですけど、なんかその「協力を得られる能力」自体は超すごいんだろうと思います。
「進次郎構文」とかで皆にネタにされるのも、それ自体は才能と言っていい部分もあるんじゃないかと。
で、これは結構前にYouTubeのリハックに小泉進次郎が「自民党の色んな若手実務派」を連れてきて語らせてる動画なんですけど・・・
自民党には「色々なそれぞれの業界」にどっぷり関わってその細かい問題をちゃんと吸い上げる能力があって、それを他の党がなかなか代替できずにいるから政権交代もなかなか難しいわけですけど・・・
この動画は、そういう「実務派議員」を進次郎さんが連れてきて、進次郎自身がその「地味な実力派議員」をショーアップしてあげながら、そのマニアックな細部の政策について十分語らせる役割をこなしていて、大変良かったです。
最近のYouTubeコメント欄って、自民党の議員が出ていたら「全力で叩きまくる」エネルギーが溢れかえってる感じですけど、この動画のコメント欄だけは「自民党を見直した」みたいな声が結構あった。
総裁選の討論会とか見ていると、「総理大臣個人の政策案」みたいなものは、「あ、それいいじゃん」って感じで気軽にピックアップしてどれでも良いものはやりゃいいじゃんって感じになること多いですよね。
「この問題についてどうしますか?」
「私はAをやります」
「私はBをやります」
「私はCをやります」
…みたいな討論になってること多いですけど、
総理大臣がA案B案C案…をどれも全部検討した上で一番いいやつを選んでやってくれれば良くない?
って思うこと多いですよね。
なんなら総裁選出てる人だけじゃなくて、官僚や学者や現場の人や色々な議員の意見も含めて人間関係ベースで取り込んで最善なのをやってくれという感じですよね。
小泉進次郎はなんかわざわざ自分自身が「リーダーシップ!」を取ってなんかやってみせなきゃ、となると結構色々問題起こしそうなんですけど、
うちには点を取れる奴がいる。オレが30点も40点も入れる必要はない。オレはチームの主役じゃなくていい
…みたいなことになると、急激に機能するタイプの人なのだと思います。
特に、自公だけでは安定多数にならなくなっている時代には、「維新とちゃんと関係作れる」っていう一点だけを取ってみても「すごい必須不可欠な重要能力」なんですよね。
そういう意味では、2年ぐらいの猶予を利用して、国民が求める課題について、
「ポピュリズム的なアピールではなく、本当に実効性のある解決を目指すためのチーム」
を動かしてくれたら、それはすごい期待できるなと感じています。
9. 今何もしないってことがオレの覚悟だ・・・(ブチャラティ)
「必要なアクション」は常にやっていかないといけないんですけど、ここまでポピュリズム全盛時代には、「風邪引いて熱があるからって頭から冷水ぶっかける」ようなことをしない・・・ってのも結構大事なことですよね。
頭痛いからって頭痛薬を適量の10倍飲めば良いってわけじゃない。
自民党の討論会をちゃんと聞くと、やっぱり他党よりも具体的に色々な細部の課題を把握して対策を考えている蓄積みたいなのはかなりあるな、と感じる部分は多いです。
それを、「やりすぎもせず足りなくもなく適量に適切なタイミングで」やり続けることがこれから必要なんですけど、それはなんか「進次郎総理大臣」を重鎮から若手から維新議員まで皆で関係を作っておしあげていく合議制のスタイルの中で、ひょっとすると実現できることなのでは?と感じています。
さっきも書いた、「オレはチームの主役じゃなくていい」作戦ってことですね。
実際、今の日本経済はかなり根底的な「環境変化に対する静かな転換」が起きつつある面はあって、「痛みを和らげる」施策は良いにしろ、あまり人工的すぎる無茶なことはしないほうが良い側面もあると思っているんですよ。
「日本を代表するエコノミストの一人」とされる河野龍太郎氏(BNPパリバ証券チーフエコノミスト)の分析によると、コロナ禍における米国経済において、ロックダウンによる経済の停止で大量の失業者が出たことが、長期的に見て経済に良い影響を与えた事が主張されています。(唐鎌大輔氏との共著、『世界経済の死角 幻冬舎新書』などで詳述されています)
単純に言うと、ロックダウン期間中に大量に解雇された失業者は、再度就職するときにより高い給与を出せる職場に移動したため、経済全体として大きな効率化効果があったということです。それがトランプ期のかなり強引な経済運営でも米国経済がある程度持ちこたえている原因になっているとも主張されています。
日本においても、今のタイミングは「あまりに無理なこと」をしない、事自体が意味を持つ可能性はあると個人的には感じています。
私も著書などで何度か触れてきたように、日本の中小企業は「頑張りすぎる」結果として孤軍奮闘しすぎ、それがマクロで見てパフォーマンスに繋がりづらい面がある。人手不足が深刻化し、最低賃金も引き上げられる中で、コロナ禍の米国経済でおきたような「静かな変化」は日本でも起きつつあるように思います。
そこで「あまりに強引な対策」を打ってしまわない事が大事ということもありえる。
小泉進次郎総理大臣の誕生による「2−3年のモラトリアム」の期間において、上の世代が淫してきたイデオロギー対立からは距離をおき、現実に対して「水が器に沿うような」対策を打っていくうちに、そういう「静かな変化」が機能するようになってくれば、そこに日本国の活路はあるはずだと私は考えています。
10. 最近のSNSはほんとヤバくない?
