S&P 500は夜明け前に残尿ゾーンへ

S&P 500は続落の週となった。週前半は漫然と続くアンチ・ゴルディロックスの流れに加え、NVDA決算前のヘッジもあって下値を試した。

週のハイライトはNVDA決算と雇用統計を通過した後の木曜11/20にやってきたNVDAの決算はいつも通り堅調であり、時間前から寄り付きにかけて指数も半導体を中心に堅調だったが、きっかけもなく高値から売り崩されることになる。その後クック理事が「資産価格が全般的に歴史的な基準と比べて高く、大幅下落する可能性が増している」と述べたのも影響してか、終日売られ続けた。

これは「解放の日」以来で最も激しいイントラデーリバーサルとなるGSによると「1957年以降、S&P500種が1%余り上昇して寄り付きながら、下落して引けたケースは今回を含めて8回あるという。ただし過去の平均的なパフォーマンスは明るく、こうした急反転の後、翌日と翌週はいずれも少なくとも2.3%上昇し、翌月には4.7%上昇していた」とのことである。もっとも翌11/21金曜はしけている。

予兆はあったのか。月曜11/17の下落で終値が50SMAを割り込んだことでテクニカルを重視する投資家は「解放の日」以来の最大規模の調整という位置付けを覚悟したようである。

50SMAを下回らない日は138営業日連続で途切れた。NVDA決算はファンダメンタルズの改善要因にすぎず、実際の値動きはあくまでもテクニカルが規定した。なぜそう言えるかというと、テクニカルからは一連の展開が予想可能だったからである。

本ブログも前回の記事では、

・NVDA決算は今まで通り内容で滑る可能性は高くない
・決算翌日にプラマイ7%以内で寄り付いた場合は中心回帰しやすい
・ナスダックのヘッドアンドショルダー右肩23670は強いレジスタンス

とかなり精密に推論してあった。従って木曜11/20の調整から始まる展開はテクニカルだけで予想可能であったし、むしろ決算を見ないでテクニカルだけに従っていればよかったのである。最もやってはいけないのは、値動きを見てから逆算して決算にケチを付けることである。つまり値幅の割りに、木曜11/20の調整に深い意味があったとは思っていない。

DBの統合ポジショニングは一気に47パーセンタイルから34パーセンタイルまで急落した。これはシステマティック勢と裁量勢のシンクロした売却であり、特に裁量勢は「解放の日」以来の低いポジション水準になった。機械勢もポジションを高水準からサクサクと落としており、これは前回の記事時点のGSの観測にも一致する。この観測は記事にもなっている。これを見るとポジショニングの重さはすっかり解消されているのでポジティブになれる。

GSのプライムブローカー先のHF達はテクノロジーセクターを大幅に売り越した。

Op Ex前のものとなるがBofAのディーラーガンマは相変わらず6600と6900にそれぞれ小さな山がある形となる。木曜11/20のクラッシュはついに左側の山を貫通して一時ネガティブガンマ域に突入したが、週末までにはポジティブガンマ域に戻ってきている。

その過程で指数プット出来高は今年3位の多さとなった。個別銘柄まで含めるとそこまででもないが、「値動きに対する何となくヘッジ」の規模は相当なものに上ったことが分かる。

10年前と違ってショートは空売りよりもプット買いで構築されることが増えているため、寄り付きが高い方がプット買いをやりやすい(逆もしかり)。ネガティブガンマ域に突入したことで動的な追加ヘッジも殺到したことだろう。これが0DTEでないなら新たなプットウォールが下値圏で何となく築かれると考えられるし、これまでプットが盛り上がったのはだいたい底値圏である。

BofA FMSのキャッシュ比率は3.7%まで低下しており、スレッショルドの4.0%を大きく下回っている。裁量勢だけが答えているわけではないだろうからさもありなんという数字ではあるが、キャッシュ比率が低いのは悲報である。

NAAIMは依然動きがない。機関投資家はある程度ポジションを削った後に静観というところか。

今後12月FOMCまでしばらくマクロイベントが途切れる金曜11/21の寄り付き前にNY連銀のウィリアムズ総裁が差し迫った利下げを再肯定したことで、10月FOMC以来の発作的な利下げ反対運動は鎮火した。

11/25には小売売上高、11/26に耐久財受注が発表されるが共に9月分である。普段ならここから年末にかけてシーズナリティは良いはずであるが、今年はシーズナリティがほとんど効かなかったことに留意すべきである。

テクニカル。これまでの動きについては先週の記事で導出したシナリオの一つである、

  • 金曜11/21はOp Exであり、万が一ネガティブガンマ域で迎えた場合はそのあたりで反転しやすい
  • 残尿ゾーンが依然6550近辺に控えているが、もし11月中にそのレベルまでの調整が実現するなら、政府再開とQT停止がもたらす流動性回復を前にした、夜明け前の暗い時間帯とも言える貴重な買い場になるだろう

がいきなりそのまま実現しており、先週の記事は我々をいきなり「夜明け前の暗い時間帯とも言える貴重な買い場」に立たせる。

いずれにしろ、6550割れを付けたことでこのゾーンに残っていた残尿感は放出された。主役のナスダックは非常に弱々しいながらもOp Exを通過した金曜の11/21に下ヒゲ陽線を作っており、21900は日足レベルのサポートとなる。ここが守られる限り「ネガティブガンマ域に突っ込んだがOp Exで底打ちした」パターンに収まったストーリーも守られるし、再びカチ割られた場合はS&P 500もネガティブガンマ域に戻ってくるので高Volレジームが続きやすくなる。

上値ではヘッドアンドショルダー右肩の23670が引続き強いレジスタンスとなっており、その下ではNVDA決算で飛び付いた参加者達が捕まっていると思われる、23000近辺に位置する25SMA~50SMA(S&P 500では6700台前半)もレジスタンスと化するだろう。

従って目下はナスダックの21900 -23000レンジを意識することになるか。このレンジ内でリアライズドVolの低下を待てば上抜けが続くことも期待できるが、それまでは——恐らく金曜11/21の引け前もそうだったように——引け前に機械勢に売られやすいし、単発ヘッドラインによる1日2%を超えるような上げも調整トレンドの反転というよりは加速に繋がりやすいだろう。


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年11月23日の記事を転載させていただきました。