ラーメンの世界展開こそ真のグローバルだ

グローバル化とは、歴史の進歩であり、人類の叡智の進展であり、理性の創造的な自己展開なのであって、最終的に、地球の上に、一つの世界市民社会を成立させ、理性の支配を実現し、暴力による支配を廃絶するはずである。

他方で、理性以外には人間には共通するものはなく、全てが個性的ある。グローバル化は、理性による支配であると同時に、多様なる感性、心性、価値観、言語、食べ物、着るものなど全ての個性的なものの共存である。故に、グローバル化と並んで、もう一つの重要概念が多様性、即ち英語のダイバーシティになるわけである。

多様なものは、多様なものとして、相互に尊重しあい、相互に刺激しあい、相互に吸収しあい、相互に働きかけあうことで、新しいものを創造していくわけで、その過程が人類の進歩であり、世界市民文化の創造的革新であり、経済社会の成長なのである。

中国やインドやイタリアの食文化に刺激を受けて、日本でラーメンやカレーライスやナポリタンという国民食が創造されたように、浮世絵がフランス印象派に大きな影響を与えたように、伊万里がマイセンに影響を与えたように、日本は、世界から影響を受け、世界に影響を与えて、多くのものを創造してきた。

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日本にしかないもの、日本の文化的伝統のなかから生まれてきたもの、日本固有のもの、日本の歴史的体験に根差すもの、日本の個性、日本人各人の個性、要は、徹底的に日本的なものをグローバルな文化創造の場に提供することによって、日本はグローバル文化の進歩に積極的な貢献ができるのである。

しかも、日本にこだわることは、日本に閉じ籠ることではないから、ありとあらゆる非日本的なものを日本的なものに融合させ、そこに、化学反応、いや、爆発を起してこそ、グローバルなのである。正統な日本料理を海外に普及していこうという発想は、少しもグローバルではない。日本料理の技法を全世界のありとあらゆる食材に適用し、日本固有の食材を世界のありとあらゆる調理方法に適用してこそ、グローバルなのである。そういう意味で、ラーメンの世界展開はすごいのである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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