日銀が30年ぶりとなる水準まで利上げに踏み切ったが、為替市場では円安が加速するという逆説的な展開となった。円安による物価上昇を警戒しての利上げだったにもかかわらず、市場は政策運営への不信を強め、今後の日銀の判断力と政策の信認が厳しく問われている。
- 日銀は19日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%程度に引き上げることを決定し、30年ぶりの高水準となった。
- 植田和男総裁は会見で、来年も高い賃上げが続く可能性を指摘し、経済・物価情勢に応じて今後も利上げを進める方針を示した。
- 会合では複数の委員から円安が物価に与える影響を注視すべきだとの意見が出ており、今回の利上げには円安インフレへの警戒感もあったとみられる。
- 一方、利上げ決定後の会見では次の利上げ時期やペースについて具体的な言及がなく、市場では次の行動まで時間がかかるとの見方が拡大した。
- その結果、外国為替市場では円売りが進み、19日夜には1ドル=157円台まで円安が進行した
- 市場関係者の間では、利上げが事前に織り込まれていたうえ、将来の政策の道筋が示されなかったことで、サプライズ性を欠いたとの評価が広がっている。
- 植田総裁は利上げ後も実質金利は極めて低いと説明したが、中立金利の具体的水準には踏み込まず、政策の最終的な到達点が見えないとの不満が残った。
- 米国との金利差が縮小し、長期金利が上昇しても円安が止まらない状況について、市場では金利差よりも政策運営への信認や将来像の不透明さが円売りを招いているとの見方が強まっている。
- 日銀は今後、利上げが家計や企業活動、国債市場に与える影響を点検しながら次の一手を探る方針だが、為替動向を無視できない難しい局面に立たされている。
今回の利上げは、円安阻止という本来の狙いを十分に果たせなかった。市場は政策金利の水準そのものよりも、日銀がどこまで引き締めを進める覚悟があるのか、その将来像を注視している。財政制約や政治への配慮がにじむ中で、明確なメッセージを示せない限り、円安に歯止めをかけるのは容易ではなさそうだ。

植田和男日銀総裁 日本銀行HPより






