新規開拓に悩む中小企業が年1回展示会に出展すべき理由(清永 健一)

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市場の縮小や人手不足により、ビジネス環境が年々厳しくなっていく中で、「1年に1回しか営業するな」と提言されたら、あなたは荒唐無稽だと感じるでしょうか?

しかし、「これこそ企業が儲かる体質に変わる秘策だ」と語るのは、展示会営業の専門家で中小企業診断士の清永健一氏。その理由を、氏の著書『展示会のプロが見つけた儲かっている会社は1年に「1回」しか営業しない理由!』から読み解きます。

新規顧客開拓の打ち手が見つからずジリ貧の中小企業

変化が激しく先の読めない現代、中小企業の多くが何かしらの悩みを抱えています。特に売上に関する悩みは深刻であり、すぐにでも対策が必要なのですが、それでも「訪問件数を増やせ」「でも残業はするな」という矛盾する指示を出し続けている中小企業がありますよね。

これはシンプルに適切な解決策を見出だせないからで、リソースの少ない中小企業では、新たな打ち手に関する情報収集がままならないのも無理はありません。

例として、従業員18名の電子部品メーカーN社の例をご紹介しましょう。彼らは大手メーカーZ社を主要顧客として順調に業績を拡大してきましたが、近年は業績が低迷、社長は「新規開拓が全然進んでいない!」と焦りを募らせています。

しかし、営業部長は「Z社への対応で忙しい」「新規開拓の予算がない」「頑張っているメンバーにこれ以上言えない」と感じており、現場の営業担当者も、新規開拓を試みても値下げ要求ばかりで赤字受注になりかねない現実を目の当たりにして、壁にぶつかっています。

さらに若手の営業担当者の中には、このような状況に嫌気がさし、転職活動を始める者まで出てくる始末。製造部長は、営業部門が品質を無視して安売りしていると不満を漏らし、自社の技術力や品質に自信を持っているにもかかわらず、新規開拓が進まないことに苛立ちを覚えています。

多くの中小企業はこのN社と同じように、「今までの顧客に、同じ商材を、同じやり方で売っていてはジリ貧になる」と感じているにもかかわらず、「新規顧客開拓」が上手くいかない状況に陥っているのです。

年1回の展示会が中小企業を「儲かり体質」に変える

そもそも、中小企業は大企業とは違い、資金力も、知名度も、人脈もありません。まさに「金なし・コネなし」の状態ですが、この状況を打破できる突破口として、私は「年1回の展示会営業」を推奨しています。

展示会では、見込み客と直接対話することができますし、その中で見込み客に質問を促したり、関心に応じて訴求ポイントを変えたりすることで、興味を喚起できるというメリットがあります。

WEBを使ったマーケティングは情報提供が一方的になりがちで、特に中小企業の場合は自社や商材の認知度が低いため、一方的な説明だけでは購入意欲を喚起することが難しい一方、双方向のコミュニケーションが可能な展示会であれば、中小企業は強みを発揮できるのです。

しかも、展示会営業は年間わずか1回でかまいません。

多くの場合、出展期間は3日間ですが準備は1回ですから、1回の労力と1回分の出展コストだけで、向こう1年分の優良な見込み客と接点を持つことができるわけです。これはもう、やらない理由がないと言ってもよいでしょう。

さらにこの手法は、営業担当者の心労を伴う新規顧客獲得を不要にし、展示会場へは顧客が自らやってくるわけですから成約率も高くなり、社員のモチベーションが維持できます。

営業費用や広告費用という経費を削減できる上、質の良い営業ができるようになることで、担当者や会社がレベルアップしていくため、多面的に「儲かり体質」への変化を促すことができるのが、この「展示会営業」なのです。

好循環のルートに乗ることができれば、社員は自社にプライドを持つことができるようになりますし、会社の未来について真剣に考えはじめるでしょう。社内の一体感が高まれば組織力も向上し、採用にもよい影響が出てきます。実際に、儲かっている元気な中小企業は展示会を活用しているのです。

「学園祭効果」が社内コミュニケーションを活性化

展示会で確実に成果を出すためには、適切なプロセスに沿って進めることが重要であり、そのプロセスは大きく「準備」「当日」「フォロー」の3つのブロックに分かれています。

