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先の米中首脳会談を、互いの影響力を確認する“緊張のショーケース”として受け止めるのは、むしろこれからの世界を見誤らせる危険がある。米中間の緊張は、単に経済摩擦が激化するという類型のものとは質が異なる。
率直に言えば、アメリカも中国も、デカップリングの先に来る「その後」の未来図を十分に描けていないのではないか——そのほうが現状を正確に表しているだろう。
米国は移民問題、麻薬対策、ウクライナや中東の不安定化といった複数の前線を抱え、三正面作戦を強いられている。国内ではリベラル政策への反発が強まり、トランプ支持はその帰結の一つだ。
反トランプで盛り上がっているように見えても、多くの有権者は民主党政権の行き過ぎた政策に辟易している。なぜ自国の税金が移民対策に使われるのか。アメリカはアメリカ国民のための国家でありたい、という観念が根底にあるのだ。これは単なる覇権維持願望ではない。かつての余裕を失った現実を直視し、自国を守るための現実的な選択を優先しているに過ぎない。
トランプが問題にしているのは、中国の単なる台頭ではない。サプライチェーン戦略の裏で進むデジタル覇権、レアメタル・半導体の支配、そして軍事的な安全保障の強化といった点が、世界の安定に対する深刻なリスクであることを指摘しているのだ。
単に「アメリカが覇権を維持したがっている」という見立てでは、事態を見誤る。米ドル体制の下にあっても、それだけでアメリカの産業力や社会的余裕が回復するわけではないことは現実が示している。
では中国はどうか。中国を支えてきたサプライチェーンの優位性は、模倣と知的財産侵害の問題、そして先進国の“選択的離脱”により揺らぎつつある。利用価値が薄れると判断されれば、先進各国は中国を供給網から切り離す選択を取る。
中国側から見れば「利用して捨てる」と映るだろうが、リスク管理の観点からはやむを得ない。政治と経済は表裏一体であり、経済的な批判は政治的帰結を招く。結果として中国がサプライチェーンのハブとしての地位を失うことは、ある種の必然でもある。
歴史的に見れば、国の国際的地位は政治と経済の両立によって築かれる。日本も戦後の繁栄を・・・
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以後、続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。