習近平の面子を丸潰しした高市首相のSNS投稿は危険すぎる

高市首相がAPEC首脳会議で習近平さんと会って、ソフトムードで切り抜けたあと、台湾の代表と会って、しかもその様子をそのままXで二度も写真付きで流したことに中国側が激怒している。

当然である。習近平は会談が和やかに終わったので、「これは安倍首相の路線継承者だけあって、腹を割った会話も対話ができる」と思っただろう。それが、何時間もたたないうちにぶっ飛んだ行動に出たのである。

これまでの首相もAPECの会議を利用して台湾の代表と会っている。しかし、その報道は事後に外務省から事実だけをローキーで流していた。ところが今回は悪手で、いかにも首脳会談風だ。

これでは、意外にソフトな高市首相に少し安心してその印象で流していたのが、だまされたということになる。

これは、かつてウラジオストクで野田佳彦首相(当時)が胡錦涛に甘い言葉を受けていた翌日、尖閣国有化を閣議決定し、胡錦涛が怒って反日暴動のきっかけになったのを思い出す。

どうも松下政経塾出身者には、率直に話しすぎて失敗することを悪いと思っていないところがある。しかし、中国人は面子を誰よりも大事にすると教わらなかったのだろうか。

私が知る限り、中国との交渉で相手の面子を尊重すれば、彼らは現実的だと思う。

公明との交渉でも高市首相が甘い見通しで対応したがゆえの決裂だった。ともかく、こんな調子でトランプ大統領相手に失敗したら大変だ。

この点に改善がなければ、できるだけやめた方がいい。

高市首相は、習近平にこれまでより厳しいことを言ったが、習近平はなぜか怒らなかったということになっている。しかし、たいしたことを言わなかっただけだと思う。

高市首相の応援団は、「尖閣を含む東シナ海問題・レアアースの輸出管理・在留法人拘束についての懸念・南シナ海での行動・香港、ウイグルでの深刻な懸念・拉致問題を含む北朝鮮情勢・日本産水産物や牛肉の輸入の再開」全部はっきり習近平に言ったそうです。「凄い!! かっこよすぎて涙が出そう….高市総理、マジで命を賭けてますね」とか言っているが、こんなのはこれまでの首相でも、あるいは公明党の訪中団も繰り返してきたことだ。

もちろん、危惧された靖国参拝も、まったく妥協案的なこともしていない。

まあ、こんな調子なら習近平も「言うほどでもない。安倍晋三も極右に期待だけはさせていたが分別があった」くらいに思ったかもしれないし、だからそれほど機嫌も悪くなかったのだろう。

そして高市首相は、その直後に台湾の代表と会った。このことはすでに安倍首相や岸田首相もやっているので、一応の抗議は受けるが大したことはない。

また、そうしたときは、中国に配慮して事後に控えめにだけ外務省が流していた。だが、こんどは首相自身が二度も写真入りでSNSで流したので、中国政府は習近平の面子をけがしたと激怒している。それを「高市首相よくやった」という高市親衛隊の説明だが、習近平をだまし討ちして侮辱して怒らせたら「よくやった」というのは幼稚の極みだ。

そういう人たちを周辺から追放しないと、本当に国益に反する事態を招くと思う。

いいえ、高市首相による台湾代表との会談に対する中国の抗議は、過去の事例よりも明確かつ強い表現で行われており、「性質と影響は悪辣だ」「越えてはならないレッドライン」といった語句が使われている。SNS投稿による可視化も抗議の強度を高めた。

「高市首相がAPEC開催の韓国で台湾代表と会談し中国側は猛抗議」とのこと。APECの機会に台湾代表と会談することは岸田、石破もしているが、事後に外務省が控えめに確認しただけ。ところが高市首相自身が二度にわたってSNSに派手に投稿した。

習近平と会談し、無難に対処して建設的な対話ムードを醸成した直後にこれでは、習近平の個人的な面子を潰したととられるのは当然。

かつて、野田首相は2012年9月9日に胡錦涛主席と会談し、翌9月10日に尖閣国有化を閣議決定、そして9月11日に正式発表・契約締結し、胡錦涛の面子を潰して大規模な反日運動のきっかけとなった。これは私が野田佳彦の幼稚な外交の典型として厳しく批判してきたことだ。

今回も、中国側の抗議そのものはいつものことだが、抗議の形式が外交ルートを通じた「厳正な申し入れと強い抗議」に加え、外務省報道官による公式声明となっている。せっかく靖国参拝を控えて実質重視で行くのかと思ったら、これはいかがなものか。

たとえもっと厳しく対立している場合でも、相手国首脳の個人的面子を潰すのは外交術としては最悪だと思う。(例外は安倍首相の文在寅大統領徹底無視くらい。あれはどうしようもなかった。朴槿恵が告げ口外交しても、安倍さんは朴槿恵との個人的信頼関係を壊さないように媚びるくらいの低姿勢で修復のきっかけを作った)

日中首脳会談 高市首相Xより

【関連記事】