【自民党総裁選】リーダー人事評価③「小林鷹之」

西村 健

ステマ騒動で揺れる自民党総裁選挙。筆者は長年、政策評価や人事評価の専門家として「政治家の人事評価」などを提起してきたが、首相としての「リーダー人事評価」を考えていきたい。第3回目は小林さん、いわゆる「コバホーク」。

筆者の高校の1個上の先輩で面識もあるので客観的にいきたいところ。真面目で性格が良くて、裏表がなく、後輩思いで優しく、「非の打ち所がない」人格、高身長でバスケも上手で、運動能力が高く、ガマン強く、忍耐力があり、もちろん勉強も運動もしっかりやる、努力家として尊敬できるというのが多くの人の評価である。

1974年11月29日、千葉県市川市で生まれ。香川県三豊市出身の両親のもとに生まれる。浦安市立美浜南小学校、私立開成中学、私立開成高校を卒業。在学中はバスケットボール部にて活躍。長身であり足が早く俊敏さを兼ね備え、センターやシューティングガードとして「エースの存在」だったそう。浪人を経て、東京大学に入学。ボート部では主将まで務める。国家公務員試験に合格し大蔵省に入省。ハーバード大学ケネディ行政大学院で公共政策修士を取得。2003年に国際機構課通貨基金係長、2005年に理財局総務課課長補佐、2007年から2010年まで在アメリカ合衆国日本国大使館で二等書記官、一等書記官を務めた。2010年4月に退官。その後、2012年12月に衆議院議員に初当選。防衛大臣政務官や内閣府特命担当大臣(科学技術政策、宇宙政策、経済安全保障)などの役職を歴任。東大同期で現在弁護士として活躍する女性と結婚。娘がいる。

この方は自民党総裁、いや日本の首相としてどうなのか?行動で他人に示すリーダーシップ、その情熱と人間性で他人を引っ張る新時代のリーダーになれる可能性を持っている。

世間での「評価」と「偏見」

イケメンで背が高く、かっこよく、清潔感があり、性格もしっかりしていて、人間性も安定感を感じる、経歴もキラキラ・・・・。その完璧さに多くの人は憧憬を感じる国民も多いだろう。開成、東大、財務省というまさに典型的なエリート。しかし、特徴的な発言として、「世界の真ん中に立てる日本を」といった現実からかけ離れた事実認識、エリート主義がその発言に垣間見られる。多くの国民から距離を感じてしまうところもあるだろう。

 「ゼロから1を生み出す力は誰にも負けない」と言うなど仕事においての実力者であることも確か。経済安全保障政策など、自ら問題設定し政策を形にしてきた自負も垣間見られる。優先順位の設定、人事において実力主義の考え方など実務能力が高い実務家である。また、「穏健で開かれた寛容な保守を」ということで、保守派でありながら、対立よりも和を重んじる姿勢を強調している。

「リーダー人事評価」

筆者は人事評価の専門家として各階層の求められる能力と行動特性を研究している。以下が基本的にはリーダーシップの評価の評価軸である。

筆者作成

総理大臣の采配は他のマネジメントとは形態が変わってくるので、これをもとに、昨年、以下のような評価視点を提示し、各候補を評価した(あくまで筆者による自己評価なのでご注意ください!)。

筆者作成

今回、さらに「リーダーのコンピテンシー」を掘り下げよう。このコンピテンシーの中でも本当の意味で日本の首相に必要なのは、「部下を的確に指示命令ができる」こと、「信頼を持たれる言動・行動ができる」こと、「場面に応じて、的確な判断ができる」ことであり、そのことの重要度が高い。この3つをさらに分解・ブレークダウンすると・・・

①「部下に的確に指示命令ができるためには、

  • 幹部や部下の能力やスキルや強みを理解している
  • 目標達成のためのイメージ、命令の意義や意味を部下に納得行くように伝えることができる

②「信頼を持たれる言動・行動ができる」ためには

  • 自分が絶対に正しいと思っていなく、自分を客観視できる
  • 周りへの配慮や優しさや愛情がある
  • 自分が誤った場合には(周囲に)素直に言える、謝罪できる
  • 部下が「この人のためなら」と思えるだけの人間性や人柄を持っている
  • 言動と行動が一致している
  • 物事に動じず、泰然自若している、厳しい時に逆に周りを鼓舞する

③「場面に応じて、的確な判断ができる」ためには、

  • 状況を正しく、偏りなく、大事なポイントを理解できる
  • 官僚や周囲が出してくる内容に対して一貫性のある判断基準を持っている
  • 多くの立場・視点から総合的に客観的にみることができる
  • 物事が進まないときにも、できる限り冷静にいて、問題解決策を探れる

さらにこれらの「条件」をさらに深い根底の階層にブレークダウンすると、

④ 基盤レベルとして

  • 首相として何を成し遂げるのかの思い、使命、情熱がある
  • 有力な利害関係者や一部の関係者のためではなく、全体的かつ歴史的視点を踏まえて行動すべきだと考えている
  • 主権者である国民への寄り添え、奉仕する意欲を持つ

といったところになる。

こうした「リーダー人事評価」をしてみると、小林さんはかなり合理的な判断ができるリーダーだということがわかるだろう。

推察すると

  • 多くの立場・視点から総合的に客観的にみることができる
  • 主権者である国民への寄り添え、奉仕する意欲を持つ

と言った点が課題だろう。財務省での多くの先輩からの支援を受けてはいるようだが、そうした人間関係への配慮、義理人情によらない、公平公正な視点を提示できるのかどうか。

また、国民は小林さんのように頑張れる人、能力が高い人ばかりではない。多くの国民に寄り添えるか。多くの人の立場に立って相手に共感できるか。その視点を誠実に伝えていくことで多くの人々の心を打ち、結果、人気も獲得できるようになるだろう。

小林さんへの期待

リーダーとは、合理的な行動をとれるかはもちろんあるが、本質は「修羅場で人を率いられるか」と筆者の師匠が定義していた。時には自分の枠を飛び出し、どこまで苦しみ悩んだ経験があるのか、本当の修羅場をくぐった経験があるのかわからないが、人を勇気づけ導けるのだろうか。特に、何か自分や周囲の身に問題が起きたときに、冷静に対処し、融和的に、相手の立場にたって行動することができるのだろうか。

1年前は「力強く成長する日本」「世界をリードする」という発言が多かった。そこから現在は、「国民の未来に希望の光をともしたい」といったような発言が出るようになった。国民の暮らしに寄り添った発言が多くなっている。今回は、現役世代の視点を明確にし、社会福祉において高齢者にも負担を求める姿勢を示すなど、日本のための問題解決のためを本気で思っているようだ。「結束」という価値観も提示しているように、オープンマインドで、周りと調和していくリーダーのようだ。

大事にしている言葉は「意志あれば道あり」「有志有途」(「志」があるところに道は拓けるという意味)。「失われた30年」の経済停滞からの日本経済の復活、経済保障で日本を保護、そして日本の社会構造のモデルチェンジ・変化など「本当の改革」に必要な問題意識、リーダーシップ、人望、行動力を持っている。小林さんに期待したい。

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