ベネズエラは原油の埋蔵量では世界でNo.1の国だ。ところが、貧富の差が激しく、それを是正して貧困層にも恵まれた生活ができるようにすると約束して、チャベス氏が社会主義革命を遂行すべく政権に就いた。
それから20年余りが経過した今、国家は完全に退廃し、900万人が生活苦と自由のない国から脱出した。これだけ多くの人が国を出て行った例は前代未聞である。チャベスとマドゥロの両大統領が国家破壊の極限まで導いたのである。
ゴールド・ダイナマイト作戦
ベネズエラの独裁者マドゥロ大統領と戦うマリア・コリーナ・マチャド氏(58歳)は、ノーベル平和賞を受け取るためカラカスを秘密裡に脱出した。途中、多くの危険を冒しながらオスロに到着した。マドゥロ政権は彼女の出国を阻止しようとした。
昨年7月の大統領選挙を前に、マドゥロ氏は彼女が「違法行為を犯した」として立候補する権利を剥奪した。そこで彼女は代理候補としてエドゥムンド・ゴンサレス氏を擁立して選挙に臨んだ。その結果、ゴンサレス氏がマドゥロ氏に大差をつけて勝利した。しかしマドゥロ氏はその結果を無視し、今も大統領として君臨している。
彼女の候補が勝利したのは「違法選挙の結果だ」とする理由を挙げ、マドゥロ氏は彼女を逮捕しようとしている。それ以来、彼女は16か月にわたり身を隠して生活してきた。ある噂では、カラカスの複数の外国大使館で寝泊まりしていたともいわれる。
そのような中、反政府派は彼女がノーベル平和賞を受賞できるよう計画を練った。米国はこれを「ゴールド・ダイナマイト作戦」と呼んだ。彼女をカラカスから救出する任務は、米国の私設特殊部隊が担った。
今月8日、作戦実行のため、彼女の隠れ場所から夜中に車でファルコン州のベネズエラ湾まで 1300kmを移動した。同行したのは2人の協力者。途中、軍による8か所の検問所を通過しなければならなかった。最後の検問は特に厳しかったが、担当していた武官が彼女を見逃して通したらしい。もちろん、検問所では賄賂が通用する国である。
目的地はオランダ領キュラソー島だった。距離は70km 余り。目立たないよう漁師の小型舟を利用した。しかし当日は波が荒く、GPSが故障し、予備機も機能しなかった。さらにエンジンも停止し漂流することになった。
米軍の協力もあり、彼女らの居場所が特定されるまでに4時間を要した。レスキュー隊の船に乗り換えキュラソーに到着し、そこからプライベートジェットで米国メイン州に向かい給油後、オスロへ直行した。そのため、オスロには12時間遅れでの到着となった。
当日、キュラソー島への航行中、米軍のF18戦闘機2機がベネズエラ側のレーダー機能を無力化するため電子パルスを発信していたという説もある。
授与式には娘が代理出席
当初は授与式に間に合う予定だったが、航海に時間を要したためオスロ到着が12時間遅れた。そこで授与式には米国在住の娘、アナ・コリーナ・ソサ氏が代理として臨んだ。
会場には、選挙に勝利し現在スペインに亡命しているエドゥムンド・ゴンサレス氏をはじめ、ミレイ大統領(アルゼンチン)、ペーニャ大統領(パラグアイ)、ノボア大統領(エクアドル)、ムリーノ大統領(パナマ)が彼女の到着を期待して参列していた。
今後のベネズエラの行方
2か月前から米国はベネズエラ近海に軍艦を停泊させ、同国への侵攻を模索している。上陸してカラカスを目指すには5万人の兵力が必要とされ、マドゥロ氏と側近を逮捕するのも容易ではない。彼らの隠れ家を爆撃すれば逮捕は期待できないためである。
仮に彼らが政権を退いても、その後に軍隊を統率することも容易ではない。加えて、ベネズエラはすでにロシア、キューバ、イラン、ヒズボラ、そして麻薬組織の影響下にある。したがって、ゴンサレス氏とマチャド氏のコンビで軍部を統制し、ロシアなど他国の影響力を排除することは簡単ではない。
こうした難題について、米国を中心とする国際社会が協議し、対応していく必要がある。