そんな感じで、個人的には「どっちになろうと」自分はその中で日本社会に貢献できる道を見つけられそうだな、ぐらいの覚悟は固まってきています。
それがなんか、最近のSNSはほんとヤバいっていうか、「敵を作って全力で犬笛を拭いて儲けるインフルエンサー」の手玉に取られて、一昔前ならある程度信頼してたような人たちまで
「●●になったら日本は滅ぶ!」
タイプの大騒動に全力で乗っかってるのを見ると、ほんとまず落ち着いてくれ、という気持ちになります。
高市さん個人の言動を丁寧に追ってみると、リベラル派の一部が徹底的に悪魔化するほどヤバい極右煽動家って感じでもないし、実務的な政策オタクの側面とか、独特のバランス感覚を感じさせる面もある。
だから決して、高市になったからっていきなりめちゃくちゃな財政拡張をして日本版トラスショックになるとか、憲法改正されて徴兵制が復活されて軍靴の足音がどんどん近づいてきて中国と開戦する・・・みたいな話ではない。
一方で小泉進次郎さんの言動や活動を丁寧に追ってみると、「個人の能力」にはちょっと疑問符がつく面もあるかもしれないが、色々な「地味に頑張ってる議員」たちと関係性を作ってそれを引き上げる能力は相当にあるし、そもそも「アホっぽさ」に見える「進次郎構文」自体、自分自身をアホ扱いすることで無駄に敵を作らずに関係性を維持する「政治的な深い知恵」の現れかもしれない。
だから実際に総理大臣になってみれば、さっき貼ったリハックの動画のコメント欄が「最近のインターネットではありえないほど自民党に高評価」になっていたような「チームの主役じゃなくていい」作戦が機能する可能性もある。
日本国の政治というのは「日本人」の人材ソースの中から使える部分を集めて使ってやっていくしかないんだし、そういう意味では「今ある選択肢」を減点法でむちゃくちゃ腐しまくってもいいことないですよね。
そういう意味で、最近のSNSは、「憎悪を煽ることで儲けてるプラットフォームのアルゴリズムとインフルエンサー」に毒され過ぎだと思います。
■
そこで!
