法定通貨を保有することの恐ろしさ

昨日開催された第21回世界の資産運用フェアのパネルディスカッションで最も注目されたのは、金価格の推移です。2025年7月のブログにも「金が上がっているのではなく、法定通貨の価値が下がっている」という内容の記事を書きました。

通常の金価格のチャートは、円やドルのような法定通貨に対しての金の価値を計算しており、どれも右肩上がりになっています。

ところが、逆に法定通貨の金に対する相対的な価値をグラフ化すると、同じ事実でも見え方は全く異なります(図表)。

上記の図表は少し古くなりますがピクテ投資顧問が作成した2000年から2019年までの金の価格に対する法定通貨の価値の変遷です。

2020年からも金価格は上昇を続けていますから、法定通貨の価値はこの後もさらに相対的に下がっていることになります。

短期的に金の価格が上がるか下がるかは予想する事は困難ですが、長期的には法定通貨の価値は、金に対して継続的に下がっています。

今後もこのチャートが逆向きに動く事は考えにくいのではないでしょうか?

なぜなら通貨供給量が減る事は無いでしょうし、金の供給が増えることもないからです。マーケットの需給構造が変わらない限りトレンドも変わることはありません。

とすれば、少なくとも法定通貨の現預金を持っているより金を保有した方が良いという結論になります。

そうなると、次に問題になるのは、どのような形で金を保有するのが良いかと言う具体的な投資方法になります。

金の地金を購入する、金貨を購入する、金のETFを購入する、金の採掘を行っている鉱山会社の株を保有するなど様々な方法が考えられます。

私は上記のいずれでもない別の方法で金の上昇に備えるポジションを作っています。これは税メリットや有事の際のポータビリティを考えての選択です。

金が上がるだけなら保有していなくても単に儲けそこなったと思うだけです。しかし、金に対する通貨価値が下がっていくと考えると、法定通貨を保有することの恐ろしさがより実感できます。

まさに「事実は1つ、解釈は無限」です。

niphon/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年11月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。