2年前の冬、青森県津軽地方を走る弘南鉄道大鰐線に乗車したレポートを書きました。
※もう一つの路線、弘南線も合わせて記事にしています。
沿線は学校が多いことから多くの学生に利用されてきました。沿線はりんごの畑が多く、りんご畑として親しまれてきた路線です。
そんな大鰐線が2028年3月限りで運行休止、事実上の廃止となるというニュースが飛び込んできたのは2024年11月のことでした。
大鰐線はもともと昭和27年に弘前電鉄が敷設した路線でしたが、国鉄やバスに利用客を奪われ、昭和45年に弘南線を営業していた弘南電車に営業譲渡された路線です。弘南電鉄は弘前地区の地域輸送の担い手としての自負を持ってその後半世紀以上にわたり大鰐線を維持してきました。しかし人口減少やモータリゼーションの波に押されて業績は回復せず、近年は自治体からの補助金でようやく運営を維持する状態となっていました。

事実上の廃止が決まった大鰐線。乗れるときに乗っておこう、と思い弘前までやってきました。大鰐線の起点は中央弘前駅。JR弘前駅からは2キロほど離れています。いかにもローカル線のターミナル、といった出で立ちのこの駅、大好きです。

丸ゴシックの駅名看板がいい味出してます。


駅舎内には大鰐線の愛称「りんご畑鉄道」の路線図と観光案内が掲げられています。電車に乗って沿線の旅に出られるのももうあとわずかです。

中央弘前駅のホームにはこけしにもマトリョーシカにも似た人形がいます。これは弘南線のある黒石市の工芸品「こけし灯篭」です。黒石ねぷたでは高さ10メートルのこけし灯篭が町を練り歩きます。

電車の出発が近くなったのでホームに入ります。今年は11月30日まで、りんごねぷた列車と呼ばれるりんごの装飾品が車内に飾られた列車が運行されます。夜にはライトアップされるそうなので、よりねぷた感を感じたい方は夜の列車に乗るといいと思います。

りんごのねぷたが飾られた車内。


吊革までりんご。

扉にもりんご。まさにリンゴづくしのローカル線です。

りんごジュースサーバーでジュースを提供してくれる列車もあります。

せっかく「りんご畑鉄道」に乗ったので、りんご畑をよりいっそう感じてみたい。そう思い、途中の松木平(まつきたい)駅で下車しました。

この駅、降りるとすぐ裏手にりんご畑があって、10月にはこのように真っ赤なリンゴが実っているところに出会うことができるのです。

反対方向からの列車がやってきました。大鰐線は基本1時間に1本しか走らないので、電車とりんご畑を一緒に取ることができる機会が限られているのが玉にきずです。電車がいってしまうと周りはりんご畑のみの世界。ここで1時間待つのも惜しいので、隣の津軽大沢駅まで歩くことにしました。

両駅の間に伸びる青森県道126号線は通称「アップルロード」と呼ばれ、沿道にはりんご畑が広がっています。この時期は赤く色づいたりんごを眺めながら散歩することができて青森の秋を存分に感じることができます。



こんなたわわに実ったりんごの木も。

ちょっとずれてしまった看板がエモい。

雪国ならではのラッセル車もいます。
津軽大沢駅に到着しました。ここは大鰐線の中間駅で、上下線の列車の交換が行われます。大鰐線の車庫もここにあって非番の列車がここで休んでいます。

大鰐に向かう列車がやってきました。これに乗って旅を先に進めましょう。


車窓を眺めていると真っ赤なりんごが次々と流れていきます。大鰐線はほぼ全線でりんご畑に出会える、りんご畑電車の名に偽りのない路線です。


かつては駅員が切符を売っていただろう売り場も今は固く閉ざされています。
終点の大鰐駅に到着しました。ここは津軽随一の温泉街。併設するJRの駅は大鰐温泉駅といいます。大鰐線を敷設した弘前電鉄は大鰐温泉に向かう乗客を当て込んで先行して路線を開業させ、稼いだお金で中央弘前駅から北に路線を向かわせる計画を立てていましたが、かないませんでした。

大鰐駅から徒歩2分の場所に大鰐町地域交流センター鰐Comeがあります。食事もできるほか、温泉施設も備わっていて電車の待ち時間に一休みできる便利な施設です。

温泉施設の中はこざっぱりとしていて、ここでも食事ができるほか待合室では本を読んで寛ぐこともできます。癖のないお湯で長湯もできそう。地元の人も温泉を楽しんでいるようでした。

多くの学生や市民、観光客の足として活躍してきた弘南電鉄大鰐線。あと2年あまりで75年にわたる鉄道の歴史に幕を閉じようとしています。時代の流れとはいえ何とも寂しい限りですが、できるだけ多くの方に乗っていただいて、人々の記憶の中で生き続けてもらいたいと思っています。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年10月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。