最後にちょっと宣伝なんですけど、最近「敵とも話せるSNS”めたべた”=メタ正義をベタにやるコミュニティ」っていうのを主催してるんですけど、「オープンなSNSの憎悪の毒」をデトックスするのにすごい良いんで、これを読んでいてピンと来たらぜひご参加ください。
こういう政治的な話題では例えば最近は、「安倍政権時代にそれぞれの人が安倍氏をどう見ていたか」について、「安倍政権がやったことの中には相当リベラルな政策が沢山ある」ということや、「とはいえこういう部分はどうしても許せなかった」とか、安倍支持派も批判派もそれぞれなりに「素直に思うこと、考えること」を吐き出すみたいなことがあってすごい勉強になりました。
「党派的に敵」な人の意見を聞く・・・だけじゃなくて、もっとノンポリ寄りな人がどう感じていたかとか、「とはいえこういう側面もあるのでは?」という当時直接影響を受けた特有の業界関係者からの提示や、実際に生前の安倍さんに仕事でインタビューした人の感想・・・などが、全部一箇所でシェアされて
「なるほどねえ・・・」
…みたいになってるのはすごい貴重な場に育ちつつあるなと感じています。
もちろんそういう政治的な話ばかりしてるわけではなくて、好きな漫画の話や「飯テロ写真」をシェアして「美味しそう!」ってなったり、突然濃密な自分の趣味を語り始める人がいたり、逆に例の赤沢大臣の関税交渉の覚え書きについて金融関係の人が専門知識で深く読み込んで考察してくれる記事があったりとか・・・
(その成果は以下記事にまとめました。)

あと、「めたべたくん」っていうキャラクターがいるんですけど、これをAI使ってみんなで色んな画像を生成して楽しむ遊びとかも流行ってます。
以下は参加者がそれぞれ楽しんで作ってくれた色々な画像(記事トップ画像として使われる事が多い)

ハイタッチめたべたくん

レゲエめたべたくん

風神雷神めたべたくん
実際、僕は「オープンなSNSの競争で毒されてるなんて自分の冷静な認識力がないヤツだけの問題だろ」と思ってたんですけど、めたべたをはじめて数カ月で僕自身がめちゃくちゃ影響受けてるんですよね。
xのアテンションエコノミーに毒されてるのはバカなやつだけだろ・・・と思ってたら全然そんなことなかったw(あるいは僕自身も”バカなヤツ”の一員だったということか・・・)
「こうやってこういう角度で煽ったらバズるぜ」みたいな習い性がどんどんデトックスされて、「そんなんじゃなくて今何が必要な言論なのか」を考えようっていう感じに自分自身がすごく変わっていくのを感じています。
参加してくれている人たちは男女同数ぐらい、年齢も20代から70代ぐらいまで幅広いですが、それぞれなりに「xばっか見てたときの毒」がデトックスされてきているのを感じているという人が多いです。
「誰かの儲けのために無駄に怒らされ続けるレース」みたいな事から距離を取って、今の日本と世界に何が必要なのか、大事な話もしょうもない話もシェアしながら日々を共有している「めたべた」によかったらあなたもご参加ください。
以下リンク先からどうぞ。
「ROM専=読むだけ」の参加でも全然よくて、定期的に僕自身が編集して配信している「公式ダイジェスト」を読むだけでも、十分にある種の「メルマガ」みたいなものとして普通にお値段以上の価値があると思います。
■
長い記事をここまで読んでいただいてありがとうございました。
ここからは、最近「キタニタツヤ」の「カルチャー」っていう曲がめちゃくちゃ良かったという話を聞いてください。(これも”めたべた”で教えてもらった)
さっき「カラオケから聞こえてきた同世代感をめっちゃ感じた」って話をしましたけど、”めたべた”の中で、「小泉進次郎が聞いてきただろう音楽」みたいな話をワイワイしてるうちに、最近のこの曲とかめっちゃすごかった!という話を聞きまして。
単純に言うとTwitter(x)で起きてるSNSバトルを茶化す内容なんですが、それが単なる「茶化し」じゃなくて、深く一貫した理想を持とうとする意思と結びついていてそこがすごくいい。
でもほんと、なんか、これって「Jポップ業界が積み重ねてきた価値」が詰まってるなあ、って思ったんですよね。
各国の音楽市場はもっと「ワンフレーズどかーん」って感じで、印象的なフックでダンスさせてそれでバズらせて・・・みたいな方向になってるのに背を向け続けて十数年、それで花開いた世界という感じで。
それが実際の世界の分断を乗り越えていこうとする確かなメッセージにまで育っている。
ちょっとこの曲の素晴らしさと、その背後にある「日本の音楽業界が積み重ねてきた価値」について熱く語りたい気持ちになっているので聞いて下さい。
■
つづきはnoteにて(倉本圭造のひとりごとマガジン)。
編集部より:この記事は経営コンサルタント・経済思想家の倉本圭造氏のnote 2025年9月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は倉本圭造氏のnoteをご覧ください。