私はこれを「展示会営業プロセス」と呼んでおり、展示会出展を単なる営業施策ではなく、「会社を変える取り組み」と位置づけることが、効果を最大化するポイントです。

具体的には、営業部門やマーケティング部門だけでなく、設計開発、製造、総務経理など、全部門を巻き込んだ「部門横断的なプロジェクトチーム」を結成してください。社長はプロジェクトオーナーとしてミーティングをオブザーブします。そうすると、このプロセスはまるで学園祭の準備のような雰囲気になるんです。

あなたも学生時代、学園祭の準備を通じて、普段あまり親しくないクラスメイトと積極的にコミュニケーションを取った経験はありませんか? 「良いものにしたい、でも期日に間に合わせなくては」という共通の想いと葛藤が、参加メンバーの一体感を高めて強い協力関係を構築するにいたるわけですが、これと同じ効果が会社組織でも得られるというわけですね。

多くの企業でリアルなコミュニケーションが減っている現代において、社員同士が部門を超えて活発に議論し、全社一丸となって仕事に取り組むことは、中小企業にとって大きな強みになりえます。

展示会出展は、まさにこの「学園祭効果」をもたらし、社内コミュニケーションを活性化させる絶好の機会にもなりますから、単なる営業力の向上を超えた活性効果をもたらすものでもあるのです。

見込み客が増える、展示会選びの2つの作戦

展示会は全国で年間約800回以上も開催されていますので、最初は自社にぴったりの展示会を見つけるのが難しく思えるかもしれませんね。そこで、代表的な方法を2つご紹介しておきましょう。

(1)業界の定番展示会に出展する「コバンザメ作戦」
まずは自社が所属する業界の定番と言われる展示会に出展してみましょう。例えば、製造業なら「日本ものづくりワールド」、食品なら「フーデックス」などです。

ライバルがたくさん集まっている『血みどろの海』に自ら飛び込むなんて、愚行だと思われるかもしれませんが、展示会は通常のマーケティング論とは異なり、思い切った戦略が功を奏します。

なぜなら、定番の展示会には業界トップの大企業も出展しており、彼らを目的として来場する人が多数いますので、実はこれこそが中小企業にとって最高のチャンスになるからです。

あなたの会社は、業界トップ企業を目当てで来場したお客様に対して、ただ接点を持てば良いというわけですね。大企業の強力な集客力を活用することで、リソースに余裕のない中小企業でも、見込み客との接点を効率的に増やすことができるのです。

(2)テーマや商材を「ずらす」作戦
もう一つの方法は、テーマや商材を「ずらして」出展することです。

例えば、アジア最大のスペシャリティコーヒーイベント「SCAJ」では、コーヒー豆や関連商材ばかりが並ぶ中、最も人だかりができていたのは紅茶のブースでした。コーヒーの展示一色の会場に突如現れる紅茶のブースは、来場者の飽きを解消し、自然と足を向けさせました。

テーマや商材をずらすことで、閉鎖された展示会場において容易に「オンリーワンの存在」になることができるというわけですね。

ただし、単にずらせば良いわけではなく、重要なのは来場者の属性が自社の見込み客と合致するかどうかを考えることです。コーヒー展示会の来場者はコーヒーだけでなく紅茶を買いつける権限も持っている可能性が高いため、紅茶のブースは成功しました。

この戦略を実践するには、まず自社の顧客と商材を見つめ直し、どの商材がどういう客層に売れているのか、特に最近伸びている客層や利益率の高い商材を喜んで使ってくれている層について把握しておく必要があります。

その客層が来場する展示会を探し、あえてテーマをずらして出展する。例えば、教育研修を提供する会社が、エステサロンの経営者が多く来場する「ビューティーワールド」で接客・接遇研修をアピールすれば、会場でオンリーワンの存在になりつつ、出会いたい相手にリーチできるでしょう。

清永 健一
株式会社展示会営業マーケティング代表取締役。中小企業診断士、展示会営業(R)コンサルタント。奈良生まれ、東京在住。神戸大学経営学部卒。展示会を活用した売上アップの技術を伝える専門家。支援先企業からは、集客・受注・売上が大幅に増加したと好評の声が多数あがる。「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」など多くのメディアで取材を受けている。支援実績は1300社を超え、ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没している。NHKラジオ総合第一で展示会の未来について言及するなど、展示会業界活性化にも尽力。展示会活用に関して、テレビ等出演のほか、行政、公益法人、金融機関などで講演多数。 著書の『最新版 飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術』、『展示会のプロが発見!儲かっている会社は1年に1回しか営業しない』など合計7作はいずれもamazon部門1位を獲得している。
公式サイト https://tenjikaieigyo.com
X(旧Twitter) @tenzikai

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年8月14日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。