米中の狭間、日本の取るべき道:厳しい状態に追い込まれる高市政権

2026年の外交の最大のテーマは日中関係かもしれません。年末に中国軍は演習と称して大規模な台湾囲い込み行動に出ました。私は中国は対日関係を当面、厳しい状態に追い込み続けると予想しています。そのあたりの背景とその対策について考えたいと思います。

まず、中国が台湾問題について積極的に出るであろうことは習近平氏が2028年3月に任期満了を迎えるにあたり最優先課題にする点は過日のブログにて申し上げました。また年末の台湾周辺での軍事演習についてはもう一つ、中国の人事問題が絡んでいます。政治局員で軍の担当であった劉青松政治委員と中国の東部地区の軍を指揮する林向陽司令官が共に失脚し、東部軍司令官は楊志斌氏が着任したばかりであります。とすれば刷新された人事とその司令官としての手腕を見せつけるいわば「司令官の演習」的要素はあったと思います。囲まれた台湾にとっては大迷惑な話であります。一方、トランプ氏はこの演習は特に問題しないと語っています。

日中首脳会談 10月31日 高市首相Xより

26年の中国外交は4月のトランプ氏の訪中と11月に中国深圳で開催されるAPECがキーとされます。併せて習近平氏がアメリカの国賓としてトランプ氏と会うという計画もあります。

この枠組みで日本は対中国にどのような外交をとるべきか、実は高市氏にとっては案外厳しい道のりとなるとみています。高市氏はトランプ氏の4月の訪中の前に米中首脳会談を強く求めています。当然ながら日本の立場を説明し、場合によってはトランプ氏から中国を懐柔してもらう戦略があると思います。トランプ氏は高市氏と信頼関係は作っていますが、私は日中関係の仲裁に関してそこまで深くかかわらないとみています。

理由はトランプ氏の頭にアジア外交の優先度が低いとみているからです。トランプ氏にとって現在の最大の盟友はネタニヤフ氏であり、彼と中東和平、ひいてはイランをどう抑えるか、ここにかなりのエネルギーを注ぎ込むことになるでしょう。また今回、マドゥロ大統領夫妻の拘束というサプライズ戦略に出た対ベネズエラ政策も一筋縄ではないとみています。国際法違反も問われる中、力づくでベネズエラの政権転覆を謀り、石油資源の権利を実質的に支配するならロシアと何ら変わらないとの国際批判をかわすのは容易ではありません。

とすれば米国と双璧ともされる中国は片手間で扱えるものではなく、戦略的に中庸なスタンスをとりたいところでしょう。また中間選挙を見据えれば米国の大豆やトウモロコシ農家の支持を取りたいところですし、アメリカ大手企業はこぞって中国でビジネスをしている以上、中国との対峙は中間選挙対策としては悪手になるのです。エヌビディアの高性能半導体H200の中国向け輸出を許可する話もそのラインに沿っています。つまりトランプ氏は4月の訪中で習近平氏と丸く収め、大収穫を上げることが主眼になるとみています。よって日本の悩み事はサイドラインになる可能性があるとみています。

私が一番気になるのはトランプ氏は台湾の中国化を本当に阻止する気があるのか、という疑念なのです。商売人の観点からすると台湾ディールをすることでアメリカは大儲けできるチャンスがあるのです。台湾には武器を売りつける、一方、中国とは外交でアメリカに有利な条件を引き出し、その代わり台湾情勢については放任するもの。そのディールの条件の一つとして中国のイランへの関与を止めることとすればどうでしょうか。習氏はそのディールがあれば飲むと思います。

その場合、高市氏が上げた手はどうするのか、でありますが、そもそもあの答弁からすると台湾防戦をするアメリカ軍が中国にやられたら日本も共同参戦するというものでした。アメリカが台湾に来なければ共同参戦の話は起こりえなくなります。

外交のシナリオは極めて複雑で外務省や政権幹部ですら唖然とするようなことは常日頃起こるわけで一般の識者やコメンテーターの話を真剣に聞いていると本質を見落とす可能性が出てくるのです。私はトランプ氏の原点に立ち返ってみるべきだと思うのです。トランプ氏が第1期の大統領になるまでは日本嫌いではないか、と多いに報じられました。私はルーズベルトのような性格ではないと思いますが、典型的な東部エスタブリッシュメントでアジアを軽視する根本思想はあると思うのです。

というより白人から見てアジアは文化思想的に遠く、そのギャップが埋められないのが私が35年も北米在住して実感していることです。アジアの文化思想は理解しにくいのでお互いの心が読めるネタニヤフ氏とタッグを組むのは自然の成り行きとも言えるのです。ならば面倒な中国とガチの対立はしたくないのでしょう。またトランプ氏の中国への姿勢が軟化しているのは大統領第1期の時の経験も踏まえて上でのスタンスとみています。

私は日本はトランプ氏を少し甘く見過ぎている気がするのです。確かに安倍晋三氏との関係は異様なまで良好でした。それは日本人を知らなかったトランプ氏の懐に素晴らしい人物が飛び込んできたからであって安倍氏との友情関係は確立されたけれど日本との関係が確立されたわけではない点は間引いて考える必要があると思います。

私が再三、日本は自立せよと言っているのはアメリカは頼りにならないこともある点を含み置くべきだということなのです。今、トランプ氏に中国と日本、どちらをとる?と質問するのが最もタブーではないかという気すらするのです。もう1つは失われた30年は経済だけではなく、日本の外交的プレゼンスが下がった点もあるのです。よって諸外国の政権首脳のみならず、世代交代した若い議員らと日本との関係や日本への理解は思ったより薄弱であり、日本を外交相手として必要とされるか問われてやしないか、という気も致します。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年1月5日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。