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海外ビジネスの話題になると、必ずと言っていいほど出てくる言葉がある。
「現地に行かないと分からない」。
確かに、文化や商習慣、人間関係の空気感は、現地でしか掴めない部分がある。しかし、実務の現場で起きている失敗を冷静に見ていくと、現地以前に防げたはずのものが圧倒的に多い。
輸出管理の該非判定が曖昧なまま進んだ案件。
制裁リスクを十分に整理しないまま契約寸前まで進んだ取引。
責任の所在を決めないまま、現地パートナーに任せたプロジェクト。
これらはすべて、日本国内で準備できたはずの問題である。
むしろ、準備不足のまま現地に行くと、状況は悪化することが多い。
話は前に進んでいるように見えるが、社内では判断材料が揃わず、「持ち帰って検討します」という回答を繰り返すことになる。現地訪問が、決断を先送りする装置になってしまう。
海外ビジネスにおいて重要なのは、「現地で何を知るか」ではなく、現地で何を決める準備ができているかだ。
そのために、日本にいながらできる準備は多い。
- 関係する規制の洗い出し
- 想定される取引スキームの整理
- リスクが顕在化した場合の対応方針
- 最終判断者の明確化
これらを事前に整えておけば、現地では確認と調整に集中できる。
現地経験を過度に重視する企業ほど、「行けば何とかなる」という幻想に縛られがちだ。しかし、現地で判断できることは限られている。判断の大半は、国内での準備によって決まる。
海外で成果を出している企業は、現地に行く回数が多いわけではない。行く前に、考える時間を十分に取っている。
海外ビジネスとは、未知の世界に飛び込むことではない。不確実性を前提に、どこまでを許容し、どこで止めるかを設計する行為である。
現地に行くかどうかを議論する前に、自社は判断できる状態にあるのか。
その問いに答えられない限り、現地経験は成果に結びつかない。






