中国は何をしたいのか?習近平氏は何に焦っているのか?

中国で開催予定だった日本人のコンサートが次々と中止され、酷いケースでは歌っているっ最中に突然音楽が切れ、歌手が「えっ」と驚く中、スタッフがステージに駆け寄り耳元で何かを囁き、そそくさとステージを後にする、こんなことが起こりえるのでしょうか?浜崎あゆみさんは上海のコンサートが中止になるも無観客で最初から最後まで演じたと報じられています。

航空機については中国からの減便が日々伝えられていますが、11月29日の日経には12月に中国から来る総便数5548便のうち16%の904便が既に欠航を決め、欠航数はまだ増える可能性があると報じています。多くの中華系航空会社の減便は来年3月末までとなっていますが、その間、春節がある点を私は案じています。

2月の春節には毎年多数の中国人が日本を訪れ、今年は98万人にもなっていました。私が見る中国政府の焦りとは中国人旅行者の一部は「政治のことはわからない」とコメントし、「日本は安全だから気にしない」と発言している点ではないかと思います。日本のテレビのインタビューですからどの程度の中国人がそう考えているか全く想像がつきません。中国人はもともと自国の政治については口をつぐむ傾向が強いのですが、少なくない数の中国人が、中国政府がプレッシャーをかけているにも関わらず、頓着せずに日本旅行していることに間接的にプレッシャーを出そうという魂胆ではないかとみています。

航空機が減便になれば物理的に人を運ぶキャパシティがないので来ようがありません。中国政府がどうするか次第ですが、彼らの強権的な発動があれば春節の間、日本行きの飛行機を安全のため飛ばさないと決定することも簡単であります。

私はこの問題について一部の皆さんから「どうぞどうぞ」「嬉しいじゃないですか!」という声が上がるのはわかっています。ただ、私はあくまでもニュートラルな視点で考えるべきだと思っています。「俺は中国に行くつもりないし…」と言われてしまうと元も子もなく、議論にもならないのです。では浜崎あゆみさんに中国なんかに行くなよ、と言えるのか、という話になるのです。

日韓関係が極度に冷えていた時、私は当地で日韓関係の修復を民間ベースで細々とやっていました。その相手は慰安婦像問題でバトルした人です。長い冷却期間を経てテーブルにつき、話をし、酒を飲むまでに時間がかかりました。国家間関係が冷え切っていた時、彼とコーヒーを飲んだ時、「俺は日本、好きなんだよね。ちょっと住んだこともあるし。食べ物も大好きだし人だって皆親切でよかった。だけど俺は日本の政治は嫌いだ」とハッキリ述べたのが印象的でした。

中国でも政治と国民意識の二分化が進んでいる可能性はあります。ただし、中国の場合は国家の強制力が韓国とは比べ物にならないレベルにあります。鶴の一声ですべての人民が右にも左にも向くのです。

では鶴である習近平氏は何に焦っているのでしょうか?これは私の見解です。ずばり任期ではないでしょうか?たしか第3期に当たる現在の任期は2028年3月までかと思います。つまりあと2年強なのです。もちろん第4期がないとは言いません。ですが、第3期目の時のようなパワーを持って主席の座を維持できるかはわかりません。少なくとも習氏は15年間の総括が求められ、その中の最大の案件の一つである台湾問題は本人が掲げてきたことだけに何らかの達成を共産党党員に示さないわけにはいかないとみています。

習近平国家主席 中国共産党新聞より

言い換えれば第4期の可否は台湾にあり、かもしれません。そのプロセスにおいて中国は必ずしも台湾を香港で行ったようなプロセスで収める必要もない気がしています。台湾が中国の意図を汲み取り、政策において歩調を合わせるようになりさえすれば戦争も何も必要ないのでしょう。ただ、それだけのことをするには時間がかかるはずでそれを邪魔されたくないという怒りを日本にぶつけていると考えています。

仮にそうだとすれば中国からの日本に対するプレッシャーは続くと考えたほうが良いと思います。王毅外相がフランスや英国に中国の立場を訴えていると報じられています。多分ですが、それらの国は明白な返答をしないと思います。欧州各国はそんな踏み絵のような政治問題に関与したくないからです。

この問題、落としどころがどこにあるのか、本当に時間が解決するのか、それとも日韓関係のように深く長い冷却期間に入るのか、とすれば日本と中国にその覚悟はあるのか、視座を少し高めに持ち、「好き嫌い」の議論ではなく、その影響度と収斂のさせ方について考えた方が良いと思っています。誰も問題に巻き込まれたくないのです。なのに一部のメディアやインフルエンサーがそれを煽るのはどうなのかな、と思っています。外交は緻密さと綿密な計算をしないとできないものです。

外交がカバーする範囲は極めて広く、それこそユネスコ登録やオリンピックや万博など国際行事や会議から業務ビザや観光、国際協力、貿易、共同開発や研究の支援などその範囲は計り知れないものがあります。

日本には威厳を持った賢い外交を引き続き期待したいところです。中国の外交の姿勢は明らかに常軌を逸しており、必ず国際世論から批判にさらされると思います。日本は正論をきっちり論じていくこのスタンスでいいんではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月2日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。