金利生活とは、資産を保有し、その資産を稼働させて、利息、配当金、賃料等の収益を発生させて、その運用収益で生計を立てることである。さて、資産額は同じでも、収益率は不確実なので、収益額は減少し得る。例えば、債券等の確定金利の投資対象で金利生活をしているとき、金利が半分になれば、収入は半分になるが、だからといって、生活上の支出を半分にするわけにも、収入を維持できるように、運用資産を二倍にするわけにもいかない。
hyejin kang/iStock
しかし、企業年金の場合には、運用収益が低下すると、運用資産を増やすように制度設計されている。日本の場合、制度が発足したとき、当時の長期金利を基準にして、5~6%の運用収益率が予定されていたが、超低金利が長期間継続するに至って、期待収益率が大幅に引き下げられ、その分、新たに追加資金を拠出することで、運用資産を大幅に増やしてきた経緯がある。
企業年金の仕組みは、制度の人員構成が定常になる状態、即ち、制度に加入する人の数と、受給者となって制度から出ていく人の数が同じになる状態を目標にして、保有しているべき積立資産額を推計している。この定常状態においては、毎年、新たに払い込まれる掛金額に資産が生み出す収益額を足した金額は、その年の年金等の給付額に一致することが予定されている。別のいい方をすれば、給付額と掛金額の差分が資産から生じる収益額と一致するように、必要資産額が逆算されているわけである。つまり、企業年金は、資産運用の果実を給付に充当する金利生活者なのである。
企業年金は金利生活者なので、給付原資は、年金資産自体ではなくて、資産が生み出す運用の果実だけである。企業年金資産自体は、果実を生み出すための装置だから、永続的に留保され続ける。ただし、何らかの不測の事態において、制度自体が廃されるときには、その時点で確定している制度の加入員や受給者の権利を保障できるだけの金額が留保されているようにも設計されているわけだ。
つまり、企業年金資産とは、給付原資を生み出すための元本としての役割と、制度清算時において加入員と受給者の権利を守る担保資産としての役割を合わせ備えているものなのである。そして、企業年金制度は、この二つの役割が適正に果たされるように、法律によって厳格に設計され、かつ監督されているのである。
■
森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
X(旧Twitter):nmorimoto_HC
Facebook:森本紀行