パタゴニア vs. ファストファッションから見えるビジネスの進化

服飾の話は正直、得手ではありません。私の両親は小さな女性物の洋服屋を営んでいたので本来であればファッションにはもう少し気を配るべきだったのでしょう。確かに大学生の頃は男性ファッション雑誌を見ながらトラッドファッションに凝ってIVYっぽい服や靴にこだわった時期もありましたが、社会人になりスーツやら会社支給の作業着になるとファッションと縁遠くなりました。

北米に来てからはファッションとの縁遠さは更に加速したように感じます。NYなどアメリカ東部は伝統的なファッションでそれこそ、ビジネス街に行けばスーツ姿は当たり前なのですが、西海岸はカジュアル一辺倒でTシャツ、Gパンで仕事をするという風潮が昔から強くありました。それでも私が当地に来た90年代当初はスーツ姿の方も結構多かったし、弁護士事務所の人たちはスーツオンリーだったのです。ところが、20年ぐらい前から弁護士や会計事務所で「カジュアルディ」というスーツを着なくてもよい日が普及し始め、週に1回、2回とだんだん増え、今では「お好きなものをどうぞ」という感じになっています。

ファッションの変化の立役者の一つはファストファッションが席巻したことでしょう。安いのだけどワンシーズンとか頑張って2シーズン着るのが精いっぱいな服飾を業界が押し込んできたのです。このファッショントレンドは特に若い女性の間で顕著になり、街ゆく女性を見ていると「あはん!今年買ったばかりだな」とわかってしまうのです。こういってしまっては殴られるかもしれませんが、ファッションに敏感な人と共に自信がない人も流行に乗り、恥ずかしくない格好をしたい人がフォローするのだろうという気がします。

もう1つはユニクロの進撃もファッション界を変えた出来事だったと思います。私の周りにも結構いるんです。上から下まで、中から外まで全身ユニクロ。私は「ユニクロン」と呼んでいますが、あれはハマるのでしょう。「柳井正」教です。理由はお手頃価格なのに品質は十分。ファッション性もあってアウターとしても大丈夫になってきたのです。ユニクロはもともとはインナーとかベーシックファションだったはずですが、すっかり成長したわけです。

ところで日本の方のように毎シーズン、いや毎月惜しまずにファッションに投資をしている方も多いのかと思えばカナダのように「お前、それ何年着ている?」というところもあります。私の住んでいるコンドにジムがあり、週に3-4回ほど行っているのですが、いつも同じような人と顔を合わせます。で、その方々(若い女性を含め)が着ているものはいつも一緒。そして私も一緒。つまり流行のフィットネスウェアなんてまるで無用。着ているものが壊れたら新しいのを買う感じです。

こう考えるとファッションもどう長く着るかというスタイルに変化してきているのかもしれません。お気に入りのジャケットをずっと着ている人も多いでしょう。それが壊れたら悲しいものです。表題のパタゴニアというファッションメーカーは日本でも知られつつあると思いますが、北米ではかなりのメジャープレーヤーになりつつあります。特徴は環境重視、いつまでも長く使える落ち着いたもので品質の良いものを提供しています。そして壊れたら修理をしてくれるのです。

修理にもいろいろありますが、穴が開いたらその穴をふさぎ、むしろおしゃれな感じを引き立たせる工夫をしてもらえるそうです。これは凄いですね。実はユニクロも売るばかりではなく、リサイクルファッションを一部で展開し始めています。ユニクロの古着ですね。えっと驚くかもしれませんが、時代は変わってきたのだと思います。

世の中の移り変わりが早いからこそ、それに踊らさらず、自分は落ち着いてブレないようにする、この生き方として自分のファッション=スタイルをしっかり持つ、という発想はアリだと思います。

ワードローブを見れば男性の場合、似たようなスーツが何着もあるかと思います。なぜ、そんなに増えたかといえば「これももう3年着ているしな、新しいのを買うか?」が理由だと思いますが、「古いのは捨てるのはもったいないしなぁ」が繰り返されたのだろうと思います。

私は10数年前に着なくなったものを全部リサイクルに出してしまい、手元には最小限のものしかありません。基本的に壊れたら買う、というスタイルです。一方で年齢と共にみすぼらしい恰好もできないのでそこはTPOに合わせるというフレキビリティも必要なのでしょうね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月14日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。